この裁判の意義:私が記者会見・報告集会で述べたこと

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方は24年8月20日付の記事を先にお読みください。)

 

 私が24年11月12日に司法記者クラブおよびその後の報告集会で述べたことを、若干加筆・修正をして以下に紹介します。

 

この記事のまとめ

  1. この裁判の意義(1)——私にとっての意義
  2. この裁判の意義(2)——共産党・日本社会にとっての意義
  3. 共産党職員が労働者であることはすでに前提になった
  4. 声をあげられない多くの人の声を代弁する裁判

 

1.この裁判の意義(1)——私にとっての意義

 この裁判には二つの意義があると私は考えています。

 第一は、私個人にとっての意義です。二つあります。生活と尊厳です。

 生活ということについていえば、職を失って生活の糧を奪われました。月27万円の給料とボーナス2ヶ月がなくなりました。

 

 尊厳という点で言えば、党員としての誇りを奪われました。

 私は党に入って36年まじめに活動し、永年党員としても表彰されました。そして議員団の事務局としての仕事もまじめにやってきました。

 共産党といえば赤旗の裏金スクープのように政治の間違いを正すというのがイメージです。だから当局や相手側の資料を徹底的に調べる必要があります。私も議員団事務局としてそういう仕事を地道にやってきました。

 例えば「今の市長のもとで市内の大企業だけ栄えて、市民が貧しくなっているというデータがないかな」。

 あるいは「市長が目玉イベントとしてやっている世界水泳大会の経済効果はごまかしがあるかどうか暴いてくれ」。

 そういうオファーが議員からあります。実感としてはあるけど、厳密な論証やデータがない。それを調査し、研究しないといけません。それをやるわけです。市民経済計算とか産業連関表などを読み解いて重大な問題が浮かび上がってくるわけですね。そういう仕事をしていました。もちろん議会質問はチームです。しかし、その一番大事なところを担ってきた一人だという自負がありました。

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

www.jcp-fukuoka.jp

 それ以外にも、議員や県委員会が出すチラシをたくさん作りました。それこそ全国各地の応援に行って、たくさんビラを作りました。版下で年間100種類、30年近く働いたので3000種類は作ったと思います。*1取材から、執筆、そしてDTP作業をして入稿まで全て自分で行います。1日で30種類を作れという狂気じみた党指導部の注文に応えたりとか、候補者の実績や前半生を私がマンガとして描き、そのままビラにしたことさえありました。こうしたものが現場の党員の皆さんによって全世帯に配布されてきました。私自身も配りました。

 そういう仕事の誇りは全て奪われました。

 除籍と解雇を撤回させるというのは、何より、そういう私自身の生活と誇りを取り戻す切実な闘いです。

東京地裁の司法記者クラブでの会見(11月12日)



2.この裁判の意義(2)——共産党・日本社会にとっての意義

 私個人だけでなく、これは共産党が抱えている問題そのものだし、多くの共産党員が苦しんでいる問題でもあります。それが除籍とパワハラです。

 除籍という点では、除籍が濫用されていて幹部が気に入らない党員を排除する道具になっているということです。

 除名と除籍はどちらも党から追放するという点では同じですが、除名は処分、いわば懲罰です。しかし除籍は名簿リストから消すことであり、ニュートラルな措置です。

 例えば、年齢が実は18歳ではなかったとか、日本国籍がなかったとか、失ったとか、そういう場合は名簿から削除されます。実は資格がなかった・無くなったということですね。例えば福岡市俳句クラブの会員は福岡市民であることが会員の要件であるとすれば、福岡市から引っ越したら名簿から外されるのと同じです。その会員さんを懲らしめたり罰したりする意味は何もなく、機械的にリストから消えるだけです。

 「規約を認める」もこの資格の一つですが、それは規約を認めるとサインすることで本当は資格が生じるものです。「認める」とのサインを取り下げたり、「もう認めません」と断言すれば失うということになります。

 ところが今やっているのは「こいつは規約を守っていない」と勝手に幹部が決めつけて排除してしまう、そういう道具として除籍を使っているということです。

 規約を守っていないかどうか、違反したかどうかは、「認定して処分する」、つまり罰を与えるための手続きが必要なんですけど、それを全くやらないわけです。これは党のマニュアルでも厳重注意されています。副委員長の浜野忠夫さんの『国民に開かれた党へ——日本共産党新規約のはなし』という本があります。これは今年の共産党の講師資格試験*2でも公式文献として指定された一級の党の見解本です。その73ページにこう書いてあるんですよね。

重大な規律違反で、党と国民の利益を裏切り、党に打撃をあたえた党員に、「処分」をおこなわないで第十一条による党員資格喪失者として、除籍で処理するのは正しくありません

 私について「神谷は重大な規律違反を行なった」と党幹部に言われましたが、処分は行われませんでした。党が正式に定めているマニュアルにも反する間違った処理をされたんですね。

24年8月22日付「しんぶん赤旗」より。公式に指定されています。

 処分をするのは非常にハードルが高いんです。私でいうと県役員の3分の2以上*3の同意が必要だし、意見表明の機会を「十分」*4与えないといけないし、除名なら大会に再審査を持ち込むこともできますから。党幹部はそんな面倒なことをしたくないわけですね。どこかのプロセスで負けてしまうかもしれないし。

 だからこういう除籍の濫用=「カジュアル除名」は全国で起きています。私の後に、私の不当解雇を批判して除籍された県議候補だった砂川絢音さんも同じです。彼女も正式な規律違反の認定や処分を受けないまま除籍されました。そういう例が無数にあります。

 

 もう一つがパワハラです。これも全国で蔓延しています。今日証拠として出しましたが『日本共産党の改革を求めて 増補版』という本にはそういう証言がたくさん載っています。

 パワハラ防止法ができて、相談窓口の設置やその周知が小さな事業所でも2022年から義務づけられましたが、福岡県委員会は私がパワハラを受けていた23年11月まで相談窓口はありませんでした。

 彼らはやばいと思ったのでしょう、12月に形だけつくったようですが、私への周知は一切ありませんでした。攻撃材料は減らすように、しかし神谷には利用されないように、というやり方のようにしか思えません。

 しかもパワハラの聞き取りは加害者しか許さない、パワハラかどうかは加害者(行為者)が認定する——これが党幹部のやったことでした。

 どこでも査問や調査は密室で行われます。録音も立ち会いも許されない。何をされても、何を言われても、証明できないのです。こんなひどいやり方があるでしょうか。

 ルール違反をしているのは、私ではありません。党幹部こそがルールを踏みにじっているのです。除籍や除名の濫用などが党が「閉鎖的」と言われる大きな発端となり、それが総選挙でも票を減らした原因の一つになった可能性は決して小さくないと思います。この裁判は、ひとり私の問題ではなく、共産党が直面しているこのような困難を打開する闘いでもあるのです。

 そして、それは日本社会において「進歩的組織」の陰で行われる陰湿なパワハラをなくし、異論を巧妙に排除するという誤った社会の風潮を正すことにつながります。

 

3.共産党職員が労働者であることはすでに前提になった

 そして、共産党職員は労働者である、ということはすでに当然の前提になったと思います。

 私に対して例えば「契約解除」とは言わずわざわざ「解雇通知」を出し、その中で「あなたを解雇し…」「解雇予告手当として…」と言っており、その「解雇通知」が「労働基準法第22条」に基づくものだと、共産党県委員会の側から述べているのです。*5

 22条には「労働者は…」とあり、私が「労働者」であることを、県委員会自らちゃんと認めているのです。もちろん、社会保険にも加入し、労基署の指導も受け、労働時間・勤務場所などが厳格に決められており、実態としても指揮命令を受けている存在でした。

 このことは、すでに裁判で前提になって始まったと言えます。

 これは共産党の歴史において画期的なことだとさえいます。

 これだけでも私は裁判を始めてよかったと思います。



4.声をあげられない多くの人の声を代弁する裁判

 最後に、この裁判を始めたことは、背後に多くの人の声を背負っているのだということです。

 裁判を始めようとしたら、まずお金がとてつもなくかかることがわかりました。もちろんある程度覚悟していましたが、弁護士の方から数百万円かかると実際に言われて、やはり緊張しました。そして短期間には終わらない、最高裁まで行けば5年かかる、いや10年かかる、という人もいらっしゃいました。

 そして、これまで一番頼りになる・キレ者ぞろいと思ってきた天下の共産党の幹部を相手取って闘わなければならないのですから、そのプレッシャーたるや尋常なものではありません。こちらにもし落ち度があれば、そこを徹底的につかれてしまうかもしれず、そういう意味でも気が抜けません。

 裁判までやって闘うということのなんとハードルの高いことか!

 そう考えたときに、結局裁判には踏み切れずに泣き寝入りしてしまう人が多いだろうなあと思いました。

 そして実際に裁判するぞと公にしてみると、「自分はできなかった。自分の分までがんばってほしい」という励ましを驚くほどたくさんいただきました。募金が急速に集まっていったのもそれを表すものでした(まだまだ足りませんが)。

 あらためて、私の裁判は、そうした党の中で党幹部の卑劣なやり方、ルール違反やハラスメントによって被害を受けながら、泣き寝入りしていた人たちの声を背負ってやる裁判であり、まず提訴自体が意義深いものなのだという実感を得ました。そのことが、この裁判を始めた今、最も強い感覚です。

 

 まず何より、そうした声を代弁するような裁判でありたいと思っています。

 もちろん、その先に勝利をして、今の日本共産党を改革する一助になりたい、そのために、党の中にいて改革を求めている人たちとも連帯していきたいと思います。

 

 

松竹伸幸さんの裁判を応援し、連帯することについても最後に述べましたが、すでにブログで書いているため、ここでは割愛します。

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

*1:ハガキ・A4ビラ・B4ビラ・ポスターなどなんでも作りましたが、最も多いB4片面フルカラーを基準にしてそれより少し安い1版6万円を相場とすれば6万円×3000版=1億8000万円を担ってきました。私の30年の賃金は初任給から現在までの月23万円を平均とすればボーナス2ヶ月分を入れて23万円×14ヶ月×30年=9660万円なのでほぼ倍の価値を生み出す貢献をしてきました。しかもこの相場はDTPだけのものですから取材や原稿執筆代などは全く含まれていません。

*2:ただし今年は総選挙が行われたためその後中止になりました。

*3:これは出席者の3分の2ではなく構成員の3分の2、つまり欠席者も分母に入れます。県役員は議員や労組幹部・弁護士などが多く、日常業務があって欠席者がいつも一定数いるので、3分の2を超えるのはかなりのハードルと言えます。

*4:10分ではありません(笑)。「充分」です。規約55条にそのように規定されています。

*5:なお、この解雇通知は「あなたの除籍決定の理由」と書くべきところを「あたの除籍決定の理由」と誤記しています。理由は2つしかないはずですけどね…。この文書は県委員会名で発出されており、県委員会の役員は60人ほどいますが、誰一人この誤記に気づかなかったのでしょうか。こんな大事な文書を一部の人が勝手に発出していないか、心配になります。