都議選での田村智子委員長の第一声。
書き起こしはこちら。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-06-14/2025061404_01_0.html
共産党にとってはなかなか厳しい情勢ではありますが、ぜひがんばってほしいです。特に、私が過去に応援に入った都議候補の方もいて、その方々にはなんとしても当選して活躍してほしいと思っています。
さて田村演説ですが、
- 長い
- あちこち話が飛んでいる
- その要素、必要?
という3つの不満があります。3つともからみ合っています。
要素としてはもちろん活かせるものが多いので、私は
- 「当選・躍進してこれをやらせてほしい」という公約から入る。
- その裏付けとして実績を話す。
- 最後に消費税減税への審判になることも付け加える(軍拡・自主外交はカット)。
という構成にすべきだと思います。
まず公約。それも物価高騰対策としてまとめる
1.の公約については、
- 基本的な演説ではその公約は物価高騰対策にしぼる。
- 街頭では基本的に、物価高騰対策の公約として「賃上げ支援」「家賃補助」を訴える(「3つの提案」の1つ目と3つ目)。「3つの提案」の2つ目=医療機関の補助など基本からは削る。
とすべきです。
候補者演説は「私を都政に送って物価高騰対策をやらせてほしい」という角度から鋭く入るべきです。
医療機関への補助などは大切ですが、多くの人にとっては効果が「遠い」のです。医療機関の前での訴えとか、医療関係者との小集会とかにはいいでしょうけど。*1
家賃補助も、「『稼ぐ東京』から『住み続けられる東京』へ」の一つ——つまり住宅・開発政策として取り上げてしまっているのは、もったいないと思います。まずは家賃補助を物価高騰対策として意識してもらい、せいぜいその話の中で、都政の重点をどこに置くか(大企業のための開発ではなく住宅支援にしろ)という話につなげるべきです。「これをやらせてほしい」という、まあ迫力ですね。
逆に言えば田村演説は、「分野別の話を解説気味に悠長にやっている」印象を受けてしまうのです。
実際、世論調査でも「物価高騰対策」は非常に関心が高いのに、「雇用・賃金」「家賃の高騰対策・住宅政策」として分けられて聞かれると、順位が低くなってしまっています(下図、選挙ドットコムより)。
公約ができる裏付けとして実績を述べる
2.の実績は「実績があるので公約を託せる」という証明材料として使います。
いっぱい言わなくていいです。ここは田村委員長が引用したように、古舘伊知郎さんの話を使うのは大変いいと思います。
それ以外にも、田村さんの訴えがシルバーパスの料金引き下げや学校給食無償化を簡潔なドラマにしているのもいいと思いました。問題はその置き所です。あちこちし過ぎ・行ったり来たりし過ぎているのと、公約実現力の証明材料として使うという構成になっていないことです。
国政課題は物価高騰対策に関連する形で最後に
最後に消費税減税です。
最初からこれをもってくると「都政の話じゃないのか」と思われるので、違和感が出てしまう可能性があります。*2
しかし、「国政の問題だから」と言って避けることはしない(この問題での共産党の考え方は下記に補足として示しましたので、興味のある人はお読みください)。物価高騰対策としてからめながら訴えるべきです。
都議選は参院選の前哨戦とも言われ、ここでの審判は国政にも影響を与えるので、ぜひ消費税減税を訴えている共産党を伸ばしてほしい、という訴えです。
「消費税は国政問題だから言うべきでない」という意見がありますが、それは現実の選挙戦の実態とも違うと思います。
実際、各党の代表や国会議員が都議選の応援に入り、消費税減税について訴えているし、他党の都議候補も消費税減税を訴えています。
…岸田文雄前首相は八王子市で行った(都議選の応援)演説で、消費税減税を求める世論の高まりに背を向け、「減税も1年とか2年とか、食料品に限るとか、さらには財源も明らかにしないなら、政策に打ち出した後、先はどうなるのか全く見えない」とけん制(しんぶん赤旗14日付)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-06-14/2025061403_01_0.html
国民民主党の玉木雄一郎代表は、八丈島で(都議選の)第一声をあげ…「消費税減税」に言及したものの、一律の減税でインボイスの廃止を訴えながら、税率の引き下げ幅や、財源をどうするかについては触れませんでした。(しんぶん赤旗14日付)
このように、都議選であるにもかかわらず、すでに他党・他候補も積極的に国政問題を取り上げており、共産党だけがそこで国政問題への言及を封じてしまうのはあまりに愚かな対応であることはご理解いただけると思います。
上記で紹介している当の日野市では、共産党都議候補(現職)の清水とし子候補は消費税減税を積極的に訴えているようです。
今日の日野駅の宣伝で、「消費税減税はいいけど、年金が削られるのは困る」というご意見をいただきました。
— 清水とし子@日野市🏳️🌈 都議会議員 (@t_shimizu_jcp) 2025年6月14日
消費税の増税とともに法人税が下げられてきたこと、大企業に応分の負担をしてもらうことで十分財源は賄えることをお伝えすると(1/2)#日本共産党 #清水とし子 #都議選2025 #日野市 pic.twitter.com/sBIT76x5S9
ちなみに、上の証紙付きビラは賃上げ・家賃補助・医療(国保税軽減)を分野別にバラバラにせず、「物価高対策」としてまとめ上げていて、私の感触ではすごくいいんじゃないかと思います。
共産党として政策的優位性を示す財源論もあわせて言うのであれば、田村委員長の演説で触れたくらいの簡潔さで伝えればOKだと考えます。演説で細かい財源を詳細に言うべきではありません。細かいことを解説風にやると街頭で「講義」しているみたいになって「上から」感が出てしまいます。*3
田村演説のラストにある、軍拡と自主外交の訴えの尺は基本の演説としてはカットすべきです。共産党都委員会の公約でもほぼ扱ってないですよね*4。もちろん大事な問題ではありますが、有権者の都議選での関心からすれば基本的な演説で取り上げる必要はありません(せいぜい上記の消費税減税の財源論の一つとして「大軍拡の見直し」と、さらりと触れる程度です)。
まあ、実際に、都議選演説の現場では、誰一人訴えていないでしょうけど…。
これくらい要素をしぼって、そしてあちこちに飛ばずにまとめると時間は短くなります。いま田村委員長の話は25分ですが、15分くらいに絞れるんじゃないでしょうか。そうすることで、各候補の演説の雛形として使えるようになると思います。
補足
共産党は伝統的に地方選の論戦で地方政治だけに問題を限定することを批判して取り組むようにしてきました。
1986年に不破哲三委員長(当時)が「二つの傾向に気をつける」として取り上げた問題があります。
一つは、地方選挙だからということで、政策活動、宣伝活動の視野を地方政治の問題だけにかぎってしまうせまさです。
有権者の方は、目のまえに、県議選や市議選があるといっても、地方政治だけに関心を集中させているわけではなく、視野はもっと広いわけで、直面する国政上の諸問題にいつも大きな関心を持ってます。…党の側がその関心にこたえないで、目のまえに地方選挙がせまっているということで、地方政治のことだけを話したり宣伝したりするというのでは、有権者の政治意識にこたえられないことになります。(不破『政策活動入門』p.24)
もう一つは、地方選なのに地方政治を全く取り上げない傾向です。こっちは論外ですね。
いずれにせよ「消費税は国政だから関係ない」とはならないと思います。有権者の意識をよく見てそれは決めていいと考えます(関心がない・低いのであれば取り上げなくてもいい)。
余談
ところで、私がこういう意見を書くとあたかも「田村演説を腐している=共産党を攻撃している」と思う人がごく一部にいらっしゃいますが、あの〜…そうではありません。「こうしたほうがもっとよくなるよ!」という善意の意見です。それは読んでいただければ素直に感じてもらえると思っています。
市民からそういう声が上がったら、「ふんふん、そうですか」ととりあえず受け止めるってのが政党の意見集約機能ってもんじゃないでしょうか(もちろん反論するのもアリです)。私は党から見ればすでに「一般市民」ですし。
しかしあくまで「除籍=反党分子」という色をつけて何がなんでも「共産党攻撃者」だとしか思えなくなったら、たぶん「病膏肓に入る」ってやつだと思います。仄聞するところによりますれば、地方党組織によっては私のいかなる種類のブログ記事やSNSポストをリポストしただけでキツく批判したり呼び出して吊し上げたりするようですが、そんなことしているヒマはありませんよ。
お大事に。
*1:ただし、都議選公約のうち、医療・介護分野の公約で言えば、高すぎる国保料などの引き下げ・軽減であれば要求順位も高く、ここに入れられると思います。
*2:ここは現場の雰囲気次第です。現場が消費税で沸騰しているなら候補者演説などで最初に持ってきてもいいと思いますし、党首や国会議員クラスは冒頭でも違和感はないですよね。
*3:参院選の候補者会議の様子がしんぶん赤旗に出てましたが、財源がうまく話せないという候補者に対して別の候補者がパネルを使った解説を勧めている人がいて、私はそれはあんまりじゃないかと思いました。パネルを使うことはないわけではないですが、財源問題でやるとあまりに解説チックです。
*4:ラストに申し訳程度。