第3回期日での私の口頭陳述——共産党における除籍濫用はどこが問題か

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方はこちらを先にお読みください。)

 

 6月19日に私が原告となっている共産党不当解雇裁判の第3回口頭弁論がありました。

 多くの傍聴、募金に引き続き感謝します。

 また、裁判にアドバイスをいただいた複数の法曹関係者の方、ありがとうございました。反映できたものとできなかったものとありますが、私の方で咀嚼して、いずれも弁護団との会議で検討しております。

 第3回の口頭弁論についてですが、「原告第二準備書面」で詳しく展開しています。長いのでそれを簡潔に記した松尾浩順弁護士の口頭陳述要旨をお読みください。

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 このうちの最初の2ページです。

 「原告第二準備書面」の半分くらいは、被告側が反論してきたことへの再反論なのですが、さらにそのうちの多くの部分は被告側が出してきた「経過」——事件の「事実」に関することについての認否(事実として認めるかどうか)などを書いています。

 その部分は興味のある人だけ読んでもらえればいいと思います。

 

都電の駅。ちょうど都議選の真っ最中でした。

 「原告第二準備書面」の残りの半分は、「原告の主張」です。

 最初に「除籍措置は、規約の誤った解釈・運用に基づいてなされており、無効であること」を積極的に明らかにしています。

 ここには、「規約違反を除籍で追放する」というやり方が、いかに規約を無視した運用としてまかり通っているかが解明されています。おそらく、裁判でこうした問題が解明されたのは共産党の歴史の中でも初めてではないでしょうか。

 

 これを短く要約したのが、原告である私(神谷貴行)の口頭陳述要旨です。

 下記の後半の3ページです。

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 全体は6分もかからない短いものなので、このブログでも再掲しておきます。

東京地裁

 

令和6年(ワ)第30571号 地位確認等請求事件
原告 神谷 貴行
被告 日本共産党 外1名

 

口頭陳述要旨

 

2025(令和7)年6月19日

東京地方裁判所民事第36部合B1係 御中

原 告   神 谷  貴 行

 

1 陳述の機会を与えていただき感謝いたします。

2 日本共産党において、「除名」と「除籍」はどちらも党籍を失うという結果は同じですが、その意味合いと、そこからくる手続きの厳重さは、まるで違います。
 「除名」は処分の一種で、しかも最高の処分ですから、幾重にも慎重な手続きが設けられています。まず最大6ヶ月にわたる党員の権利を制限しての徹底した調査審議、そして支部での決定では出席者でなく構成員の過半数、役員ではさらに3分の2以上の賛成という非常に高いハードルがあります。実際、福岡県では、60名ほどいる県役員の総会には議会用務や仕事、病気のためにかなりの欠席者が出るのが普通で、構成員の3分の2を確保することは容易ではありません。また、決定に際して本人の十分な意見表明の機会が保障され、決定後も一級上の機関の承認の際には公平な資料の調査、本人の訴えの聞き取りが義務づけられ、さらに除名後も大会等での再審査まで保障されています。これらはいずれも規約に明記*1されています。
 これに対して、「除籍」はどの党機関で、どの程度の賛否で決定するのかも、規約には書かれておらず、意見表明の機会も、承認の際の本人聞き取りも、再審査の権利も一切ありません。*2
 なぜ同じ効果を持つのに、こんなにも手続きのハードルが異なるのでしょうか。
 それは、「除籍」は「党員の資格を明白に失った」場合に限定して、半ば機械的に党籍を抹消するニュートラルな措置だからなはずです。
 具体的には、資格要件は①18歳以上かどうか、②日本国民かどうか、③綱領と規約を認めるかどうか、この3つしかなく、いずれも外形的・客観的に誰が見ても直ちに認定できることばかりです。だから、調査や協議は確認する程度でできる簡単なものになっているのです。

3「綱領と規約を認める」という行為は、入党の際にきわめて明瞭に制度化されていて、入党申込書には「日本共産党の綱領と規約を認めて入党を申し込みます」と最初から印刷されているので、入党希望者はその申込書にサインするだけで「認める」ことの表明となるのです。それを「明白に失う」とはそのサインを撤回するとか、「認めない」と明言するとかいうことであって、外形的・客観的に直ちに認定できるものですから争いようがありません。

 このような外形的・客観的な明白性ゆえに、「除籍」は、「除名」とは異なり、簡素な手続が、特に認められているのであります。
 ところが、被告らは「除籍」が「除名」と同じ効果を持つのに、「除名」に比べて驚くほど簡単にできることに目をつけ、「除籍」の制度を潜脱して党員の追放を行う、「カジュアル除名」ともいうべきやり方を続けているのであります。これは適正な手続きに違反するものです。

4 被告らは私を「『党の綱領と規約を認める』意思がないものと判断せざるを得ず」、「除籍」したのだと準備書面に書いています。
 しかし、規約では「党の綱領と規約を認める」ということを党員の資格として定めていますが、認める「意思」なるものを、本人以外の他の誰かが「判断」するなどということはどこにも書かれていません。これは被告らが勝手に付け加えたものです。
 これでは、本人がいくら「規約を認めます」と明言しても、「いやあなたにはそんな意思はない」「そう判断せざるをえない」と言えば、しかもそこに司法審査の手が及ばないというのであれば、指導部が気に食わない党員はいくらでも、自由自在に追放できることになってしまいます。実際、私は書面でも口頭でも繰り返し「規約を認める」と表明していたのに無視されました。そして、被告の準備書面においては、私に「意思」がないと「判断」した「明白」な根拠は何も書かれていません。自分たちがそう判断したんだから、司法は口を出すなと言っているだけです。こんなことが許されるでしょうか。
 私は規約違反など一つも犯していませんが、もし私が規約違反をしたというのなら堂々と規約違反の認定と処分の手続きを取り、他の党員たちの前で私に意見表明させ、公明正大に審議させるべきではなかったでしょうか。

5 このような「カジュアル除名」は今、共産党で横行しています。私の不当解雇などを告発した福岡県の若い党員たちが、公式の規約違反の認定手続きもなく、一方的に「除籍」されています。しかも全国で同様のことが起こり、メディアでも報道されるようになっています。
 政治や社会を変えたいと共産党に入った人たちの真剣な思いが踏みにじられていると同時に、共産党袴田事件最高裁判決が示す通り、そもそも政党は「国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有効な媒体であって、議会制民主主義を支える上においてきわめて重要な存在」であるのに、こんなにも不公正で非民主的な運営がまかり通っている現状を深く憂慮せざるを得ません。一刻も早く改善させる必要があると考えます。
 裁判所におかれましては、そのことを徹底した審理によって明らかにしていただきますようお願いいたします。「カジュアル除名」という手続きを行ったこと自体に問題があることを明記してくれれば、そのことで同じような境遇にいる多くの党員を救い、ひいては日本の政治をよくすることにつながると確信いたします。
 以上で私の陳述を終わります。


以上

 

 いま日本共産党でまかり通っているやり方は、

  1. 幹部が公式の違反認定なしに気ままに「おまえ違反ね」と言う
  2. 自己批判(ごめんなさい)しないと「規約を守る気ないね」
  3. →除籍

というものです。

 1も異常ですが、仮に違反でも2は適用できません。
 多くの党員は「規約違反なら除籍していい」と思い込まされています。

 規約違反は「処分」で対応することが規約第11章「規律」で定められています。除籍(第2章11条)では対応できません。

 また、「自分は間違っていない」として意見を保留する権利、つまり自己批判を強要されない権利は規約で保障されています(第2章5条5号)。

 除籍を濫用する「カジュアル除名」には何の道理もありません。党幹部はこのような規約運用を直ちにやめるべきです。

*1:「規律違反について、調査審議中の党員は、第五条の党員の権利を必要な範囲で制限することができる。ただし、六カ月をこえてはならない」(48条)、「党員にたいする処分は、その党員の所属する支部の党会議、総会の決定によるとともに、一級上の指導機関の承認をえて確定される」(50条)、「都道府県、地区委員会の委員、准委員にたいする権利停止、機関からの罷免、除名は、その委員会の構成員の三分の二以上の多数決によって決定し、一級上の指導機関の承認をうける。この処分は、つぎの党会議で承認をうけなくてはならない」(51条)、「除名は、党の最高の処分であり、もっとも慎重におこなわなくてはならない。党員の除名を決定し、または承認する場合には、関係資料を公平に調査し、本人の訴えをききとらなくてはならない」(54条)、「党員にたいする処分を審査し、決定するときは、特別の場合をのぞいて、所属組織は処分をうける党員に十分意見表明の機会をあたえる」「処分をうけた党員は、その処分に不服であるならば、処分を決定した党組織に再審査をもとめ、また、上級の機関に訴えることができる。被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査をもとめることができる」(55条)

*2:「党組織は、第四条に定める党員の資格を明白に失った党員、あるいはいちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる。除籍にあたっては、本人と協議する。党組織の努力にもかかわらず協議が不可能な場合は、おこなわなくてもよい。除籍は、一級上の指導機関の承認をうける」(11条)