(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方はこちらを先にお読みください。)
私が原告となった共産党不当解雇裁判の第2回期日における原告(私)側の平裕介弁護士の口頭陳述要旨です。原告第一準備書面のポイントを裁判所で実際に短く述べたものだとお考えください。
令和6年(ワ)第30571号地位確認等請求事件
原告神谷貴行
被告共産党外1名
口頭陳述要旨
2025(令和7)年4月24日
東京地方裁判所民事第36部御中
原告訴訟代理人弁護士 平裕介
原告は、このたび提出された被告らの準備書面(1)に対し、追って詳細な反論をする予定ではあるが、本日陳述する原告第1準備書面では、その反論の要点についての原告の主張を行うとともに、この主張を前提として、いくつかの重要な事項について被告らが事実関係を明らかにするよう、裁判所による釈明権の行使を求めます。
第1 共産党袴田事件判決等は本件除籍の司法審査を回避する根拠にはならない
被告らは、「勤務員」としての原告が労働契約法上の「労働者」に該当することを認めつつも、共産党袴田事件判決を引用して本件除籍は司法審査の対象外であると主張する。しかし、袴田判決自体、「一般市民法秩序と直接の関係」がある場合には、裁判所の審査が及ぶとしている。そして、本件除籍による党籍の剥奪が解雇(雇用契約の終了)という法的効果を伴っていることから明らかなように、政党内部の問題などではなく、労働法上の労働者に対する重大な権利侵害の問題に直結するものであるから、本件除籍は一般市民法秩序に直接関わるものである。したがって、本件除籍にも司法審査は及ぶことから、被告らの主張は失当である。
また、被告が挙げる神戸地判令和7年2月19日(乙1)は、政党自身が勤務員を解雇した事案ではなく、政党による解雇は全く争点になっていない裁判例であるから、本件とは事案が異なるものであって、その射程は全く本件には及ばない。
当然のことながら、政党も雇用主である以上、労働契約法等の労働法が適用されるため、政党の一存で法律上の解雇規制を潜脱し、労働者の権利を奪うことは許されない。政党の自律権や結社の自由は、労働者の裁判を受ける権利や労働基本権等の基本的人権を一方的に剥奪できる自由などではない。
第2 求釈明
1 協議手続(規約11条)を除籍決定後に行ったのはなぜか
被告共産党の規約11条は「除籍にあたっては本人と協議する」と定め、除籍については「慎重に」審査・調査するとも規定している。また、法律の条文でも「〜にあたっては」という文言は、事前に手続等を実施することを意味する。本件除籍についても、本来、事前に原告の弁明を聞く趣旨のはずである。しかし、被告県委員会は、協議手続を除籍決定後に行うと通知している。
そこで、第1に、被告らとしては、除籍に関する協議手続が事後手続で良いと考えているのか。事後の手続でも「適正手続」であると被告らが考える合理的な根拠を明らかにされたい。
2 規律違反の処分手続を潜脱して除籍手続を用いるという運用の許否
次に、被告らは、原告に対する「規律違反の処分」の手続が開始された後、規律違反の処分である「除名」ではなく、いつの間にか「除籍」手続に移行してしまっているという運用につき、このような手法が許されるのかということに対して明確な認否・反論を避けている。
そこで、第2に、このような処分手続をかいくぐるかのような措置が党規約の運用として許されるのかについて、正面から回答されたい。
3 原告のブログ記事を除籍の理由として遡及的に挙げたのはなぜか
さらに、原告の複数のブログ記事が除籍理由として突然後出し的に挙げられることになったが、これらの殆ど(乙2~6、8、9)は本件除籍以前には全く規約違反として扱われておらず、事前調査においても対象外であった。書評等に過ぎない内容を突如として後付け的遡及的に除籍の理由にすることは、手続的にも実体的にも問題がある。
そこで、原告は、第3に、被告らが、本件除籍前に予備調査(査問)や公式調査においてこれらの原告のブログに言及せず、あるいは調査においてこれらのブロクについて規約違反を指摘しなかった合理的な理由の説明を求める。
4 解雇理由を定めた就業規則が解雇当時存在し、職員に周知されていたのか
加えて、労働基準法89条は労働者の雇用主に対して解雇理由を就業規則に定める義務を課しているが、原告は被告の就業規則を確認できておらず、その存在自体疑わしい状況である。被告県委員会は、原告を解雇した後、約半年も経ってから、労基署から是正指導を受け、就業規則をようやく届け出たなどという新聞報道もある。仮に本件解雇当時に就業規則がなかったとすれば、労働契約法16条の観点からも、本件解雇には客観的合理性も社会的相当性もなく、違法・無効だということになりうる。
そこで、第4に、本件解雇時点で就業規則が存在していたか否か、また原告らに周知されていたか否かの確認を求める。
5 解雇に際し、原告に事前通知や弁明の機会を与える手続きを経たのか
最後に、本件解雇について合理的な解雇の手続(労働契約法16条参照)が実施されていないという原告の主張に対し、被告らは、単に「否認ないし争う。」としながらも、それ以上、具体的な主張をしない。「労働者階級の政党」であれば当然認識しているはずであるが、解雇の手続は重要な要素である。にもかかわらず、被告らの主張は、本件では解雇手続を不要と考えているのかなどの点が全くもって不明である。
そこで、第5に、本件解雇に際し、原告に事前通知や弁明の機会を与える手続きが実施されたのか、あるいは解雇手続が不要だと被告らが考えているのであればその合理的な根拠について説明を求める。
6 結語
以上に述べた5つの事項は、本件除籍及び本件解雇の違法性との関係で重要な事実に関するものであるから、裁判所におかれては、被告らに対し、これらの事項についての釈明権の行使をお願い申し上げます。
以上