ロシアのウクライナ侵略を受けての憲法9条をめぐる世論調査

 ロシアのウクライナ侵略を受けての憲法への意識調査が出揃いました。

 ジャーナリストの松竹伸幸さんがこれについて書いていて、興味深く読みました。

ameblo.jp

 安全保障のこととか、関連して憲法九条のこととか、考えなければならないと思う人は顕著に増えているようです。当然のことですよね。周りでもそんな話はたくさん聞きます。
 
 けれども、じゃあ、その結果として9条を変えなければと結論づけた人は、そんなに増えているようには見えません。減ったという結果が出ている場合もあります(「共同」の場合、昨年と比べて、9条改正が必要だという人が51%から50%へ、不要だという人が45%から48%へ)。

 なぜなのか、という点について、松竹さんは次のように書いています。

 私の推測は、ウクライナ危機が起きたりして、改憲派がここぞとばかりに張り切ってしまったが故に、世論が警戒心を高めたのではないかというものです。せっかく岸田さんで世論の警戒を解いたはずなのに、やれ日本も侵略されるのは必然だとか、やれ敵基地攻撃にまで踏み込むのだとか、改憲派が頑張れば頑張るほど、「これはただ自衛隊憲法に書き込むだけには止まらないぞ」と思ってしまうのではないでしょうか。
 
 ということは、これからも、同じような力学が働くのだと感じます。改憲派が焦れば焦るほど、護憲派を批判すればするほど、改憲が遠のいていくという力学です。

 なるほど、と思いました。

 別の言い方をすると、護憲派が相当な危機感を燃やして事態を告発した成果だと言えなくもないと思います。

 私の周りでも、こういう逆風の中で、いや、だからこそ憲法9条を守ろうという署名を街頭や近隣の人に訴えて、「ちょっとこの署名だけは遠慮させてくれ」という反応に悩みながらも積極的に訴えたという人がかなりいます。

 今私は「逆風」と言ったんですが、そうかと思えば、向こうから声をかけてきて「ぜひ署名させてくれ」という反応も結構あったと聞いています。つまり、あまりアクティブでなかったような人たちの中で9条に親近感を抱いていた層が「これはまずいのではないか」という危惧を高めて、アクティブになっている、という報告です。

 そういう運動の努力と、それに呼応して危機感を抱いた人たちの反応が、こうした世論調査の結果を出したと言えないでしょうか。

 

 

憲法9条をめぐる争点

 私は、いま憲法9条でつくるべき統一戦線は、「9条を守るかどうか」という言い方ではなく、「9条のもとで専守防衛自衛隊を続けるのか、それとも9条を変えて米軍と海外で戦争をできる自衛隊に変えるのか」という、そういう線引きだと思っています。

 岸田政権は、9条改定をあたかも「自衛隊を明記するかどうか」という点での争いであるかのように描いて、その争いに持ち込もうとしています。しかし、それは全くのごまかしです。これは今暴くべき最大のごまかしだろうと思っています。

www.nikkei.com

 政府見解ではすでに自衛隊は「合憲」です。最高裁でもそのことは判決が出ています。だから、政府自民党としては、もはや自衛隊の存在そのものの憲法上の位置付け「ごとき」の問題に力をさく必要など全くないはずです。

 自民党が本当に「国防」を考えるなら、自衛隊を明記するかどうかなんていう「どうでもいいこと」に全精力を傾けている場合ではないはずです。時間の無駄と言いましょうか。

 自民党や安倍元首相が「核共有=核兵器使用」、敵基地攻撃という名の国連憲章違反の先制攻撃、現在の2倍の軍事費となる「GDP2%の防衛費」、そして台湾有事・朝鮮有事での日米軍事同盟を軸にした戦争を本気で訴えたいなら、そのことを9条改憲の理由として堂々と訴えるべきなのです。

 だって、自民党や維新の会はこれらをしないと国が守れないと常々言っているわけでしょう? 

 実際、自民党改憲案は、自衛隊を明記する際に「自衛の措置」を同時に書き込もうとしています。

www.jimin.jp

 これは一見何の問題もないように見えますが、この「自衛」には個別的自衛権だけでなく、集団的自衛権、すなわち自分の国が攻められてもいないのに、同盟国が攻撃されたら一緒に戦争をすることまでが含まれています。

 自民党憲法改正草案の解説で、「自衛の措置」についてこう書いています。

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/kenpou_qa.pdf

この「自衛権」には、国連憲章が認めている個別的自衛権集団的自衛権が含まれていることは、言うまでもありません。

新2項で、改めて「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と規定し、自衛権の行使には、何らの制約もないように規定しました

 

 他方で、護憲派は、専守防衛自衛隊を続けることを訴えるべきだと思います。自衛隊を存続させるかどうか、軍事力を使うかどうか、なんて現時点では1ミリも争うべきことではないからです

 日本共産党自衛隊を当面専守防衛の部隊に改革することを掲げているわけですから、そこを臆さずにいうべきです。

 そして、世論の多数が専守防衛を厳守すべきであり、核共有を議論すべきだと思っている国民は2割しかないのですから、ここを土俵にすえるべきでしょう。

www.hokkaido-np.co.jp

 志位和夫委員長の憲法記念日の訴えでは、「日本が直面している最大の現実の危険は何か――米軍と一体に海外に攻め込むこと」を強調していて、この点は非常に大事だと思いました。

www.jcp.or.jp

 

 いま危機に乗じて、“日本を守るためには力が必要だ”――こう言って、「敵基地攻撃」だ、「核共有」だ、「9条を捨てろ」――こういう大合唱が起こっています。

 しかし、みなさん。いま日本が直面している最大の現実の危険はどこにあるでしょうか。

 ズバリ言いますと、日本が攻撃されていないのに、米国が軍事行動を始めたら、安保法制=集団的自衛権を発動して、自衛隊が米軍と一緒に「敵基地攻撃」で攻め込む。その結果、その戦火が日本に及んでくる。これが、いま日本が直面している最大の現実の危険ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

 共産党の綱領がなぜ「対米従属」を日本の改革すべき最重要焦点にしているのかといえば、こういう危険に巻き込まれるからに他なりません。武力一般を肯定するか全面否定するか、なんていうことは全く当面にとって重要ではないわけです(そもそも日本共産党が世界の平和秩序の中心にすえるべきと衝動している国連憲章第42条は国連軍による武力発動さえもありうることを前提にしています)。