田村氏の「安保活用論」は綱領路線から逸脱してないか?

 産経新聞のインタビューに共産党の田村智子委員長が答えています。

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 このインタビューのうち、36分25秒ごろにこういうやり取りがあります。

  • 産経記者「軍事に裏付けられた(外交)発言力というのが必要じゃないかなと僕は思うんですけど、そういう考え方は共産党としてはとらない?」
  • 田村智子「相手を攻撃するぞっていう軍事力持たなきゃ外交できないなんて言ったらそれは本当に外交力の欠如を物語っているんじゃないでしょうか。あるいは、自衛隊を無くせなんて求めてないですよね。いざ何かやってくるってなったら許されないですよ、それは。だから持ってる力全て使ってっていうのは当たり前のことですし、それは日米安保条約があるもとでアメリカが。っていうことも当然なんですよ。日本を守るために。相手が不法な、国連憲章を無視するようなことをやってくれば。国際法無視するようなことをやってくれば。だけどそれはいざ引き起こしてしまったら犠牲が避けられないってことですから、だからそれを起こさないためには『こっちはこんなにミサイル持ってるぞ』『こっちはこんな軍事演習やってるぞ』っていうのを示せば問題解決するのかっていうと解決しないですよ。外交しかないんですよ。やっぱり」

 

 ここですが、言葉を省略しているために、田村委員長の発言が途中少しわかりにくくなっています。たぶん下記のように言いたかったのではないかと思います。

あるいは、(共産党は今すぐ)自衛隊を無くせなんて求めてないですよね。いざ(相手国が)何か(不法な侵略を)やってくるってなったら許されないですよ、それは。だから(その時日本は自衛隊など)持ってる力全て使って(侵略に対処する)っていうのは当たり前のことですし、それは日米安保条約があるもとでアメリカが(在日米軍を動かしてもらうって要請する)っていうことも当然なんですよ。日本を守るために。相手が不法な、国連憲章を無視するようなことをやってくれば。国際法無視するようなことをやってくれば。

 日米安保条約の発動は共産党として「当然」なのでしょうか。

 日本共産党は急迫不正の主権侵害があれば「自衛隊を活用する」という方針を持っているのは私も知っていました。

Q「共産党自衛隊を廃止するというけれども、もし日本が攻められたらどうするのか」

A「国民の多くが、そういう不安を持っている間は自衛隊はなくしません。万一、日本が攻められたら、自衛隊を含めて対応します」(志位和夫『新・綱領教室』p.67)

万が一、「急迫不正」の侵略をうけたら...
自衛隊もふくめて、あらゆる手段をもちいて命を守ります。国民の生存、基本的人権、国の主権と独立を守るのは、政治の当然の責務だからです。

日本共産党「あなたの『?(はてな)』におこたえしますリーフ」)

https://www.jcp.or.jp/web_jcp/2022gimon-text.html

 しかし、日米安保条約の発動まで求める・容認する、というのは初めて聞きました

 「そんなことはない。2015年に安保法制廃止の国民連合政府構想を打ち出した時に、安保条約第5条を発動することを発言しているはずだ」とおっしゃる人がいるかもしれません。

 しかし、それは、共産党が連合政権を組んだ場合のことです。

 安保条約廃棄が合意になっていない状態で政権を組んだとしたら、安保条約はどうするんだ、使うことに反対するのか、と聞かれて、その時は連合政権として安保条約第5条の発動を認めると志位委員長(当時)が明言したのです。

 けれども、それは連合政権としての態度です。

 言い方はアレですが、わかりやすく言えば、「安保条約を使うことは党としては認めないが、安保条約には手をつけない政権に入った場合は政権としては安保条約を動かすのは党としては嫌だしダメだけど、仕方がない」という意味であり、逆に言えば「自公政権共産党が入らない政権では安保条約の発動・活用は認めない」というのが共産党の立場のはずです。

 共産党として「急迫不正の主権侵害に対して安保条約を活用する(発動する)」などということはどこでも定めていないはずです

 私は、田村委員長のこの発言は綱領路線から逸脱しているんじゃないか? と疑問を感じました。

 これは自衛隊という武力一般が存在するという問題と、対米従属の要である安保条約の問題を全く同じ平面で語ってしまっているという綱領路線への無理解が背景にあるのではないかと思います。いわば「非武装中立」的な立場から、平板な「反軍事」の立場に落ち込んでしまい、安保も自衛隊も並列的に見えているのではないでしょうか。

 なので、私はこの動画でのこの田村発言は問題があると思っています。

 私が言いたいことは以上です。

 

 断言はできないので、「それは違うよ」という意見があれば、コメント欄などで教えてください。

 

余談:「自衛隊活用論は共産党が参加した政権ができた時の話だ」について

 以下は余談です。読みたくない人は飛ばしてください。

 このような私の意見に対してもし反論があるとすれば、「自衛隊の活用も共産党が入る政権ができた時の話であって、そうであるなら当然安保活用論は主張してもいいはずだ」というものでしょう。

 実際そのように思わせてしまう党幹部の発言はあります。

 志位和夫氏は2022年にこう言っています

第三に、この問題で述べておきたいのは、幹部会報告では、万が一、急迫不正の主権侵害が起こった時には、「自衛隊を含めてあらゆる手段を行使」、「自衛隊を活用する」と言っていますが、ここでいう「行使」する主体、「活用」する主体はいったい誰かということについてです。これは言うまでもなく、わが党も参加する民主的政権の対応として言っているわけです。そのことは、「行使」「活用」という表記で明瞭です。自衛隊を活用する――実力組織を活用するというのは、政府でないとできません。民主的政権というのは、緊急の課題での野党連合政権、そして民主連合政府などの全体を含むものです。

 そして、自民・公明政権下ではどうかといえば、

 自公政権、かりに安保法制を発動して、日本が攻撃されていないのに、集団的自衛権を行使して、米軍と自衛隊が一緒になって、「敵基地攻撃」に乗り出して、その結果、戦火が日本に及んできた。そういうケースは急迫不正の主権侵害とは言いません。わが党は、安保法制の発動に断固反対ですし、安保法制廃止を強く訴えています。こうしたケースは、わが党が述べている「自衛隊活用」論とはまったく別の話です。災害救助で汗を流している自衛隊員を「殺し、殺される」海外の戦場に投入するなど絶対に反対を貫くというのが、日本共産党の立場であることは、いうまでもありません。

 実は、こういうケースについては、第22回党大会の中央委員会報告で解明しています。「周辺事態法」を、自民党政府が発動して、自衛隊が海外での米軍の軍事活動に参戦して、結果として、戦火が日本に及ぶようになった場合に、これは急迫不正の主権侵害とは言えないと言って、次のように、大会決定は述べています。

としています。

 自公政権下でアメリカなどの介入戦争に参加してそれで日本に戦火が飛び火したのは「急迫不正の主権侵害」とは言えない——これ自体は理解できます。自公政権のもとではとんでもないケースが多そうだから、簡単に自衛隊活用なんか認められるかよ、というわけです。

 しかし、そうではなく、自公政権のもとでも純粋に急迫不正の主権侵害があったらどうするのか。「そんなことは絶対にない」と言って否定するのか、それともその場合はやはり自衛隊の活用をするのか、という問題になります。

 これについて志位氏は答えていませんが、当然後者でしょう。

 したがって共産党が参加しない政権のもとで急迫不正の主権侵害が起きたケースに、党として自衛隊の活用を提言することがありうるのです。

 そんなことはない。絶対に使わないのだ。

 …というのであれば、この田村インタビュー自体が綱領路線違反だということになってしまいます。産経記者は共産党参加政権での話に限定して聞いたわけではないのですから。また、上記に引用した、国民に広く配布した「はてなリーフ」(2022年)もウソを言ったことになってしまいます。

 だいたい、災害での自衛隊派遣などは、自公政権下でも日本共産党は当然のように求めています。どんなことがあっても自公政権下では自衛隊は絶対に活用しない、というのはおかしな理屈だと思います。