第1回口頭弁論での平裕介弁護士の意見陳述

 私の起こした共産党不当解雇裁判。

 2025年1月20日に、弁護団長である平裕介弁護士の意見陳述がありました。書面で提出された「意見陳述要旨」の全文をご紹介します。

 訴状はA4で27ページありますが、この意見陳述要旨はその訴状の、わかりやすいポイント解説になっています。

第1回口頭弁論の後の司法記者クラブでの記者会見より

 

令和6年(ワ)第30571号 地位確認等請求事件

原告 神谷 貴行

被告 日本共産党 外1名

意見陳述要旨

 

2025(令和7)年1月16日

東京地方裁判所民事第36部 御中

 

原告訴訟代理人 弁護士  平  裕 介

 

1 本件の事案の概要

本件は、原告である神谷貴行さんが被告日本共産党において35年以上にわたり誠実に党活動に従事し、党の職員として長年地域社会に貢献してきたにもかかわらず、党内での問題提起を理由に不当な「除籍」措置を受け、さらにその除籍を理由に解雇までされ、生活の糧を奪われるという、極めて理不尽な仕打ちを受けたという事案です。原告は党の規約に違反しておらず、逆に、被告日本共産党(以下「被告共産党」といいます)や被告福岡県委員会(以下「被告県委員会」といいます)の側が党の規約や法律に違反して除籍や解雇を行ったものであり、本件で原告は除籍や解雇が違法・無効であることを訴えています。党や党組織に人生をささげてきた個人の尊厳が踏みにじられており、決して看過できるものではありません。

 

2 当事者

原告は、1988年に入党し、2006年から被告県委員会と雇用契約を締結した上で党の職員として勤務し、真摯に業務を遂行し、市議議団事務局長、常任委員などの要職を歴任し、福岡市長選にも立候補するなど、党の信頼を背負って活動してきました。

他方で、被告共産党は、100年以上の歴史を持つ公の政党でありますが、このたび、原告を党規約に違反して除籍し、原告に対する数々のパワーハラスメントや人格権侵害を放置してきました。また被告県委員会は、被告共産党の内の一組織ではありますが、原告の雇用主であり、違法な解雇を断行した権利能力なき社団です。

原告は、労働基準法・労働契約法上の労働者であり、被告県委員会もこれを認めています。被告県委員会は、原告が労働法上の労働者であることを大前提として、原告に解雇通知書を送付しています。

3 規則に違反する除籍

このような原告が、突如として、2024年8月6日に、除籍され、同月16日、被告県委員会から除籍を理由に解雇されました。

しかし、除籍の要件である「党員資格を明白に失った」という点は到底認定できません。被告県委員会は、1年以上にわたり、「査問」などという時には11人という大人数で原告一人を責めたて、「自己批判」などという反省を強要するような異常な態様の調査によって原告を精神疾患に追い込み、2度も休職させるほどのハラスメントや人格権侵害を繰り返してきましたが、結局、原告の規約違反1つ認定できませんでした。このことは、党規約に違反せずに、あくまで規約の範囲内で、原告が党の決定に従う姿勢を示しつつブログ投稿をするなどの表現の自由を行使したにすぎないという原告の言い分が正当なものであったことを意味します。にもかかわらず、党側は強引に「党員資格を明白に失った」という規約上の要件を一方的に認定し、しかも事前に経なければならない「協議」という規約上の手続すら経ずに、独断的に原告を除籍してしまいました。

被告共産党の規約には「除籍」措置とは別に、「規律違反の処分」としての「除名」が規定されています。本件除籍は、いわば「カジュアル除名」ともいうべき除名の要件や手続を潜脱するような姑息な手法でなされたものでした。原告は、「規律違反の処分」(規約48条以下)の調査審議を受け、規約48条に基づく党員の権利制限を受け続けましたので、原告としても、この規律違反の処分の調査手続に繰り返し応じてきました。にもかかわらず、原告は、突如として一方的に、警告、権利停止、罷免、除名といった規約48条の「規律違反の処分」とは性質の全く異なる「除籍」の措置(これは「規律違反の処分」ではありません)をとること宣告され、その上で、極めて不意打ち的に「協議」(規約11条)という簡易な手続しかない措置の対象とされ、規約11条の「党員の資格を明白に失った党員」という要件についての意見を述べる機会もないままに除籍されたのです。「規律違反の処分」(規約48条)であれば、「十分意見表明の機会をあたえる」(規約55条)など「事実にもとづいて慎重におこなわなければならない」ところ(規約49条)、被告らは、このような慎重な手続を必要としない「除籍」措置によって、実質的な除名処分を行っているわけです。これがこの国の政策に大きな影響を与えている公の政党のすることでしょうか。本来は党員が国籍を失ったり、年齢が18歳未満だと判明したりしたときなどにだけ適用されるとされるはずの、趣旨の全く異なる「除籍」の規定を、除名の代わりの規定として、いわば脱法的に適用することは、政党自身が自ら作ったルールに違反するものであり、公党として許される行為ではありません。

このように、本件除籍は実体的にも手続的にも瑕疵があり、無効なものです。

行きの新幹線で。伊吹山でしょうか。



 

4 解雇権の濫用

(1)本件解雇の客観的合理性は存在しない

被告県委員会による本件解雇も、違法であり、無効であると言わざるを得ません。先に述べたとおり、原告は労働基準法・労働契約法に規定される「労働者」であり、解雇については使用者の側に高いハードルが課せられています。

そして、本件除籍は、実体的にも手続的にも瑕疵があり無効ですから、本件除籍を理由とする本件解雇には「合理的な理由」(労働契約法16条)がありません。

これは勤務員規程との関係でも同じです。原告宛ての解雇通知書には、「日本共産党福岡県委員会勤務員規程第1条、第2条」との記載がありますが、これらの規定は、県委員会の「勤務員」としての活動や任務遂行について抽象的な定めを置くものにすぎず、除籍されたから直ちに解雇されるなどということは一言も書いていません。さらに言えば、原告は、勤務状況について能力不足やミスを理由に上司等から具体的な注意を受けたこともありませんから、具体的な業務上の支障を発生させたわけでもなく、他の解雇事由もありません。勤務員規程の第8章では「規律違反」「ふさわしくない、言動」「不都合な行為」による罷免を定めていますが、被告県委員会はこのような規定も適用していません。このように、勤務員規程との関係でも、客観的にみて「合理的な理由」があるなどということは到底いえないわけです。

(2)本件解雇は社会通念上相当といえるものでもない

本件解雇には社会通念上の相当性もありません。

原告は、被告県委員会による過酷な査問・調査や権利制限を受け続け、適応障害により休職に追い込まれ、通院及び投薬が必要な状態にさせられましたが、それでもなお、長期にわたる調査に誠実に対応してきました。原告は精神的にボロボロになりながらも、規約違反についての調査や審議に協力し、党勢拡大の活動に尽力し、党に貢献してきました。

また、原告は党の規約を遵守する態度を示し続けています。原告は、綱領・規約・大会決定を守る意思はあるかなどという質問に対し、「あります」と回答し、党のルール等を遵守して行動する旨を述べていますから、規約第4条で定める「規約を認める」という「党員の資格」は満たしています。

さらに、原告は、勤務員としての勤務につき具体的な支障を生じさせていません。懲戒処分を受けたことがないのは勿論のこと、勤務状況について能力不足等の具体的な注意を受けたこともありません。

しかも、本件解雇には合理的な解雇手続も経られていないという問題もあります。本件解雇について原告の意見表明の機会はありませんでした。

したがって、本件解雇には社会通念上の相当性もありません。

以上より、本件解雇は、被告県委員会が解雇権を濫用したものであり、違法かつ無効です。

5 パワーハラスメント・人格権侵害

本件で、原告は、被告らの安全(健康)配慮義務違反あるいは職場環境調整義務違反も主張しています。判例に照らすと、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入つた当事者間」においては、その「法律関係の付随義務として……信義則上負う」ものとして、原告対する被告県委員会や被告共産党安全配慮義務等が認められます。

被告県委員会は、労働者である原告に安全な職場環境を提供し、パワーハラスメントや人格権侵害を防止する義務を負っていましたが、これを怠り、適切な調査方法を取らずに、原告を精神的に追い詰めました。また、被告共産党も、被告県委員会の指導機関の地位にありながら是正措置を怠り、ハラスメントや人格権侵害を放置しました。被告共産党内では、過去に、小池晃書記局長が現在は委員長の地位にある田村智子副委員長に対しパワハラをして規律違反の処分としての「警告」(規約49条)を受け、田村氏も当初はそれに気が付いていなかったような態度をとっていたなど、幹部のレベルでもパワハラが横行し、パワハラへの理解不足がありました。対外的にはハラスメント根絶を声高に叫びつつ、党の内部では逆にハラスメントが平然と行われ、蔓延しつつあります。

被告らは、原告に対し、安全配慮義務違反等に基づく賠償責任を負うべきです。

 

6 結語

最後に、この訴訟の意義について述べます。

原告は、被告らの違法行為により、党員・党職員としての地位を失い、精神的苦痛を受け続け、現在でも通院や服薬を余儀なくされています。それにもかかわらず、現在、全国的に同様の「カジュアル除名」としての除籍やパワハラが横行していることも考慮し、党員・党職員としての誇りを守るために、原告は法廷に立つことを決意しました。神谷さん一人だけの問題でありません。この訴訟は、同じ境遇にある多くの党員ひとり一人に対する政党の違法行為をなくすための訴訟でもあります。

原告は、政党の「結社の自由」を否定(して)おらず、むしろ尊重しています。しかし、同時に、結社の自由は、公の政党が解雇権濫用やパワハラをやっていいことの言い訳にはなりません。結社の自由は違法行為をなきものとする免罪符ではないのです。

除籍や解雇が公正なものでなければ、組織内で信念を貫く行為そのものが理不尽な制裁の対象とされ、党上層部への「黙従」だけが評価される不健全な社会となります。そのような政党が国家権力を伴う国家の政策を左右することを許していいのでしょうか。ここで原告が救済されなければ、党組織への信頼だけでなく、法の正義そのもの、司法権の存在意義そのものが問われます。このたびの原告の勇気ある決断をぜひ正面から受け止めていただき、そして裁判所の英断によって、原告の誇りと生活を取り戻す判決を賜りたく、心よりお願い申し上げます。(以上)