「東アジアサミットの活用」という公約でいいのか?

 以下の記事は総選挙中に書いたのですが、あまりアップする気になれませんでした。選挙が終わった今、やっぱり出してみようと思って出します。

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 日本共産党は、自民党政権の戦争国家づくりに対して平和外交を訴えています。そのカナメの一つが東アジアサミットの活用です。

いま日本がやるべきは、軍事的対応の強化ではなく、ASEAN諸国と手を携え、「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)の実現を共通の目標にすえ、すでにつくられている東アジアサミットを活用・発展させて、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法9条を生かした外交である。

 共産党の予定候補や地方議員が街頭や集会の演説でもよく訴えていらっしゃいます。それほど共産党の政策にとっては、重要な会議です。

 自分たちと価値観を共有する国だけを集める「ブロック政治」ではなく、すべてのメンバーをテーブルにつかせる「包摂的外交」を呼びかけたものです。10月25日付の毎日新聞に載った岩間陽子・政策研究大学院大学教授の“アジア版NATOよりアジア版OSCEを”という呼びかけはこの観点ではないでしょうか。

 

 志位議長はヨーロッパでの安全保障への提起としてこのOSCEの再活性化を呼びかけています

ウクライナ侵略を終わらせ、欧州の平和と安定を回復するうえで、きわめて困難であってもOSCEの再活性化が重要になってくるのではないかと考えるものです。

 共産党の提案は、この「アジア版OSCE」を、「今ある枠組みの能力」(岩間)として「東アジアサミット」を舞台にして行おうというふうに読めます。

 

 ところで、この東アジアサミットが2024年10月11日に開かれ、13日に議長声明が出ていたことをみなさん(特に共産党員や、共産党の予定候補や地方議員の方々)、ご存知だったでしょうか?

 知らない…という共産党員や共産党の地方議員、予定候補の方々はけっこういらっしゃいます(最近ある地方の共産党の国政候補者に聞いた話ですが、被団協のノーベル平和賞受賞さえ知らない方が共産党集会への参加者でも少なからずいらっしゃったそうです)。

 「しんぶん赤旗」でも報道しています(下写真:13日付=右と14日付=左)。

 ただ、あれほど政策においては重要視している会議なのに、赤旗での報道は非常に扱いが小さいのではないかと私は常々思っています。党から不当解雇される前のことですが、私が知っている共産党の地方議員の方で、東アジアサミットの実際の中身に関心を持っていらした方はほとんどいませんでした。

 まず、扱いがだいたいは国際面で小さいことがほとんどです。1面・2面にくることはなかなかありません。

 中身も客観報道が多い。党としてどこが問題だったのか、どうすべきだったのかを評論したものはほとんどありません。

 

 東アジアサミットは、そもそも自民党政府が参加しており、石破首相自身も今回積極的に訴えを行なっています。

www3.nhk.or.jp

 

 議長声明ではASEANの平和構想であるAOIPの支持強化を打ち出しています。これは先ほど紹介したように、日本共産党自身が高く評価している構想です。

 そして、自民党政府も、共産党の国会での度重なる質問において、だいたい「AOIP支持」を答弁しています。

山添拓 二〇一九年のASEAN首脳会議で採択されたASEANインド太平洋構想、AOIPは、東南アジア友好協力条約を指針に、東アジア規模での友好協力条約を展望する構想です。現に、ASEAN十か国に加えて日本や米国、中国など八か国が参加する東アジア・サミット、EASが存在します。これを活用し発展させる外交ビジョンを持ち進むことにこそ東アジアの平和への展望があると考えます。答弁を求めます。

岸田文雄  東南アジア首脳会議、EASと東アジアの平和についてお尋ねがありました。
 東アジア首脳会議は、米中も含む各国首脳の間で地域共通の課題について率直な対話を行うことができる重要なフォーラムです。同時に、我が国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPと本質的な原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを一貫して強く支持をしております。
 ASEANを含む関係国と緊密に連携しつつFOIPを推進していくとともに、AOIPに示されているような地域の平和と繁栄に積極的に貢献していく考えであります。

(2023年3月27日参院本会議)

 

 そうなると、当の自民党政府自身がAOIPを「支持」し、東アジアサミット(EAS)を「活用」しているわけで、共産党が主張する「AOIP支持」「EAS活用」は自民党政府自体がすでにやっていることになってしまいます。「軍事的対応の強化一辺倒」(共産党の提言より)という自民党政府に対する批判が成り立たなくなってしまうのではないでしょうか。

 

 「いや、大軍拡をやっているからAOIPやEASを裏切っているのだ!」「自民党政権はAOIP推進と言いながら、ブロック政治であるFOIPを推進しているのは矛盾だ!」というのであれば、大軍拡やブロック政治を止めることが政策であればよくて、わざわざAOIP支持やEAS活用を共産党の政策にする必要はありません。

 

 そうではないはずです。

 本来、東アジアサミットではどのような訴えが必要なのか。その角度から見て、今回のサミットは成功だったのか、失敗だったのか、を評価すべきではないでしょうか。そうでなければ「東アジアサミットを活用すべきだ!」と言っても「え…あ、はい…活用してますけども…」みたいな反応をされてしまいます(実際国会答弁はこんな感じになってしまっています)。

 

 東アジアサミットの「活用」だけでは正直、公約にならないと思います

 少なくともこの方向を提起すべきだ、という内容を掲げ、その基準で現在の政府の外交を批判・評価すべきではないでしょうか。

 もちろん、日本共産党アジア政党国際会議で提起し、最終的に宣言に「ブロック政治を回避し、競争よりも協力を強調する」という話は知っているし、それを入れ込むことが予定されているというかもしれません。

 あるいは「日中両国関係の前向きの打開のために」で提言した3つの柱を提案すべきだということかもしれません。

 しかし、東アジアサミットをそこまで重視しているなら、一回一回の会議で何を提起するかを丁寧に打ち出したり、申し入れたりして、その申し入れとの関わりで会議がどうだったのかを評価する必要があるのではないでしょうか