共産党幹部は私にハラスメントという「暴力」*1を行なったわけですが、当の党福岡県委員会は、その前にどんなハラスメント研修をしていたのでしょうか。
私へのハラスメントが始まったのは2023年からですが、それよりも前の2022年2月18日に、党福岡県委員会のジェンダー平等委員会として、Xという弁護士を招いて研修会をしています。
レジュメを掲載します。私として注目してほしい箇所を赤字で強調しておきます。
ジェンダー学習会
ハラスメントを防ぐために
220218 弁護士 ●●●●第1 はじめに(問題意識)
1 民主的職場において,なぜハラスメントは起こるのか
2 職業革命家とハラスメントの関係
3 機関の指導,相互批判とハラスメントの関係
4 ハラスメントを防ぐためには何が必要なのか第2 ハラスメントをめぐる現状について
1 全国の職場で増加の一途を辿る「いじめ・パワハラ」
(1)厚労省総合労働相談,「いじめ・嫌がらせ」は7万9190件(9年連続トップ)
(2)相談全体は129万件で増加傾向,「いじめ・嫌がらせ」はうなぎ登り
2 セクハラ・パワハラの法規制はどこまですすんだか
(1)セクハラ防止のための法規制
→1999年男女雇用均等法「セクハラ防止のための配慮義務」
→2007年セクハラ防止のための措置義務
(2)パワハラ防止のための法規制
→2019年5月,改正「労働施策総合推進法」→パワハラ防止措置義務第3 パワハラはなぜ起こるのか?
1 一般的な分析
(1)仕事に関するストレス
→感情労働としての顧客・利用者からのハラスメント
(2)仕事上の対立
→昔はこうやっていたetc.
(3)厳しい労働条件
→人員不足,低賃金,交替制勤務ほか
(4)異質なものに対する拒否・排除
→集団の中に不可避的に発生するいじめの構造
(5)社会の風潮…自己責任論(加害者の意識の中に根付いている)
(6)自己愛性パーソナリティ障害ほか2 科学的社会主義に基づく分析?
(1)資本主義社会の下での「労働からの疎外」
→労働自体が苦痛を伴うものになっている
(2)新自由主義の下における厳しい労働条件,ストレス,競争
→利潤第一主義の下での必然的な弊害
(3)新自由主義の下における支配層の分断政策
→非正規雇用の差別,とりわけ日本のジェンダーバイアスの下での差別
(4)新自由主義の下における自己責任論イデオロギーの蔓延
→支配層の支配のための「自己責任イデオロギー」がもたらすもの第4 法規制上のパワハラとは何か
1 パワハラの定義とは
→職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,その雇用する労働者の就業環境が害されること(改正労働施策総合推進法の30条の2第1項)
(1)「職場において行われる」
→「労働者が業務を遂行する場所」
(2)「労働者」
→正社員だけでなく,アルバイト,パート,契約社員,派遣社員も含まれる
(3)「優越的な関係を背景とした」
→指針では,「当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指す」
→通達「(上記は)例を示したものである」「実際上,職場におけるパワーハラスメントの状況は多様であり,その判断にあたっては,個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること」
→上司から部下に対するものだけでなく,先輩・後輩間,同輩間,部下から上司へもありうる
→「優越的な関係」…専門的知識や経験の力,集団の力の利用etc.
(4)「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」
→ここが一番,区別が難しい…。ポイントは「人格否定」
→通達「労働者に問題行動があった場合でも,人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば,当然職場におけるパワーハラスメントに当たり得る」
(4)「その雇用する労働者の就業環境が害されること」
→被害者に対しては「人格権侵害・不法行為(民法709条)」
→「職場環境を悪化させる行為」→民法709条にあたらなくとも,違法
→通達「社会一般の労働者が,同様の状況で当該言動を受けた場合に,就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とする」2 パワハラの6つの行為類型
(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)
→叩く,殴る,蹴るなどの暴行。丸めたポスターで頭を叩くetc.
(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
→同僚らの目の前での叱責,職員全員を宛先にしたメールでの罵倒,長時間にわたり繰り返し叱る
(3)隔離・仲間はずし・無視(人間関係からの切り離し)
→1人だけ別室に席を移させる,強制的な自宅待機,送別会に出席させない,1人だけ電話を取り上げる
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害(過大な要求)
→新人なのに,他の職員の仕事を押し付けられる
(5)業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事与えないこと(過少な要求)
→事務職なのに倉庫業務だけ,1日中机に座ったまま
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
→交際相手のことを執拗に問われる,妻の悪口をいわれる3 パワハラを法規制上の定義だけから捉えることの問題性
(1)個人の問題にすり替えられてしまう
→たんなる職場におけるコミュニケーションギャップと捉える見解
(2)根本は職場環境の変化にある
→リストラ要員の排除,非正規労働者への差別的待遇,成果主義etc.
(3)職場の問題を分析する主体の欠如
→労働組合の組織率の低下と経営陣のモラルの低下第5 パワハラはどんな被害をもたらすか
1 被害者の被害
→被害者その「人」を壊す(うつ病,適応障害,PTSD…)
→「人」は壊れたら元には戻らない(人生もキャリアも)
2 職場の被害
→あるべきコミュニケーション空間の破壊(職場の萎縮,士気の低下)
→職場秩序の崩壊と混乱
3 組織の被害
→職員の退職,(売上げの低下),被害者からの損害賠償請求,社会的評価の下落,革命の大義を傷つける…第6 パワハラを起さない職場をどうつくるか
1 パワハラは現に起こっており,どんな職場にも必ず起きるという認識が必要
→組織のトップ,部門のトップが明確にメッセージを発する
→朝礼での訓辞,ポスター掲示等,ちゃん付で呼ぶ組織はハラスメントが起こりやすい
2 パワハラ加害者を処断できる勇気
→パワハラはダメという職場内のルールを確立する
→優れた活動家であってもルールはルール
3 ラインによる指導が萎縮しないことも重要
→加害者とされた職員の言い分を客観的に検証し,対策(環境改善・人員の配置等)を打てるところは打つ
→打撃的,感情的,人格否定的,見せしめ的でない指導!
→事案発生後の<職場・チーム>による情報共有(匿名で良い)
→文字通りの「集団指導体制」をどうつくるか
4 職責者の寛容力,許容する力をどうつくるか
→多様な価値を認める,人には誰しも弱点がある,部下の成長を待つ。
→アンガーマネージメント(怒りのコントロール)
5 被害者には仲介者が必要
→被害者に沈黙を強いらせない環境(相談窓口,アンケートの実施等)
→被害者に伴走者(労組,コンプライアンス窓口,同僚)がつくことの重要性
6 スーパービジョン(職責者が相談できる体制)について
7 職員の人格的成長が民主的職場の発展に繋がる
以 上

一般的研修でなく共産党のための研修
まず、「民主的職場」*2や「職業革命家」という言葉が冒頭にあるのがわかりますね。そして、「第3」のところで「科学的社会主義にもとづく分析」とあります。そうです。この研修は一般的なハラスメント研修ではなく、まさに共産党用にこの弁護士が創意工夫して行なった「共産党のための研修」でした。*3
研修後も、定義や6類型を答えられなかった県党幹部
「第4」で有名なパワハラ防止法におけるパワハラの定義、厚生労働省の指針にあるパワハラ6類型が紹介されています。
私が訴状で提起している、私が受けた「精神的な攻撃」「過小(過少)な要求」「人間関係の切り離し」「個の侵害」がすべて入っています。
しかし私がパワハラ被害を受けたことを公式の会議で告発した際に、党幹部*4は何の調査もせずその場で「パワハラなどしていない」と否定し、その会議(県党会議、県委員会総会)の決定にまでしてしまいました。
私は私を調査した党県副委員長のA氏*5に対して、その会議で、パワハラでないというならそもそもパワハラの定義を知っているのか、そして厚労省指針にある6類型を述べてみよと突きつけましたが、A副委員長をはじめ県党の幹部は誰一人として全く答えられませんでした。「何それ…?」みたいな顔をしていたと思ったのは私の気のせいでしょうか。
研修など全く身になっていないのです。
「退職、解雇処分を示唆する言動」
レジュメの「第4」の「1」はパワハラの定義の話をしていますが、その中で「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」という要素について弁護士は話しています。
このレジュメにはないのですが、もう一つ、このX弁護士が会場で配った「資料」があります。そこに「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とはどういうものかということについて大変重要なことが書かれています。
まず「ア 人格否定,名誉毀損となる発言」です。「馬鹿野郎」「給料泥棒」などの暴言ですね。レジュメには「ポイントは『人格否定』」とあるので、党幹部はさすがにこういう低級な暴言はなく、だから「よかった。自分たちのやったことはパワハラではなかったんだ」と思ったのかもしれません。
しかし、X弁護士が配った資料には「ア」の次に「イ 退職,解雇処分を示唆する言動の有無」がちゃんとあるのです。
党幹部は私に対して「党員の資格を問われる」と明確に記しており、除名・除籍、続く解雇を「示唆する」一文を載せていました。
重大な規律違反を行なった以上、自己批判できなければ、党員の資格を問われることになる(2023年6月21日 党県常任委委員会決定)
そして査問の場で、県委員長自身が次のように繰り返し私を責め立てたのです。
あなた(神谷は)重大な間違いをしているんだからここは反省すべきだと。自分(神谷)は松竹擁護について間違っていたと、反省して自己批判しなさいと。そうすれば救われる。党に残れる。処分も受けるかもしれないけど、松竹氏みたいに除名とかああいうふうにはなりませんよ
しかも「自己批判」の強制——追放や解雇の脅しでそれを迫ること——は規約で禁止されていますから、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であることは疑いようがありません。弁護士の資料にも「ウ 本人の帰責性,業務上の指導の必要性の有無」という判断要素があり、これから完全に逸脱しています。規約でやってはいけないと定めていることを党幹部自身がやっているわけですから。
ここでも、党幹部は自分が受けた研修で学んだことなど全く眼中にないのです。
ハラスメントを構造的な問題だととらえる視点
そして「第4」の「3」にあるのですが、
(1)個人の問題にすり替えられてしまう
→たんなる職場におけるコミュニケーションギャップと捉える見解
(2)根本は職場環境の変化にある
はまさに前回紹介した「前衛」の大和田敢太(滋賀大学名誉教授)論文を彷彿とさせます。ハラスメントを個別の偶然の事件として捉えてしまうのではなく、そこに構造的な問題がないかどうかを考える視点を、この22年の研修会ではちゃんと指摘しているのです。レジュメにはありませんが、講師のX弁護士は、研修の場で「構造的な問題です」と明言していました。
私にハラスメントを行なった党幹部にはこのような視点が全くありませんでした。また、今の共産党全体に欠けている視点と言えるかもしれません。
そういう意味では、この研修会での視点は大変先駆的なもので、わざわざ共産党用にカスタマイズされた研修会なのに、受け取る側にそういう構えがないと水のように流されてしまうという好例ですね。
相談窓口
そして「第6」には次のように書かれています。
5 被害者には仲介者が必要
→被害者に沈黙を強いらせない環境(相談窓口,アンケートの実施等)
相談窓口の設置は2022年4月から義務化されました。この研修会は同年2月でしたから、研修会を受けて直ちに具体化すれば間に合ったのです。ところが県委員会は、ハラスメントの窓口を設置せず、私がハラスメントの訴えを23年7月に正式な調査の場で行っても何も対応をしませんでした。ようやくそれを形にしたのは23年12月ごろで、しかも少なくともハラスメント被害を訴えていた私に、それを周知することはありませんでした。
党福岡県委員会は22年の研修の中身を無視したどころか、「被害者に沈黙を強いらせ」るために意図的に悪用した疑いさえあるのです。

研修しても何も学ばない・中身に関心がない党幹部
党福岡県委員会の幹部は、確かにハラスメントの研修を行っていました。
しかし、「仏作って魂入れず」の言葉のように、中身については何の関心も持っていなかったのが実態であったことは、以上のことからもお分かりになるだろうと思います。
そもそもその研修の会場に県委員長や3人いる副委員長は誰一人としていなかったのです。後で動画さえ見なかったのかもしれません。中身に関心がなく、研修を「やった」という“帳面消し”が目的なのだと言われても仕方がないでしょう。
いや、それどころか相談窓口の問題で見たように、研修を「ハラスメント封じ指南」として悪用した疑いさえあるのです。
「なぜパワハラは起こるのか?」と、この弁護士のレジュメは問うています。
その答えの一つが上記のレジュメの中にあります。
「異質なものに対する拒否・排除」。
党中央幹部会の一員である県委員長は、私を排除した会議で党員たちに次のようなデマを公然と流しました(2023年8月下旬)。
松竹は党大会に向けて撹乱をさらにエスカレートしようとしていて再審査を呼びかけ、党内に同調者を作り党の分断と破壊をある意味公然と始めている。〔…中略…〕党外から外部から日本共産党の結社の自由に対する破壊をやり始めた。そういう段階に入った。〔…中略…〕そういう撹乱が今まで続いておるわけ。〔…中略…〕なぜ今皆さんにいうかというとね、福岡県委員会の中にも同調者がいる。それは神谷です。県常任委員会の。彼は松竹の同調者なんだよ。
規約違反容疑の「事実」に照らして私を調査し処分するのではなく「松竹氏の同調者であるから排除する」という、実に見事な排除の思想——それ自体が規約に違反する行為を明瞭に述べているのです。そして、それはなんら事実ではなく、結局長い時間かけた「調査」でひとかけらもその「事実」は出てきませんでした。
異質なものを排除するという体質——こんなことを放置していたら本当に共産党は腐っていってしまいます。
だからこそ、4月25日の「『共産党』を考えるつどい」に期待します。共産党で起きているハラスメントは個別の偶発事ではなく、構造的な問題ではないでしょうか。
4月25日(金)に東京都内で「『共産党』を考えるつどい」が開催されます。池田香代子氏、内田樹氏、川人博氏が賛同人に。現役党員数名が実名で訴えます。かぴぱら堂店主も参加します。会場からの飛び入り発言も大歓迎です。日本共産党の現状を憂い、改革を求める皆様のご参加をお待ちしています。 pic.twitter.com/9ISDY2qHpa
— かぴぱら堂💙💛🍉🍉 (@kapiparadou) 2025年3月18日
*1:「〔ハラスメントは〕他者を攻撃し、その尊厳を傷つける暴力であると理解する必要があります」——坂井希『あなたと学ぶジェンダー平等』新日本出版社、p.138より。
*2:「民主的」という言葉に聞きなれないものを感じる人もいるかもしれませんが、共産党関係での独特の用語です。「民主団体」とか「民主的な人」みたいに使われます。共産党は当面する革命を資本主義のもとでの「民主主義革命」だとしていて、社会主義までは直ちに進まないが、資本主義の枠内での改革を支持する統一戦線を構成するような団体・個人のことを慣習的にこう呼んできました。世の中では「共産党系団体」とか「共産党と親しい団体」などと言われたり目されたりすることがあります。
*3:私はこの弁護士の方を知っていますが、この研修の構成はかなりの力作でした。
*4:私から「加害者」と訴えられている人たち。
*5:加害者容疑のうちの1人。