高市政権にどう対峙するか:2つの方向

 高市自維連立政権が発足しました。

 最初の支持率も高いし、株価も大きく上がって*1、それなりに期待感があるのだとわかります。

 この政権にどう対峙していけばいいのかを考えます。

 二つあります。

 

(1)具体的なたたかいの共同を広げる

 一つは、具体的に高市政権が出している(自維合意の)危険な政策に反対する共同を広げていくことだと思っています。

 これは今「しんぶん赤旗」でその具体的な動きがいろいろ報じられています。*2

  1. 医療費4兆円削減、労働時間の規制緩和
  2. 定数削減、裏金議員の復権
  3. 大軍拡の前倒し、スパイ防止法

 これまで接触のなかった人たちとの共同を広げて新しい政治の波をつくりだしていくうえでは不可欠かつ最も現実的なやり方だと思います。 *3

www.jcp.or.jp

www.jcp.or.jp

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 もちろん、こうした「危険な動きに反対する」系の動きだけではなく、物価高騰対策として消費税減税を求めるなどの積極的な要求実現とあわせてのことになります。

 いずれにせよ、共産党やその支部がこの動きを広げていることは大事な方向だと思っていますし、私も微力ながら共同したいと考えています。

 もっとも、例えば医療費4兆円削減とか労働時間の規制緩和なんて、医療関係者や過労死遺族から見れば自分の身体を切り刻まれとうとしているほどのひどい攻撃であって、高市政権を戦略・戦術的にどう攻めるかなんていう話とは次元の違う、やむにやまれず声をあげる・立ち上がるという話だと思いますが。

 

(2)現実的な条件のある政権構想を示す

 もう一つが、現実的な条件のある政権構想を示すことだと思います。

 高市政権に対する厳しい追及をすることは、野党の健全な任務だとは思いますが、やはり「じゃあそれにかわって何を求めるのか」という旗、しかも国民自身と社会発展が強く求める旗が必要になるのではないでしょうか。

 もちろん、共産党としては綱領にある安保条約廃棄の「民主連合政府」をめざしており、その実現によって本当に自民党政治を終わらせることができるわけですが、今すぐ作れる条件は現実の国会にはありません。同盟者もいません。

 同時に共産党綱領では

さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線…の政府

をうたっています。

 これを活用して、今野党がまとまれる旗を示して、それが「現在の反動支配を打破してゆくのに役立つ」「民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致」(党綱領)できるものであれば、そこを当面の政権目標にするようにもっと柔軟に考えるべきでしょう。

 

 高市政権成立前に、私は暫定連合政権構想を述べました。消費税減税、企業・団体献金禁止、日米地位協定改定で一致した限定的な政府(そして安保条約などそれ以外の不一致点は政権に持ち込まない)を作るべきではないかというものです。

 この暫定政権の方向を、引き続き「現在の反動支配を打破してゆくのに役立つ」「民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致」できる中身として掲げるべきだと私は考えます。

 この話は、高市政権の発足で終わりになるかと思った人もいるかもしれませんが、依然として少数与党が続いている現状では、新政権成立後も有効な枠組みだと考えました。

 

 これは公明党を除く、野党の一致点です。

 では新たに野党になった公明党はどうか。

 それこそ、相手が今保持している政策を尊重しつつも、呼びかけて協議をしていくべきものだと思います。

 公明党はもともと消費税減税を政権公約に入れ込もうとしていました。

www.nikkei.com

 また企業・団体献金禁止も元々の公明党の主張でした。自民党との連立が解消された以上、ここに戻ることを求めることはそれほど無理なことではないのではないように思われます。

2012年の公明党マニフェストより。

https://www.komei.or.jp/policy/various_policies/pdf/manifesto2012.pdf

 日米地位協定の改定は、公明党が与党である都道府県知事なども「渉外知事会」で要求しており、これも十分一致が可能です。

https://www.pref.kanagawa.jp/documents/30417/r7tokubetsu.pdf

 

 要は、共産党としてこうした一致をつくるためにイニシアチブを発揮するし、柔軟な対応を政党に対しても行うべきだということです。

遠出先にて。すっかり秋の空です。

なぜ暫定政権なのに一致点のない安保法制廃止にこだわるのか

 「安保法制の廃止がないとダメだ」と共産党幹部は繰り返しています。

 私も安保法制の即時廃止が必要だと思っています。

 しかし、そもそも日本にとって危険である安保条約の即時廃棄こそ綱領がめざす本格政権として絶対に譲れないもののはずではなかったのでしょうか。

 共産党はそのような危険な条約を棚上げして、「さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線…の政府」として安保法制廃止の政府を呼びかけたはずです。しかし今、安保法制廃止は野党の中で「さしあたって一致できる目標」ではなくなりました。

 そういう局面で、安保条約廃止の政府にこだらわずに、なぜ安保条約を容認した上で安保法制廃止の政府をつくることにこだわるのでしょうか。これは綱領の考え方を捻じ曲げてしまうものだと言わねばなりません。

 

 消費税減税、企業・団体献金禁止は大企業・財界の支配に大きな風穴を開けますし、そもそも後者は綱領が掲げる民主的改革の一部です。また、日米地位協定改定は、戦後一度も例がなく、実現すれば対米従属を抜け出す第一歩になります。

 まさに綱領がいう「現在の反動支配を打破してゆくのに役立つ」「民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致」(党綱領)できるものです。

 そして、この3つ、特に前の二つは世論調査でも国民が強く求めているものであり、高市政権と対比して現実的にとりうる魅力を押し出すためにも重要だと思います。

 「消費税減税の政府をつくりましょう」

 「企業・団体献金禁止の政府を作りましょう」

 「高市政権ではできません」

と呼びかけなければ、魅力ある高市政権の対峙姿勢として国民に映らない、「反対しているだけ」に映りかねない、ということです。

 

暫定政権の考えの国民的経験を積んでもらう

 前にも書きましたが、多党化時代に入り、「暫定的に政権を組む」ということにもっと国民が経験を積んでもらった方がいいと思います。

 一人、あるいは一党一派のビジョンで政治が安定運営されるというのは妄想です。

 政治は合成力です。

 エンゲルスはまさに『フォイエルバッハ論』で言っているではありませんか。

人間は、それぞれ個々の人びとが彼自身の意識的に意欲された目的を追いながら、歴史の生み出す結果がどうあろうとも、自分自身の歴史をつくるものであり、種々の方向にはたらく多くの意志と外界にたいするこれらの意志のさまざまな働きかけとの合成力が、まさに歴史なのである。(新日本p.80)

 その合成力が、大きくは歴史の進歩の方向に向かうし、向かうように共産党はイニシアチブを発揮すべきでしょう。*4

 

 不十分ながらも「よりましな」政治・政権が積み重なっていくことで、現実的な政治の歩みをつくることができるのではないでしょうか。

 共産党は綱領にある「暫定連合政権」構想の足がかりとなる規定を、今のような時代にもっと柔軟に使うことを学ぶべきでしょう。

 

「反動ブロック」という規定の雑さ

 この点で「反動ブロック」規定は、あまりにも「雑」です。

 最初から「反動ブロック」を構成する「反動的」党派名をキメ打ちして、便利にその規定を使おうとし過ぎています。そのために、消費税減税で本気の共同をつくったり、定数削減で国会内で共同を広げていく上で、この規定をまともに正面から持ち出すことはできないでいます(党内・民主団体向けでしかない)。

 そもそも公明党が連立を離脱し、国民民主党や参政党が野党のままでいるという新しい状態に対して、この規定自身は有効な仕事ができず、党幹部はこっそりと規定とは別の「国民的・民主的共同」を言い出し、公明党を外した「反動的ブロック」という言葉を使ったりしています。

 「反動ブロック形成に反対する新しい国民的・民主的共同」という規定は、いくらその言葉を「赤旗」紙面に頻繁におどらせても、中身自体は元の意味から変わり果てたものになってしまい、新しい事態に対応できない規定になってしまっていると思います。

 まあ、実際には「高市自維政権の悪政に反対する共同」くらいの意味になってしまっているので、その意味合いには全然文句を言うつもりはありません。「中央決定は社会科学の規定」とまで胸を張るなら、カテゴリーが大揺れしているようなものはその名に値しない、というだけの話です。

 

余談:「戦後最悪の政権」

 ところで、高市政権について「戦後最悪の政権になる危険」と共産党は述べています。

www.jcp.or.jp

 ちなみに、その前に共産党が「戦後最悪の政権」だと述べていたのはどの政権だったかご存知でしょうか。

 実は岸田政権です。

 中央委員会総会で規定しています。

www.jcp.or.jp

岸田政権が、当初かかげた、「聞く力」「新しい資本主義」などの看板は、すっかり剥げ落ちました。自らの「保身と延命」のためには何でもやる。これが岸田首相の行動原理であります。安倍元首相にこびを売って「国葬」を強行し、米国にこびを売って大軍拡の方針を決め、財界にこびを売って原発回帰へと大転換する。戦後最悪の亡国の政権に、日本の政治のかじ取りをまかせるわけにはいきません。

 

 「言葉のあや」でそう言っているのかなと思うかもしれませんが、志位和夫氏や党幹部は繰り返し使っています。本気だったわけです。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-01-19/2023011901_02_0.html

 軍拡が戦後最悪であったことを根拠にしており、今日はあまり詳しく掘り下げませんが、もう少し規定(カテゴリー)の正確性というものを考えた方がいい気がします。

 

*1:すぐ下がって「高市早苗政権が21日に発足し、市場関係者は「期待で買う局面は終わり、投資家の目線は政策の中身や実効性に移った」(銀行系証券)と話します」(しんぶん赤旗24日付)。

*2:どれも相当危険な動きですが、運動の広がりや国民意識レベルは1.と2.と3.では全然違うので、注意が必要です。ごちゃ混ぜにせず、扱いをていねいにやっていくべきです。

*3:そしてそれこそが人民的議会主義であり、共産党綱領では「日本共産党と統一戦線の勢力が、積極的に国会の議席を占め、国会外の運動と結びついてたたかうことは、国民の要求の実現にとっても、また変革の事業の前進にとっても、重要である」として定式化されているところです。地方議会で少ない議席でもそれなりの力を発揮できるのは、この観点があるからだと思っています。

*4:「労働者階級がみんな『資本論』を読んで正しい社会変革を行う」というイメージがもしあるとすれば、それはナイーブな「信仰」であり、そのように社会が変わることはあり得ません。