(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方はこちらを先にお読みください。)
私が原告となって共産党福岡県委員会に対して起こした宿直残業代請求裁判。
10月1日に第1回口頭弁論がありました。
いくらを請求しているのか?
この裁判はどんな意義があるのか?
相手(被告側)の答弁書はどんなものだったのか?
弁護団がわかりやすく解説していますので、ぜひ15分ほどの動画をごらんください。
この動画の7分40秒あたりで平裕介弁護士が「(被告の共産党県委員会側の答弁書を読むと)残業代支払いを認めた上で支払うのだろうと現時点では考えられます」と述べています。また、松尾浩順弁護士も14分45秒あたりで「答弁書を見ていただいてわかる通り、『残業代を請求します』という訴状に対して『相応の金額を払います』っていうい答弁だったんですね」と説明しています。
私もそうであるとしか読めませんでした。ここから「いや計算したらやっぱり0円だった」というめちゃくちゃな対応をしてくるとはさすがに考えにくいと思います。
「労働者でないから払わない」「自主的な活動であって残業ではない」などという主張はぜず、「払う」ことを前提に「どれだけ払うか」という次元にすでに原告・被告とも焦点は移行しているのです。
つまり。
私が労働基準法上の労働者であることを認め、宿直は残業であり、それにふさわしい残業代を払う——これを共産党福岡県委員会が認めたと考えられるということです。
共産党職員が残業代の支払いを求めて裁判を起こし、共産党がそれを認めて残業代を払う方向に大きく動いているのであり、歴史上初めてのことです。
これは残業代を払うという点でも、そして、労働者性を認めることになるという点でも、画期的なことではないでしょうか。
「労働者性」についてコロコロ変わっているようにしか見えない共産党幹部の主張にいよいよ決着がつく
私を解雇したとき(24年8月)、被告側は「契約解除」とは言わずわざわざ「解雇通知」を出し、その中で「あなたを解雇し…」「解雇予告手当として…」と言い、その「解雇通知」が「労働基準法第22条」に基づくものだと書いて、私という党職員が労働契約法上の「労働者」であることを認めました。
ところが、25年1月の田村智子委員長の記者会見で「専従職員の地位はいわゆる労使関係と異なる」「専従職員の地位はいわゆる労使関係と異なる」と宣言し、国民向けにはあたかも「共産党の職員は労働者ではない」と言わんばかりのアピールをしました。
いやいや、おかしいでしょう、と私たちは言いました。私を労働者として扱った福岡県委員会の解雇の対応とまるで違うからです。
すると裁判で被告側は25年3月31日の準備書面でちゃんと、私と「雇用契約を締結」したと記し、私が「労働契約法上の労働者」であることを認めました。
しかも、共産党が労基署に就業規則を提出したり、36協定まで結んだということが報道されたのです。どうみても労働者として扱っているとしか思えません。
え…? 田村委員長の記者会見と違うのでは…? と普通の人なら思うはずです。
つまり田村記者会見は「国民向けプロパガンダ」で、裁判や労基署に対しては、さすがに「労働者ではない」などとは主張できないのだろうと思ったものです。
ところが、25年8月に出した被告側準備書面では「形式上『雇用契約の締結』を認めたに過ぎず、それをもって、ストレートに原告の『労働者性を正面から認めた』ことにはならない」だの「一般私企業のような利潤追求のために指揮命令を受けて労働力を提供するという関係にはない」だのと、まじめに書いて出してきたのです。
私たち原告・弁護団はびっくりして、裁判所に求釈明を申し立てました。一体どういうつもりなのか説明させるようにしてください、と。裁判長も同じ問題意識だったようで、被告側にそれを釈明を求めました。
と思っていたら、福岡では被告の1人である共産党県委員会が「労働者としての残業代を支払う」という姿勢を見せてきたのです。
フツーの人なら「わけがわからない」と言うでしょう。
つまり、
「労働者でない」→「労働者だ」→「やっぱり労働者ではない」→「いややっぱり労働者だ」…をコロコロ変えているようにしか思えないのです。

こうした中で残業代裁判において、共産党県委員会が残業代を払う方向で動き始めたのです。
実際に残業代を払えば、これはもう共産党幹部がなんと言おうとも、「労基法上の労働者」として認めたことになりますし、裁判上もそのように扱われます。
だから、今回そうした方向で事態が動き始めたというのは、この労働者性の認定においても画期的な動きだということができると思います。「労働者性」についての発言をコロコロ変えているようにしか見えない共産党幹部の対応ですが、「残業代の支払い」という行為によって決着がつくことになるのです。
その上で、私が当日、司法記者クラブおよび報告集会で表明したコメントを以下に紹介します。

(私のコメントここから)
私としては「宿直残業をしたので、残業代を払って欲しい」というごくシンプルな要求をしているだけです。難しいことは何もありません。
共産党は党の綱領で「多くの企業で『サービス残業』という違法の搾取方式までが常態化している」と指摘し、先の参議院選挙の基本政策でも「違法・脱法の長時間労働をなくします」「『サービス残業』を根絶します」と訴えてきたはずです。
それなのに、なぜ私や他の勤務員だった人が残業代を払ってほしいと内容証明を送っても無視し続け、「請求する勤務員がいなかった」などと嘘までつくのか、理解に苦しみます。
私の裁判をめぐって、共産党幹部の対応は異例づくめです。
党幹部はこれまで「共産党の勤務員は労働者ではない」と言い続けてきたました。
しかし、ようやく私の裁判で私が雇用契約を結んで労働者であったことを認めました。そして、労基署の是正勧告に従って、初めて就業規則を作成して提出し、これも初めて36協定も結んだりしたことが新聞で報道されました。
と思ったら、急に党の最高幹部が共産党の勤務員は労働者ではないかのような記者会見を行い、東京地裁でこれにならってやっぱり労働者ではないかのような書面を出してきたのでびっくりしました。
と思ったら、今度はこの福岡の裁判で“労働者としての残業代は払わないことはないと”言って、また労働者であるかのような答弁書を出してきたのです。
裁判当事者である私だけでなく、一般国民から見て、一体共産党は自分の党の職員を労働者と見ているのか見ていないのか、誰もわからないでしょう。
愚弄する…とまでは言いませんが、見解を振り回して、わからないようにしているのではないでしょうか。
おそらくたくさんいる共産党職員自身は自分が労働者であるのか労働者ではないのか、全くわからないでしょう。わざとわからないようにしている、と思われても仕方がない二転三転の態度です。

仮に労働者ではないというなら、堂々と主張すればいいではありませんか。
しかしそんなことは社会で通用しないので、そう主張できないのではないでしょうか。
私は、共産党という党が論理的に一貫し、筋を通しているところに感動して入党しました。そして、その鋭さに畏怖に近い敬意を抱いてきたのです。その古巣が、最も得意とするはずのロジックにおいて、こんなみじめな姿をさらしていることに、涙が出るほど残念な気持ちです。
その職場で働いている人に自分が一体どういう働き方をしているかを、まるでわざと混乱させるために、コロコロ変えているかのようで、ブラック企業でさえこんなやり方をするだろうかと、情けない気持ちです。
先ほども弁護士からお話がありましたが、他にも残業代を求めている職員だった人がいますし、アンケートでもたくさんの職員が残業があることを告発しています。多くの人が苦しんでいるのです。
被告側の答弁書では「残業代請求がなかったから払わなかった」という言い訳を堂々と書いているのですが、そもそも残業があったかなかったか、勤怠管理をしなければならない事業所として、信じがたい言い分だと思います。実際、福岡県委員会は勤怠管理をしてこなかったために、労基署から是正勧告まで出されているのに、反省すらしていない、まさに「ふてぶてしい」態度と言われても仕方がないのではありませんか。
労働者が働いた分、残業代として払ってほしい——このシンプルなことを、労働者階級の党であると自称する共産党自身が実践してほしい。私がこの裁判で求めたいのはそのことだけです。
こんな単純な正義がきちんと通ることで、多くの人が救われます。
あわせて日本共産党が今の間違った道から立ち直る大きなきっかけになると信じております。
(私のコメントここまで)
松竹伸幸さんからの報告集会での問題提起
報告集会の会場には松竹伸幸さんも姿を見せてくれました。
私の裁判の傍聴までしていただき、意見陳述についてポイントをついた点を評価してもらいました。ありがとうございます。
松竹さんは、報告集会で発言されました。
というのも、全国の地区委員会事務所は、1人しか専従職員がいないところが多い、そこの人たちにも届いて共感できる形での提起をぜひお願いしたいということでした。
福岡県委員会には確かに私のような明らかな「ヒラ」職員が一定数います。しかし、地区委員会になると専従職員が1人だけで、それが「地区委員長」という肩書きだったりするところがザラにあります。そういう人は土曜も日曜もなく、夜遅くまで働いています。その「1人専従」は、なんでも自分の裁量で決められる経営者・管理者のように見えますが、「やらなければならないこと」にがんじがらめになった究極の労働者のようにも見えるのです。
松竹さん以外でも報告集会で地区委員会の勤務をしてきた人が発言し、私の裁判を支援してくれることを表明した上で、地区委員会での専従の大変さを訴えられました。
これらの発言を受けて、弁護団の方も、一般企業で「名ばかり管理職」や子会社に1人だけ出向させてしまうやり方について触れるなど、実態として労働者である人をどう救うか、労働者ではない人をどうするかという点について活発な議論が行われました。
大変大事な議論だったと思います。
本当は、党大会でこうした議論が熱心に交わされなければならないのではないのでしょうか。この報告集会はまさにそうした「党大会になりかわって開かれた『共産党福岡臨時党大会』」だったのかもしれません。
私がその際発言したのは、1人で地区で勤務している職員が、労働法的にはどのような地位にあるのか、それが労働の実態に照らしてどう扱うことが適正なのか、さらに、仮にその人を労働者と定めた、もしくは経営者・管理職と定めた場合に本人は十分納得できるのか、健康や生活は壊さないのか、などということについて、党中央が詳細に調査して、きちんと全党に対してまともな制度設計図を提案する必要があると思います、ということでした。
そのような調査と提起ができるリソースを持っているのは、党中央しかないからです。(いち個人である私がそのようなことを責任をもって提案できる力量はありませんし、そのような義務もありません。)
中央委員会がそのように動くようイニシアチブをとるのは党幹部の仕事です。そうした本来やるべき仕事もせずに、「観劇」だの「文化活動」だのの空き時間に「わかっていないやつらに、共産党職員が労働者ではないとわからせてやらねば」と現場に説教しにくるような「幹部」は幹部失格と言われても仕方がないでしょう。