(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方はこちらを先にお読みください。)
私が原告になっている共産党不当解雇裁判の第2回口頭弁論で、被告(共産党)側の答弁書を補足する被告準備書面(1)を、私の裁判支援のサイトにアップしました。
その中身を私流に非常に乱暴に要約するとこうなります。
- 除籍は政党内部の問題なので自分たちで解決します。裁判所は口出ししないでください。過去の共産党袴田事件での最高裁判決や最近の神戸地裁での事件の判決もそう言ってます。
- 神谷はとにかく除籍されたんです。除籍され党籍がなくなった以上、雇用できないというルールになっているので、解雇には合理的な理由があります。
- 神谷がハラスメントと言っている話は、神谷が規律違反をしたので調査のためにやったことでそれはやむを得ないことです。
これへの原告(神谷)側からの反論を、原告第一準備書面としてまとめています。
被告側の3つの主張に対して、今回の原告側の反論は、第1点にしぼっています。それ以外の問題は「ん? すいません、もうちょっとちゃんと説明してくれます?」と説明を求め、次回に本格的に反論します。
被告側の第1点への反論は、そのポイントを私流に乱暴に要約すると、こうなります。
- 被告(共産党):除籍とか政党内部の問題には司法は口出ししないっていうのが最高裁判決だし神戸地裁の判決だよ。
- 原告(神谷):いやその最高裁判決で「法律とかに関わる問題を除けば」って注意書きしてあるでしょ? 神谷の除籍って解雇っていう法律に関わる問題だから、司法も口出しできるんだよ。もし口出しできないなら、雇用問題なのに政党のやりたい放題になっちゃうじゃん。ちなみに神戸地裁の判決は共産党を解雇された話じゃないので関係ないです。
以下の原告第一準備書面の全文を紹介します。

令和6年(ワ)30571号 地位確認等請求事件
原 告 神谷貴行
被 告 共産党外1名
原告第1準備書面
令和7年4月17日
東京地方裁判所民事36部合B1係 御中
原告訴訟代理人 弁護士 平 裕 介
同 弁護士 松 尾 浩 順
原告は、2025年(令和7年)3月31日付けの被告らの準備書面(1)(以下「被告準備書面(1)」という。)に対し、追って詳細な反論をする予定であるが、本書面においては、下記第1の原告主張を前提として、下記第2の各事項の釈明を求める。
記
1. 被告らによる共産党袴田事件判決に関する主張は不合理である
被告らは、被告準備書面(1)2頁(1)アにおいて、原告の労働者性を正面から認めたが、その一方で、共産党袴田事件判決(最判昭和63年12月20日判時1307号113頁)を引用し、「本件除籍に司法審査が及ばないことは明らかである」(被告準備書面(1)1頁)と主張する。
しかし、被告準備書面(1)11頁9行目にもあるとおり、同判決は、「政党の内部的自律権に属する行為は法律に特別の定めのない限り尊重すべきである」(下線は原告代理人)としているのであって、労働契約法16条等の労働法の定めと関連する政党の行為については、政党の内部的自律権に属する行為であっても、裁判所がこれを「尊重すべき」ものになるとはいえない。すなわち、被告の主張によると、勤務員が党籍を失えば当然に解雇に係る「合理的な理由」(労働契約法16条)があるということであるから、本件は原告に対する除籍が原告に対する解雇(労働者としての法的権利・法的地位の剝奪)という「一般市民法秩序と直接の関係」(袴田事件判決)を有するものであることが明らかな事案であって、政党の「内部的な問題にとどまる」(同判決)事案などではない。
したがって、「本件除籍に司法審査が及ばない」(被告準備書面(1)1頁)という被告らの主張は失当である。
なお、原告としては、政党のメンバーシップの排除に係る民主的な手続が正当に機能していることを前提とした同判決の判断枠組みが本件にもそのまま及ぶのかということ自体についても、追って主張する予定である。
2. 神戸地判裁判例(乙1)は本件とは事案が異なる
また、神戸地判令和7年2月19日(乙1、被告準備書面(1)11頁)は、 本件のように党県委員会が勤務員を解雇した事案ではなく、灘民商という政党(本部・県委員会等)とは別の主体である団体が雇用していた労働者を解雇した事例であって、同判決においては解雇に係る司法審査は全く争点になっていない。
このように、一般市民法秩序と関係のないものとされた同判決と、上記のとおり一般市民法秩序と関係があることが明白な本件とは事案が異なるものであって、同判決は、本件除籍について司法審査が及ばないことを根拠づけるものとは到底いえない。
3. 被告らの主張は公の政党が労働法を実質的に無視するものである
さらにいえば、被告らの主張に従うと、政党ないし政党組織に雇用される職員である場合には、政党の規定によって解雇事由すなわち解雇の客観的合理性を実質的に争えないことになり、政党は、その内規の規定の仕方如何により、実質的に法律の定める強行法規を遵守しなくても良いということになってしまう。
しかし、共産党袴田事件判決は、このような独自理論をも許す事態まで想定した判決ではない。
特定の政党に所属しつつ当該政党に雇用され、毎月給料を受け取ることで生計を立てている労働者の生活の糧を当該政党が一方的に奪い取る行為(解雇)につき、その解雇事由に関して実質的に司法審査が及ばないということになれば、かかる労働者の裁判を受ける権利(憲法32条)を否定し、ひいては、当該政党が雇用した労働者の労働基本権(憲法28条)を政党の思い通りに否定することすることになってしまうが、政党の「結社の自由」(憲法21条1項)は、その政党が雇用する労働者の生活の糧を司法審査に服することなく奪い取る自由までを保障するものではないというべきである。
4. 本件除籍及び本件解雇の実体及び手続について司法審査は及ぶ
以上より、本件では本件除籍の手続的違法事由(適正な手続が履践されたかという点)はもとより、実質的な解雇事由となる除籍に係る実体的違法事由(党規約5条(5)、(8)該当性)についても当然に司法審査の対象とされるべきである。
また、本件解雇についても、解雇事由(客観的合理性)及び社会通念上の相当性について司法審査が及ばなければならない。

2. 求釈明*1
1. 本件除籍に係る「協議」(党規約11条)について
除籍に係る協議は、次の理由から、事前手続と理解すべきである(訴状17頁)。
なぜならば、第1に、党規約11条は「除籍にあたっては、本人と協議する。」(下線は原告代理人)と規定するところ、これは「聴聞を行うに当たっては、…不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。」と定める行政手続法15条1項柱書(下線は原告代理人)と同様に、「にあたっては、」という党規約11条の文言からすると、事前手続と理解するのが合理的だからである。他にも、行政手続法5条2項、同法12条2項、同法15条1項柱書、同法38条1項、同法41条、行政機関の保有する情報の公開に関する法律13条1項、同法15条2項等、多くの法律の文言において「に当たっては、」という文言が事前に何らかの手続きを行ったり、事前に何らか事項を考慮したりするなど、事前になすべきことについて規定していることに照らしてみても、党規約11条は、除籍の前に「協議」の手続を行う必要がある旨の規定と理解すべきである。
また、第2に、党規約11条は、「…慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる。」と規定しており、その直後に、これを受けて同条が「除籍にあたっては、本人と協議する。」と規定しているという文理に照らしても、除籍に係る協議を(事後手続よりも慎重な)事前手続と理解すべきだからである。
しかしながら、被告準備書面(1)25頁によると、被告らは、本件除籍の手続としての「協議」(党規約11条)につき、本件除籍を決定した令和6年8月6日より後の時点の同月8日になって初めて、原告に対し、その協議を行う旨の通知をしている。
(求釈明1)
このような運用に照らすと、被告らとしては、除籍に係る協議を事前手続ではなく、事後手続であるものと理解しているようであるが、被告らがこのように事後手続であると理解しているのであれば、かかる理解が可能となる合理的な根拠を明らかにされたい。
2. 規律違反の処分手続と除籍手続の関係について
被告らは、被告準備書面(1)において、原告に対する「規律違反の処分」の手続(党規約48条以下)が開始された後、規律違反の処分である除名ではなく、いつの間にか「除籍」手続に移行してしまっているという点(訴状16~17頁)につき、このような手法が許されるのかということに対して明確な認否・反論を避けている。
(求釈明2)
そこで、被告らとして、このような規律違反の処分手続を潜脱するかのような措置が党規約の運用として許されるか否かについて、正面から回答されたい。
3. 原告のブログ(乙2等)について
原告は除籍される日まで規約違反であるかどうかの調査審議を受けており、本名・筆名にかかわらず執筆したブログ記事はどれ一つとして正式に規約違反だと認定されたものはなかった。
とりわけ乙号証として提出された原告のブログ記事のうち、乙第2号証〜乙第5号証は、有名な小説の名場面や歴史ノンフィクションの感想など書評の範囲のもの、ないしは会議や発言についてのごく当たり前の一般論に過ぎない。具体的には、例えば、乙第4号証は近代日本文学の金字塔と言われる、旧日本軍を描いた大西巨人の有名な小説『神聖喜劇』の名場面「知りません」「忘れました」問答についての感想である。同様に、乙第5号証は日本共産党の元党首で、ブログを書いた当時も常任幹部会委員であった不破哲三氏の『スターリン秘史』という歴史ノンフィクションの感想である。被告準備書面(1)において、原告が規約違反をしているかのように非難している「幹部たちの“知的水準の衰弱”」(乙5・3頁目中段という言葉は、スターリン時代のヨーロッパの共産党幹部たちについての評価であり、この言葉自体、不破氏自身が用いている言葉の正確な引用であって、もし原告がこれを理由に除籍されるのであれば不破哲三氏も除籍されることになるが、もとよりそのようにはなっていない。
また、乙第6号証、乙第8号証、乙第9号証は、日本共産党の規約や政策を一般的に解説したものに過ぎない(ただし、乙第6号証の、産経新聞記事への原告の関与を否定した冒頭部分は除く)。
だからこそ、これら乙2〜6、8、9については、本件除籍前の予備調査(2023年4月以降の査問)や公式調査において規約違反容疑の対象であると言われたこともなく、そもそも言及もされなかった。
(求釈明3)
にもかかわらず、被告らは、被告準備書面(1)26頁において、突如、本件除籍の理由として挙げたものとみられる。そこで、被告らが、本件除籍前に予備調査(査問)や公式調査においてこれらのブログに言及せず、あるいは調査において規約違反を指摘しなかった合理的な理由を明らかにされたい。
4. 解雇事由を規定した就業規則の存否について
労働基準法89条3号は、就業規則の絶対的必要記載事項として「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を挙げており、使用者は、解雇事由を就業規則に定めなければならない。また、就業規則に規定(列挙)された解雇事由の記載については、学説・判例上、限定列挙説と例示列挙説と見解が分かれている(山口幸雄=三代川三千代=難波孝一『労働事件整理ノート』(判例タイムズ社、)17頁等参照)ところ、どちらの見解を採るにせよ、大前提として、そもそも就業規則が存在することが必要である。
この点について、令和7年1月21日の新聞報道(甲15)によると、福岡中央労働基準監督署は、同月20日、被告県委員会に対し、労働基準法で義務付けられている就業規則の労働基準監督署への届け出を行っていなかったなどとして党側に是正指導したようであり、被告共産党の中央委員会広報部は、取材に対し「党福岡県委に労基署から指摘される問題があった」と認め、被告県委員会から「(労基署からの)指摘事項については是正をはかり、その旨、労基署に報告書を提出した」との報告があったと説明している。
(求釈明4)
被告らの主張によると、勤務員が党籍を失えば当然に解雇に係る「合理的な理由」(労働契約法16条)があるということのようである(被告準備書面(1)27頁参照)が、そもそも、本件解雇の時点において、そのような定めを明記した就業規則が存在し、かつそれを原告ら労働者に周知していたのか。原告においてはそもそも就業規則を確認できておらず、また、上記新聞報道の真偽を確認する必要があることから、かかる就業規則が本件解雇の当時に存在していたのか否か(存在していなかったということでよいのか)を明らかにされたい。
なお、仮にかかる就業規則が存在せず、上記の限定列挙説に立つのであれば、本件解雇は無効というべきであるし、例示列挙説を採ったとしても、解雇権濫用評価において客観的合理的理由の欠如を推測させるものと解される(甲16)ことから、どちらの見解によるかにかかわらず、被告らは、上記の就業規則の存否につき、回答する必要がある。
5. 合理的な解雇手続(労働契約法16条参照)について
原告は、訴状16頁で、本件解雇に係る手続が不合理なものであり、本件解雇について合理的な解雇手続(労働契約法16条参照)が履践されていないと主張した。
これに対し、被告らは、被告準備書面(1)8頁において、これを「すべて否認ないし争う。」としながらも、それ以上、具体的な理由について主張をしていない。解雇の手続は重要な要素であるにもかかわらず、被告らの主張は、本件では手続を必要としないという趣旨なのか、手続を履践しているという趣旨なのかが不明である。
(求釈明5)
したがって、被告らは、上記各事項につき、否認ないし争うとした具体的な理由を明らかにすべきである。
6. 小括
裁判所におかれては、被告らに対し、上記の各事項につき、釈明権を行使されたい。
以上
*1:裁判官に、「相手にちゃんと説明をさせてください」と要求することです。