私の被選挙権剥奪について党幹部はなぜ説明の訂正に追い込まれたのか

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方はこちらを先にお読みください。)

 

 9月19日付の記事の終わりで私は、

 もう一つ、裁判上はあまり重要な論点ではないのですが、今回の被告準備書面で、実は党内民主主義にかかわって非常に重要な事実が確認されました。

 「県党会議での私の被選挙権剥奪の理由」を、被告(党幹部)は「不正確」だったと言って、訂正したのです。

 この問題は、別の記事で詳しく述べます。

と予告していました。

 そのことについて少し述べておきます。

 

党内選挙に立候補する権利を制限されていたが、その制限が終わった

 2024年2月の福岡県党会議(福岡県の共産党の県大会のようなもの)で、私は評議員(議決権のない代議員)として出席していました。

 私は規約違反容疑で規約上の「調査」を受けていて、党幹部たちによって「権利制限」を受けていました。「権利制限」というのは、規約上に定めがあって、調査に必要な範囲で党員としての権利を制限をかけられるというものです。その中には、党内での選挙権と被選挙権が含まれていました。

 つまり、私は規約違反容疑で「調査」されているために党内での全ての選挙で選挙したりされたりできなかったのです。

 しかし、この「調査のための権利制限」は最大でも6ヶ月であると規約で定められており、すでにこの県党会議の時はこの制限がギリギリいっぱい(前年12月で終了)まで使われてしまい、すでに党幹部は私を権利制限できなくなっていました。規約で想定していないほど長い期間、「調査」を不当に受けていたのです。(そして規約違反の証拠は何も出てきませんでした。)

 

県党会議で役員選に立候補した

 2月の県党会議では、次の期の総合計画を策定し、その総合計画を実践する新しい県役員(県委員・准県委員)を選出することになっており、役員選挙が行われました。 

 細かい事情は省きますが、私は次期役員に立候補しました。

 

立候補資格を剥奪された

 ところが、県党会議の議事が進んで、選挙前に、役員選考委員会が開催されました。「役員選考委員会」というのは後で取り上げますが、その会議の中で選出された専門の小委員会です。慣習的に設けられてきましたが、規約上にも定めはありません。

 そして、なんと、その役員選考委員会によって、私の次期役員に立候補する権利(被選挙権)が剥奪されてしまったのです。正確には、「役員選考委員会の報告が会議会場の拍手で承認されてしまった」ということですが、私が選挙そのものから排除され、選挙に参加できなかったという事実は変わりありません。

 私は会場で「議事進行(に関する発言です)!」と叫んで被選挙権を剥奪する理由について尋ねました。役員選考委員会の委員長(県書記長)は私が総合計画などを推進する「責任と気概がない」からだと答弁しました。

 これは党規約第5条で挙げられた党員の権利=「(三)党内で選挙し、選挙される権利がある」をあからさまにふみにじるものです。



裁判の訴状で告発した

 私は自分の裁判の訴状(24.11.12)の中で、自分が除籍・解雇に至る経過においてこのような目に遭わされたことを書きました。

 令和6年(2024年)2月25日、県党会議が開催され、原告は、同会議において、次期の県委員に推薦されなかった。
 原告は、同会議において、代議員から他薦されたが、県党会議の一機構である「役員選考委員会」により、原告は「責任と気概がない」として立候補資格を剥奪されたことから、県委員ではなくなり、いち勤務員(職員)となった。

 

被告の「反論」

 これに対して、被告側は準備書面(1)で次のように「反論」しました(25.3.31)。

役員選挙において、代議員の1人が原告を次期県役員に推薦(他薦)したが、役員選考委員会は、原告が調査中であるため「県役員の選出基準」に合致せず「不適格」を確認し、役員候補者名簿には登載しなかった。

 「調査中であるため『県役員の選出基準』に合致せず」というのは明らかに事実と違います。

 

原告の再反論

 これに対し、私(原告)は、原告第2準備書面(25.5.26)で次のように再反論しました。

 すでに権利制限が解かれている期間であるにもかかわらず、被告らは、規約5条(三)「党内で選挙し、選挙される権利がある」を公然と否定しており、不合理である。
 また、「調査中」であること自体は、「選出基準」には記載がない(なお、「規律違反で調査審議のため権利制限中の党員は不適格者として除きます」という記載はあるが、前述の通り権利制限は解除されている)
 さらに、会場で役員選考委員会が実際に答弁した理由(「被推薦人(注:原告)は総合計画に反対しており、計画を『実践する気概と責任』がない」と述べた)とも異なっている。

 

被告側が被選挙権剥奪の理由を「訂正」

 反論不能に陥った被告側は、私の被選挙権剥奪の理由を、被告準備書面(2)で「訂正」せざるを得なくなりました(25.9.11)。

被告ら準備書面(1)の22頁17〜19行目の「原告が調査中であるため『県役員の選出基準』に合致せず『不適格』を確認し、役員候補者名簿には登載しなかった」との記載部分は、不正確であり、前述したとおり、「原告は、第67回県党会議に向けて討議された県委員会報告や総合計画案に対し、『三役が出すものにはすべて根本的に疑義がある』と反対したことから、『綱領と第29回党大会決定、第67回県党会議決定の実践と指導に責任と気概をもつ同志たちによって構成する』という要件に合致しないものとして候補者名簿に登載しなかった」というのが正確である。

 

 この経過が示すものは、党幹部がひとの(被)選挙権を奪うという非常に重大な判断をするにもかかわらず、その重大さにいかに無頓着か、ということです。もし本当にそれを重大なものだと思っているなら、その剥奪理由をほとんど無から創出するかのような間違え方をするものでしょうか。

 

規約では民主集中制の根幹をなす「選挙」

 そもそも一般に民主主義において選挙は根本とも言えるほど重要なものです。

選挙権は、「国民主権」原理のもとにおける国民の政治参加の権利としてきわめて重要なものであり、憲法上の基本的権利として位置づけられるべきものである。(浦部法穂憲法学教室 全訂第2版』日本評論社、p.506)

 ロシアや香港で権力者が政治的敵対者の立候補の権利を剥奪することが、まさに政治的抑圧として行われていることを見れば、それは一目瞭然です。

www.asahi.com

www.bbc.com

 そして民主主義一般だけでなく、日本共産党において「選挙」民主集中制の原則・基本として規約第3条で位置付けられています。

第三条 党は、党員の自発的な意思によって結ばれた自由な結社であり、民主集中制を組織の原則とする。その基本は、つぎのとおりである。

(一) 党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める。
(二) 決定されたことは、みんなでその実行にあたる。行動の統一は、国民にたいする公党としての責任である。
(三) すべての指導機関は、選挙によってつくられる。
(四) 党内に派閥・分派はつくらない。
(五) 意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない。

 そして、それを保障するのが党員の権利を定めた規約5条のうち、(三)にある党内での選挙権・被選挙権です。

第五条 党員の権利と義務は、つぎのとおりである。

(一) 市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす。
(二) 党の統一と団結に努力し、党に敵対する行為はおこなわない。
(三) 党内で選挙し、選挙される権利がある。

 党幹部が私の被選挙権を剥奪したことは、規約第5条に違反し、規約第3条に定めた民主集中制の原則を破壊するものです。

 以上が基本点です。

 その上で、党幹部が私の被選挙権剥奪で見せた信じられない民主主義的感覚についても以下に紹介します。

「議案への反対」を表明したから被選挙権を奪えると思っている感覚

 私は、県党会議の場で、県三役(正副委員長・書記長)が起案した議案への反対を表明しました。なぜなら、三役はハラスメントという暴力を私に系統的に加えてきたからであり、そのようなことをする人たちが作成(起案・起草)した議案を到底認めるわけにはいかないからです。例えばレイプをした人間が書いた「ジェンダー平等推進」の議案を、そこにどんな立派なことが書いてあっても、あなたは認める気になれるでしょうか?

 もちろん、そうした議案が可決される場合もあります。そうしたら、その議案は決定となるわけですから、その決定を推進するというのは、民主集中制のもとでは当然のことであり、私もそうするつもりでいました。

 しかし、役員選考委員会は、私が議案に反対表明したことを理由にして、被選挙権を剥奪したのです。

 これは、規約第3条が禁じている民主集中制の原則「意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない」にまさに抵触する行為です。「議案に反対」という意見を表明したことを理由に、指導機関を選ぶ選挙から組織的に排除しているわけですから。

 「ハラスメントを理由に議案に反対している人」が指導機関の役員に相応しいかどうかは、役員選考委員会が判断してはいけません。当たり前のことです。

 それを判断するのは選挙人であり、まさに選挙によってしか決まりません。

 民主主義の一般常識から言ってもそうですし、党規約第13条「選挙人は、候補者の品性、能力、経歴について審査する」から言ってもそうです。「審査する」のは役員選考委員会ではなく、「選挙人」です。

 こんな当たり前のことを、私がくどくど書かなければならないのはどうかしていると思いますが、党幹部は当然のようにその権利を奪ったのです。民主主義的な感覚を疑わざるを得ないのではないでしょうか。

 

役員選考委員会には私と競合する被選挙人(役員候補者)が入っている

 しかも役員選考委員会には、もし私が県役員選挙に立候補したら、私と競争することになる役員候補がメンバーとして入っていました。報告をした書記長は、その一人です。私と役員の座をめぐって選挙戦を争う相手でした。

 そのメンバーが対立相手の立候補資格を剥奪したのです。

 参院選で、自民党の候補者が選挙管理委員会に入って、共産党候補の立候補資格を奪ったら、共産党は大騒ぎするんじゃないでしょうか? もちろん私だって大騒ぎします。

 党幹部は「党首公選をやると選挙になって派閥争いになる」などと言いますが、自分たちがやっていることは、自分たちの敵対者の被選挙権を非合法に剥奪するという究極の「派閥抗争」ともいうべきやり方でした。

 

役員選考委員会は何をするところか

 そもそも役員選考委員会とは何をするところでしょうか。

 「役員選考委員会」は一般的に、PTAや自治会などに置かれています。

 次の役員に相応しい人を探し出してくる役目を持っていることが少なくありません。面接をして人柄や経歴などを審査して「これは」という人を推薦します。

 その意味では、一般的に「役員選考委員会」は「品定め」をする役割を果たします。

 しかし、そうやって「役員選考委員会」が「品定め」した名簿リストは、通常、そのまま決定されません。当たり前です。そんなことをしたらボス政治です。

 総会などで推薦人リストは選挙のプロセスをへて、役員としての正式決定となります。丁寧な組織なら、「役員選考委員会」で推薦されたリストを、執行部が承認して、執行部が総会に提案する形を取るでしょう。そしてやはり選挙をします。

 では、そのような推薦以外の形で立候補したい人はどうなるでしょうか。

 立候補する権利が認められており、推薦リストのメンバーと選挙で競うのが普通です。

 これが「役員選考委員会」の一般的な役割です。あくまで選挙にかけるための推薦リスト作りがその仕事です。選挙をしきり、会員の選挙への立候補資格を奪うことなどできるはずがありません。





共産党の大会や県党会議で役員選考委員会は必要か?

 ところで、共産党の役員選挙にあたって、県党会議の場に役員選考委員会は必要でしょうか?

 私は大会や会議の機構としては、必要ないと思います。

 県党会議の場合、推薦リストは県党会議よりずっと前の日の、指導機関の役員会議(県委員会総会)ですでに決定されています。党規約第13条で「指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する」と定めている通りです。普通の考えでいけば役員選考委員会が探してきた推薦リスト案について指導機関が責任をもって吟味して「うん、これでよろしい」と決めて正式な推薦リストになるわけで、この時点で、つまり大会や県党会議が開かれている時点では、役員選考委員会はもう用済みです

 しかし共産党では、実はこの推薦リスト以外に、大会や県党会議の場で立候補(自薦・他薦)した人についても、なんと役員選考委員会が「品定め」をするのです。

 「選出基準と構成について」という役員を決める基準・考え方を大会や県党会議の場で決定しており(だいたい拍手承認)その基準に相応しいかどうかを、選挙人ではなく、役員選考委員会が調べて、相応しくない人をハジきます。あらかじめ選挙から排除するのです

 もちろん、規約で役員になれる人は例えば「二年以上の党歴が必要」(13条)などといった外形的に瞬時に判断できる資格が決まっており、欠格者でないかどうかは審査が必要です。しかしそれは選挙管理委員会の役目であって、役員選考委員会の役目ではありません。

 ところが、県党会議での役員選考委員会は、見てきたように「大会決定の実践と指導に責任と気概をもつ」かどうかなどというまさに、抽象的な中身そのものを審査するというのです。

 そもそも選出基準などは、選挙人が自由に考えるべきことであって、「大きなお世話」と言えますが、仮にそのような「基準」があったとしても、それに合致するかどうかは、選挙人が選挙によって判断すべきことです。

 このような非常識を平気で実行できるのが党幹部の感覚なのです。

 「意見の違うもの=異論を持つものは選挙から排除する」ということを堂々とやっているのが今の党幹部のもとでの「党内選挙」の実態です。これでは、党幹部が党を私物化していると批判されても仕方がないのではないでしょうか。

「糸島富士」が見えます

他でも起きている

 実は、私の裁判の支援集会で、全く同じ形で被選挙権を剥奪されたと発言された方がいました。こうした非民主的なやり方は党内のあちこちで起きている可能性があります。

 「共産党は選挙で指導部を選んでいる」と言いますが、実際には気に入らない候補から被選挙権を剥奪してその選挙が成り立っているとしたら、そんな政党に未来を託そうという気になるでしょうか。

 こうした事実が隠されたまま、党幹部が外で「きれいごと」を述べているのには、本当に暗澹たる気持ちになります。