社会経済活動と感染抑止の「両立」という問題

 今日付の「しんぶん赤旗」で、日本共産党小池晃書記局長が、オミクロン株におけるコロナ感染者の自宅待機を7日間に短縮することについて、

7日間待機で5%程度の発症リスクがあるのは無視できない数字だ。

と述べています。

 短縮には反対なのかなと思いましたが、すぐその後に、

潜伏期間が短いので短縮に合理性はあるが、

と述べ、短縮そのものには反対していないことを表明しました。その上で

その場合は検査も併せて行う必要がある。社会経済機能の維持と感染抑止を両立させる最大のツールが検査だ

と述べています。共産党は1月の代表質問でも

感染力の強いオミクロン株に対して、感染抑制と社会経済活動の両立を図るためにカギを握るのがワクチンと検査、そして保健所や地域医療機関への緊急支援です。

と社会経済活動との両立論を打ち出しています。

 この意見に私も賛成です。

 いまだに世の中には「社会経済を回す」という原則を打ち立てること自身が感染抑制・防止をおろそかにしているかのように考えている人がいます。

 確かに「両立」を言いながら、実際には感染抑制をおざなりにして「経済」、それも利潤追求だけを優先させた活動になっている政治があります。その両立論が実際には空洞化・形骸化していることが問題なのであって、両立そのものが問題なわけではありません。

 

 小池氏は、この記事でそのカナメとして検査の重要性を強調しています。

 司会の松原耕二氏も

「『検査によって社会を回す』という体制をつくる発想がこの国はあまりなかったのでは」

自民党議員に問うています。

 現在検査キットの不足が大きな問題になっていて、そのことが如実に表れてしまっているわけですが、私も福岡市議会の質疑応答や市長要望などに立ち会った際に、福岡市政のあり方からもそのことは強く感じました。

 特に感染が一定沈静化していた今年の秋にその機会はあったわけですが、共産党が質問・要望しても反応は鈍く、“ワクチンでもうだいたい収まったではないか。今さら検査なんか…”という態度がありありでした。じじつ、福岡市は共産党の求めに応じた規模での検査の拡充をしてきませんでした。

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 以下は昨年の9月21日の決算特別委員会総会での共産党(中山郁美市議)と高島・福岡市長とのやりとりです。

◯中山委員 …100億円規模で基金を取り崩し、事業者や市民への独自の給付金の実施、検査拡充、必要な人員増等を急ぎ、直ちに実行すべきではないか、市長の答弁を求める。

△市長 新型コロナウイルス感染症対策については、関係者の尽力等によって多額の予算を確保してもらった国の臨時交付金も活用し、医療、介護施設における従事者への給付金や、国に先駆けて実施をした家賃支援など、本市独自の取組を幅広く実施しており、また、必要な人員体制についても柔軟かつ機動的な体制を整備し、全庁挙げて取り組んでいる。さらに、令和3年度においても、当初予算及び補正予算において財政調整基金を約128億円取り崩し、様々な同感染症対策などの事業を充実させており、引き続き市民の命と暮らしを守るため、感染拡大防止と社会経済活動の維持の両立に向けた取組を迅速に実施していく。

 要するに、“これまで十分にやってきたしやろうとしているから、問題ありません”という答弁です。検査を拡充する方向性は示しませんでした。そしてまさに、ここで内容のない空虚な「両立」スローガンを述べて、答弁を締めています。

 

 小池氏が述べている、

「感染が下火になっていた昨年10月〜12月にかけて検査体制・能力をつける一番いい時期だった。にもかかわらず、政府はこの3カ月間何をやってきたのか。検査し、感染者を保護するという感染者を保護するという感染者対策の基本がなっていない」

「これを反省して、今からでも万全の検査体制をつくることに、総力を挙げなければいけない。それが命と暮らし、経済を両立させる道だ」

という点は全くその通りだと考えます。

 ワクチンの接種率が向上し、感染が一旦下火になったあとは、マスメディアや政治の舞台から検査論が消えてしまい、この段になってあわてて対応するということになっています。「いったん忘れかけた」ということ自体が反省されるべきでしょう。