第1回口頭弁論での私の意見陳述

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方は24年8月20日付の記事を、また裁判については私の弁護団長である平裕介弁護士の意見陳述を先にお読みください。)

 

令和6年(ワ)第30571号 地位確認等請求事件

原告 神谷 貴行

被告 日本共産党 外1名

意見陳述要旨

 

2025(令和7)年1月16日

東京地方裁判所民事第36部 御中

原 告   神 谷  貴 行

 

第1 生活と尊厳を奪われた

 意見陳述の機会を与えていただき感謝いたします。

 私は、昨年(2024年)8月に被告らから不当に除籍・解雇され、生活と尊厳を奪われました。生活の糧という点では、私は月27万円余を給料として得ていましたが、それを突然奪われました。

 尊厳についても奪われました。私は京都大学卒ですが、今述べたとおり同級生に比べると大変な薄給です。にも関わらず、私がこの仕事を選んだのは、日本共産党の活動にやりがいと誇りを感じていたからです。

 私は1988年、高校生の時に共産党に共鳴し自分で入党を申し込み、その後、共産党の活動を生涯の仕事にしようと、大学を卒業した1995年に専従者、党職員になりました。

全学連委員長の頃(1994年)

 主には、選挙などの政策論戦、もう一つは市議会議員団の事務局の活動を任されてきました。

 選挙の政策論戦は、実際にビラにするまでが仕事です。

私が起案・製作に関わった各地の共産党のビラ

 福岡だけでなく東京、沖縄、被災地など、全国各地の応援に行って、たくさんビラを作りました。版下で年間100種類、30年近く働いたので3000種類は作ったと思います。それだけでなく、私の場合、取材から執筆、党内の意見調整、そしてパソコンによるレイアウトをして入稿まで全て自分で行います。

 的確なビラを素早く作ることは、選挙や党活動では最も求められることの一つですが、プロセスごとに担当者が違ったり、組版やデザインを政治に疎い業者に委託したりするので、膨大な時間がかかってしまうのが普通です。私の場合この工程が全て一人で完結できるため、非常にスピーディーに完成し、どこへ行ってもありがたがられました。住民からも様々な反応が返ってきて、選挙勝利や地域の改善につながり、それらが私の喜びであり、誇りでありました。

 もう一つは、福岡市議会議員団での事務局としての活動です。

 この仕事の中心は何と言っても議員の質問づくりのサポートです。

 私が除籍をされる直前の共産党の議会質問を例にあげてみますと、市側が発表した経済効果のごまかしを私の調査・研究によって暴きました。また、市が進める巨大開発計画が何をモデルにしているかを、私の調査で発掘しました。さらに、2万字に及ぶ防災提言や市の基本計画への市議団としての対案をほぼ全て私が起草し、議会質問の元になりました。ほとんど議員になりかわって書いた質問もあります。つまり党の議会質問の不可欠の部分を支えてきたのです。

 だからこそ、2018年の福岡市長選挙では、市民団体から共通して、「政策に強い神谷を市長として推したい」という声が上がり、党の市議団・県委員会幹部からも直接出馬要請を受けました。その結果、共産党単独推薦候補としては歴史上最高の9万4437票、得票率24.9%を獲得できたのだと考えます。

2018年の福岡市長選挙の結果の記者会見

 こうした仕事は私の誇りでした。いち党員としても、党職員としても業務を懈怠したり無断欠勤をしたりして、懲戒や処分を受けたことは一度もありませんでした。それどころか、2018年には「永年党員」として党から表彰され、共産党と社会進歩にまじめに貢献してきたことを評価され、晴れがましく思ったものです。しかし、こうした私の尊厳を、被告らによる除籍・解雇は全て奪ってしまいました。

 

第2 除籍と解雇、パワハラは不当なものだった

 被告らは、私が2023年3月に、直前の党の県委員会総会について書いたブログ記事が、総会の決定とは異なる意見を公表するなどの規約違反だったと言っていますが、私のブログ記事は“総会決定に従って活動する”と明記するなど、規約には何ら違反するものではありませんでした。また、私が規約に違反したかどうかの正式な認定は最後までどこでもされませんでした。しかも、私はもし私の規約違反が正式に認定されたならその決定には従い、ブログも削除することを繰り返し表明していました。被告らは、私のこうした主張にまともな反論をしないまま、除籍と解雇を強行したのであります。

県委員会総会の討論や写真を公開する日本共産党福岡県委員会のHP(2014年)



 しかもそのプロセスで深刻なパワー・ハラスメントを受けました。

 県委員会の正副委員長・書記長など5人の幹部が取り囲んで私一人を査問しました。5人は、まだ正式な調査もしていないのに、そして党規約では意見の保留が権利として認められているにも関わらず、自己批判せよ、すなわち私が悪かったと謝れ、できなければ「党員としての資格を問われる」、つまり党から追放するぞと迫ったのです。私は精神を病んでいるので5対1での調査はやめてほしいと懇願しましたが、彼らは冷たく拒否し、かわるがわる私を責め立てました。その後も、幹部5人が仕切る県の常任役員の会議において、11対1の構図で、やはり党からの追放を脅す形で自己批判を迫られました。

 後に被告らは“怒鳴ったり机を叩いたりはしなかったからパワハラではない”と言い訳しましたが、上級者で取り囲み追放をチラつかせて自己批判を迫るなら、いくら静かにそれを言ったとしても、いや、静かに言われれば言われるほど、言われた私は凄まれているように感じ、党員人生を全て否定される恐怖を感じてしまうのは、容易に想像できることではありませんか。

 被告らのパワハラはこれだけでは終わりませんでした。私から全ての仕事を取り上げ、職場への出勤の禁止や職場のライングループ外しを命じて職場の同僚と接触を断ちました。職場の移転作業の手伝いや、若い人たちと続けてきた資本論学習会への参加さえ禁じたのであります。

 さらに被告らは、県内の地区委員長会議、福岡市議団会議、国政候補者会議などを次々開き、私の出席を禁じた上で、調査も終わっていないのに「神谷は重大な規約違反をした」と一方的に報告し、同年2月に党を除名された松竹伸幸氏は共産党を破壊し撹乱する者であり、その福岡県における同調者が神谷だと述べ、私の評価を低下させる宣伝を繰り返したのであります。

 被告らのパワハラによって生じた精神疾患のために、提訴や裁判期日が近づくたびに不安は高まり、私は今でも病院に通い、薬を飲み続けなければならない体にさせられています。

 私はそのような仕打ちを受けながら、調査は査問などの予備調査の期間を含め1年3ヶ月の間続き、自分の将来がどうなるかもわからない中に閉じ込められたたま過ごすことになり、本当に辛い時間となりました。

 しかしだからと言って私はこのことを公に発信したり、職務を放棄したりするのではなく、調査結果が出るまで、与えられた職務を誠実にこなしながら、辛抱強く待ちました。

 党規約第48条には規律違反の処分のための調査が定められていますが、私への調査はその48条に基づくものだと正式に決定されました。だからこそ、規約に定められている通り、調査結果が出て、処分についての県役員全員による審議が行われ、そこで私が意見表明をする機会があるのだと信じ、私はずっと待っていたのであります。ところが、被告らは昨年(2024年)8月になって突然、処分ではなく、除籍を決定し、これらの機会は全て奪われてしまいました。

 党規約において除籍は規約第11条で、処分とは別個に定められ、「党員の資格を明白に失った」場合に適用されると書いてあるように、国籍や年齢とともに、本人が綱領・規約を認めるかどうかなど外形・形式によって党員資格の有無を定める条項です。だからこそ規約違反を処分する場合とは違って、非常に簡素な手続きで名簿から抹消できるようになっています。

 私は繰り返し綱領も規約も認めると明言しており、除籍に該当しないことは明らかです。党規約の公式解説である『国民に開かれた党へ——日本共産党新規約のはなし』の73ページでは、重大な規律違反をした党員を処分せず、11条の「除籍で処理するのは正しくありません」とはっきり書いてあります。

 被告らのやり方は、幾重にも慎重な手続きを定めた除名などの処分を回避して、簡単に追放できる除籍条項を悪用したものであり、「カジュアル除名」とでもいうほかない、制度の潜脱であります。私の除籍後に、私への人権侵害に抗議の声をあげた他の党員が、正式な違反認定も処分も回避させる全く同じやり方で、党内から次々と除籍されています。

党東京都委員会の職員時代。代々木駅前で他の職員(のちに国会議員)とともに住民署名に。

 どうか、私の生活の糧と人生の尊厳を回復させてください。そして、被告らにパワハラなどの償いをさせるようにしてください。そのことは、私一個の人生だけでなく、依然として日本の政治で重要な役割を果たしている共産党の立て直し、そして、理想を持って社会進歩を進める組織に加わりながら、結社の自由を盾にした幹部の横暴や人権侵害に苦しんでいる多くの人たちに希望を示すことにもつながると信じております。

 公平な裁判所の判断をよろしくお願いします。

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