浜野副委員長の本を駆使して「カジュアル除名」をただす

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方はこちらを先にお読みください。)

 

 私が原告になっている共産党不当解雇裁判で、私の口頭陳述で、党幹部が除籍の濫用=「カジュアル除名」の問題を明らかにしたことについてはすでに触れました。

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

 この問題は、さらに詳しく原告第2準備書面の方で明らかにしています。

drive.google.com

 

 どう詳しく明らかにしているかと言いますと共産党の浜野忠夫副委員長執筆の党公式規約解説マニュアル『国民に開かれた党へ』を駆使しているのです。

 浜野忠夫氏をご存知ない方のためにご紹介しますが、御年93歳になられる共産党中央の現役の幹部会副委員長かつ人事局長であらせられます。

 以下、原告第2準備書面からその部分を抜粋します。(読みやすいように改行など一部加工)

(抜粋ここから)

 

(3) 規約4条の解釈の明白な誤り
ア. 規約4条の解釈について
 次に、被告らの規約4条の解釈は明らかに誤ったものであり、ゆえに、原告につき、2024年(令和6年)年8月の時点で、規約4条の「党の綱領と規約を認める」という党員資格の要件を欠いたとの認定がなされたことは違法である。
 すなわち、規約4条から規約11条は、規約第2章「党員」の中に定められているとおり、共産党の党員の資格について規定した条項である。
 そして、規約4条は、「18歳以上の日本国民で、党の綱領と規約を認める人は党員となることができる。党員は、党の組織にくわわって活動し、規定の党費を納める。」として、日本共産党の党員となることができる形式的な要件を定めている。具体的には、①18歳以上であること、②日本国民であること、③党の綱領と規約を認める人であることとされていて、(入党後に)④活動すること、⑤党費を納めることを形式的な要件として規定している(なお、④⑤の入党後の欠格は除籍ではなく規約10条に基づく「離党」扱いとなる)。
 このうち、③「党の綱領と規約を認める人」とは、「遵守する」や「十分理解する」ではなく「認める」という文言からもわかるように、規約の内容を十分に理解していることまで求められておらず、日本共産党に入党する時点において、規約を一通り読んだうえで「認める」と表明するという意味と解される。
 実際に、被告共産党に入党する際の入党申込書でも、「日本共産党の綱領と規約を認めて入党を申し込みます」とあらかじめ記され、入党希望者はその申込書に署名する形式で表明がなされており、それ以上の理解などは求められていない



 この点につき、被告共産党の幹部会副委員長が書いた被告共産党のいわばオフィシャルの規約解説本(浜野忠夫『国民に開かれた党へ』(新日本出版社、2001年))においても、次のような記述がある。すなわち、

「綱領と規約を認める」ということは「よく理解している」ということとは違います。入党をすすめるとき、綱領と規約の大筋を説明し、綱領・規約のパンフを渡し、読むように働きかけることが大事です。しかし初めから、綱領と規約の、すべての内容を理解して入党されるわけではありません。そこで、入党申込書に明記されていることですが、「綱領と規約を認める」という意思を確認しておくことが、入党資格として必要です。

としており(同書71頁)、同様の解釈が示されている。
 以上のことから、「党の綱領と規約を認める」(規約4条)とは、「認める」と書面等で表明することである。したがってこの資格の喪失は、その表明を明言として撤回することである(入党時の誓約の破棄など)。仮に入党後に何らかの規約の違反があったとしても、規約48条以下の手続による除名処分がなされるならともかく、入党時に遡って入党資格がなかったということにはならないと解すべきである。なお、入党後の規約違反は、規約48条以下の除名処分等によって行われることが予定されているものといえる。また、規約違反行為がなくとも、綱領・規約を「認めない」と本人が明言すれば、それは党員資格の喪失となることは明らかである。


イ. 本件におけるあてはめ
 以上の解釈を前提として、本件についてみると、被告らは、入党後における規約の違反行為を理由に、入党資格がなかったか、あるいはこれを入党後に喪失したかのような主張を展開していることから、この点に明らかな誤りがあるものといえる。前述したとおり、そもそも原告は、何ら規約違反を行っていないが、万が一、原告が何らかの規約違反をしていたとしても、本件においては、原告は規約を認めることを書面で表明しており、除籍措置を行うことは認められないのであり、本件除籍は違法無効である。
 また、被告らは、令和6年(2024年)年8月の時点で、原告に規約4条の「党の綱領と規約を認める」意思がないものと判断している。これは、党側が「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」(規約11条)か否かの判断に際して、「党の綱領と規約を認める人」(規約4条)か否かではなく、党の綱領と規約を認める「意思がない」(被告準備書面(1)27頁4行目)人という規約には存在しない事項を恣意的に付け加え、その「意思」の有無について裁量的・主観的な認定をすることを許すものであるが、このような被告らの解釈・運用は、上記の規約4条の文言及び趣旨及び以下に述べる規約11条の文言及び趣旨に反し、明らかに違法というべきである。したがって、原告につき、令和6年(2024年)年8月の時点で、規約4条の「党の綱領と規約を認める」という党員資格の要件を欠いたとの認定がなされたことは違法である。
 前述の浜野氏の著作でも「入党申込書に明記されていることですが、『綱領と規約を認める』という意思を確認しておく」とあるように、これは申込書等による「認める」との明言での意思表明の確認以上のものではなく、上記のような被告共産党による裁量的・主観的な「意思」の有無の認定を許すものではないことは明らかである。


(4) 規約11条の解釈の明白な誤り
ア. 規約11条の解釈について
 規約11条前段は、「党組織は、第4条に定める党員の資格を明白に失った党員、あるいはいちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる。」と定める。そして、規約は、「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」…とあるように、規約4条の要件を客観的に見て明らかに欠くようになった場合にのみ「除名」という処分を取らず、除名処分を経なくても「除籍」という方法での党員資格のはく奪を認めている。しかし、「明白に」という文言は、誰が見ても疑義がない程度に明らかと解されるのであり、たとえば、①日本国籍を失った場合や、②年齢が18歳未満と判明した場合など誰が見ても客観的に明らかな場合にのみ、「明白」であると限定的に解釈すべきである。上記の客観的・外形的な明白性ゆえに、除籍は、除名等の処分とは異なり、簡素な手続が特に認められているのである。
 ゆえに③「党の綱領と規約を認める」についても、本人が入党申込書を撤回するなど綱領・規約を認めないことを明言するという、客観的・外形的に明白な場合のみに該当すると解すべきである。
 そして、このように解しなければ、党組織が③「党の綱領と規約を認める人」を一方的に認定して除籍することが可能となってしまい(しかも被告らの主張によれば、このことは司法審査の対象にならないのである)、規約違反などの行為に対する除名処分手続を潜脱することができてしまうのである。被告共産党において、ここ数年で多発している党員の「カジュアル除名」は、その名のごとく、本来除名処分を行うべきにもかかわらず、除籍措置が行われているが、その多くが、本件原告と同様に規約違反を認定せず、綱領と規約を認めなくなったなど一方的に認定している。しかし、これらは明らかに党執行部の横暴であり、これらを許すような解釈を行うべきではない。
 この点、上記の被告共産党の浜野幹部会副委員長オフィシャルの規約解説本でも、

重大な規律違反で、党と国民の利益を裏切り、党に大きな打撃をあたえた党員に、「処分」をおこなわないで第11条による党員資格喪失者と認定して、除籍で処理するのは正しくありません

(同書73頁)と記載しており、少なくとも党の綱領と規約を認める人に該当しないと安易に認定することは避けるべきであると解説している。つまり、この記載は、処分手続を潜脱して除籍を行うことが正しくない旨の解説であり、上記の「カジュアル除名」は許されないものであることを説くものである。

イ. 本件におけるあてはめ
 以上の解釈を前提として、本件についてみると、そもそも原告は何ら規約違反を行っていないが、万が一、原告が何らかの規約違反をしていたのだとしても、規約11条と規約4条は、③「党の綱領と規約を認める」ことを公言している(撤回していない)党員の除籍を行うことを認めていないのであるから、原告に対する本件除籍は違法無効である。
 仮に、上記のように解釈せず、綱領や規約を「認める」と明言し続けている党員であっても、その素行や態様を党組織が評価することによって除籍が可能であると解釈したとしても、被告らの除籍理由は「『党の綱領と規約を認める』(規約4条)意思がないものと判断せざるを得ず」などと(被告準備書面(1)27頁4行目)、主観的・裁量的に判断しているのみであり、客観的に「明白で」あることを示していない。このことからも、原告への本件除籍は違法無効である。
 なお、原告は、被告県委員会常任委員会宛の書状をもって規約も綱領も認めることを公式に回答していることなどから、党の綱領や規約を明白に否定する立場にたった党員等ではないので、原告は「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」(規約11条)に該当しないことは明らかである。ゆえに、いずれにせよ、原告が規約11条の「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」に該当しないにもかかわらず、被告側がこれに該当するものと恣意的・裁量的に認定したことは違法である。

↑2024年6月1日付の党福岡県常任委員会からの書状(決定文書)

↑同日付の私の回答文書


 「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」(規約11条)か否かの判断も、「党の綱領と規約を認める人」(規約4条)か否かの判断も、客観的に具体的な根拠をもってなされるべきであり、恣意的・裁量的に判断することは規約11条・規約4条の文言・趣旨に反する違法な解釈運用である。


(5) 小括
 以上より、本件除籍は、規約11条の要件を満たすものではないから違法無効である。ゆえに、被告県委員会が行った本件解雇も違法無効である。
 本件除籍は、本来は除名処分の手続で行われるものであり、適正手続に反する上記第2の1でも述べたとおり、また、前記の被告共産党の浜野幹部会副委員長オフィシャルの規約解説は

重大な規律違反で、党と国民の利益を裏切り、党に大きな打撃をあたえた党員に、「処分」をおこなわないで第11条による党員資格喪失者と認定して、除籍で処理するのは正しくありません

(同書73頁)と説くとおり、規約4条・11条・48条以下の文言・趣旨・仕組みに照らすと、本来は除名手続(規律違反の手続)をとらなければならない場合に本件除籍のように除名手続を潜脱して除籍を行った場合には、適正な手続に反するものであるから、かかる手続の点でも違法である。
 したがって、除名手続(規律違反の手続)を潜脱する手法でなされた本件除籍は適正な手続に則ってされたものではなく、適正な手続を履践したものとはいえないことから違法であり、無効である。

(抜粋おわり)

福岡市西区の海岸

余談

 浜野副委員長と言えば、党活動の生々しい・リアルなところではなく、綱領や科学的社会主義にかかわる部分の説明については心にしみいるような味わい深い文章を書かれる方です。

 みなさんにもぜひ知っていただきたいので、ご紹介します。

 科学的社会主義は、労働者階級の解放に関する学説であり、その学説は人類世界の発展を促進する科学的学説であり、人類の価値あるいっさいの知識を受け継ぎ、発展させて、集大成したものです。また、科学的社会主義は、不断に進歩・発展する学説です。時代とともに豊かにされ、新しい成果が加えられていく性格を持っています。だから、科学的社会主義の学説は、世界の歴史と現在を解明し、その行く手を示す科学的羅針盤となるものだと言えます。

 …こういう科学的社会主義の理論を基礎とすることによって、どんな複雑な諸課題についても、労働者階級と国民の立場にたって、道理も展望もある解決策を示すことができる、闘争の過程でどんな困難な情勢に直面しても、未来への確信を失わずに大局的な展望と当面の方針を見出すことができるわけです。(浜野忠夫『時代を開く党づくり——党建設の歴史・教訓をふまえて——』新日本出版社、2008年、p.36)