日本共産党の志位和夫委員長を迎えての、千葉・船橋での対話集会のやりとりが「しんぶん赤旗」で報道されました。
その中で例えばこのようなくだりがあります。
「政党助成金を受け取って何かいい使い方をしたら?」
志位さんは受け取らない理由の第一に憲法違反をあげたうえで、「政党助成金は政党を堕落させてしまいます」。もし共産党がいま政党助成金を受け取ったら11億円ほどになりますが、党への個人献金は80億円だと紹介すると、「すごい」と驚きの声が。「共産党に個人献金する方の多くは、苦しい生活の中でも少しはと、献金していただいている。もし、税金をもらったら、この個人献金、もらえるでしょうか。草の根で支えられた財政が大事だと思う」。さらに「いずれ廃止のときがきます。廃止を訴え続ける党があってこそ、この制度を廃止できる」とのべました。
この冒頭の朱書きした部分、「政党助成金を受け取って何かいい使い方をしたら?」という主張ですが、初めて聞く人はよくわからないかもしれません。だからこの主張の立場を少し説明をします。
——政党助成金というのは政党助成法に基づいて一定の要件を満たした政党に交付される、政党の活動を助成することを目的にうたった交付金のことである。「政党交付金」とも呼ばれる。リクルート事件やゼネコン汚職などを受け、企業・団体からの献金が政治をゆがめることが大きな問題となり、それを制限し無くしていく代わりに国が政党に対して助成金を出すということを決めた。
——そのようにして決めたものであるから、政治をゆがめる企業・団体献金をなくすものだし、大いに受け取って、それで国民のための活動をすれば問題はないはずだ。
——また、仮に何か問題があるとしても共産党が受け取りを拒否すると、その拒否した分は保留されて国庫に留め置かれるのではなくて、他の政党にその分が配分されてしまう。自民党や維新の会が山分けしてしまうではないか。そんな反国民的な政党を肥え太らすためにお金を回すくらいなら共産党が受け取るべきだ。
——さらに言えば、この受け取りをしない分は個人献金で埋めることになり、共産党を支える人は大変な思いをしてカンパをすることになる。そんな苦労を国民にさせないためにも、受け取った方がいいのではないか。
とまあ、こんな感じの主張になります。
これに対して、もう一度志位委員長はどう反論しているのか、映像から起こした全文を見てみましょう。
あのね、受け取らない理由を言いますと、一つは憲法違反という問題があるんです。なんで私たちが受け取り拒否しているかという根本には憲法違反という問題がある。政党助成金という仕組みはですね、どういう仕組みかっていうと、〔交付額が〕国民一人当たり250円と決まってるんですよ。それで総額315億円。国民の数が減れば〔交付額の〕総額が減るんですよね。国民一人当たりということで決まってるんです。ですから一つの額が、総額が決まっていてそれを配分するっていうんでもない。国民一人当たりってなってるんです、制度の設計が。そうしますとね、例えばあなたが250円払う。その半分が強制的に自民党に行く、と。こういうことになりますと、自民党に対する強制カンパになるじゃないですか。つまり思想信条に反して、ある党に対するカンパが強いられる。これはもう根本的に憲法に反している。だから私たちはまず憲法違反であって、これはもう制度そのものに反対して受け取らない。
同時に二つ目。それだけじゃなくてね、やせ我慢でもらってないわけじゃないんです。やっぱり政党を堕落させるっていう面があるんですよね。政党っていうのは草の根で結びついて、草の根で国民の皆さんの様々な財政的な支えで活動するっていうのが本来のあり方じゃないですか。それを国営政党みたいになって、国からのお金に頼ってやっていたら堕落が始まるんじゃないでしょうか。まあ、麻薬みたいなもんでね、一旦打ち始めると中毒みたいになっちゃって、税金依存政党になっちゃったら私は堕落だと思う。
で、こういう問題があるんです。数字をちょっと調べてきたんですけどね。共産党が仮に政党助成金を受け取ったとしますといくらか。11億円。(「すごい」)「すごい」とおっしゃいますけどね、個人献金をわが党は1年間でどれだけ集めているか。80億円です。(「おおーっ」。拍手)こっちのがすごい(笑)。80億円もいただいている。共産党に個人献金をしてくださるっていう方っていうのは、多くは苦しい生活の中でも少しはと思って出していただく方がほとんどだと思うんですよ。それが80億円。もし税金もらったら、この個人献金、集まるでしょうか。「税金でやってるんだったら、わざわざ献金を出す必要ない」ってことになるんじゃないでしょうか。
ですからね、こういうせっかくの〔草の根の国民との〕結びつきが断たれてしまう。11億円もらったおかげで、80億円がフイになってしまうということにもなりかねないわけでありまして、ですから、ここはね、草の根でいただいた財政を作っていくことが大事だと思います。
最後に3点目がある。私はこの政党助成金というのはいずれ廃止する時がやってくると思う。政権を使った大規模な買収事件も起こったじゃないですか。ですから廃止する時がやってくる。その時にですね、全部の政党が政党助成金をもらっていたら、廃止になんないじゃないですか。政党助成金を巡ってどんな矛盾が起こってきても、〔政党助成金制度が〕ダラダラ続くことになります。だからね、いずれ廃止する時がやってくる。で、共産党が頑として廃止を言い続けてきたことが生きる時が必ずくる。共産党までもらっちゃって、全部の政党が政党助成金認めちゃったら、廃止する道がなくなってしまう。
私はこの315億円はきっぱり廃止する! それで頑張りたいと思っております。どうかご理解よろしくお願いいたします。(拍手)
この志位委員長の立場に加えて述べておけば、政党助成金導入後も、企業・団体献金はなくなっておりません。2021年度の政治資金収支報告を見ると自民党本部の政治資金受け皿団体「国民政治協会」(国政協)に、企業・団体、政治団体などから29億466万円が献金され、そのうち24億7000万円が自民党本部に入っています。
いわば政党助成金は企業・団体献金をなくす代わりになっておらず、それももらって、さらに国民の税金も山分けしていることになります。二重取りですね。制度の建前さえ歪めているのです。
また、「5人以上の国会議員を集めれば政党助成金をもらえる」ことから、理念も政策もぬきに、政党助成金目当てに、おびただしい数の新党の設立と解散が繰り返されてきたことも、問題です。制度導入以来、政党助成金を受けとった政党は実に47党になります。
政党が、国民・有権者から「浄財」を集める努力をしないで、税金頼みになると、国民の中で活動し、国民の支持を得て、その活動資金をつくる、ということが基本が崩れます。そうなると、国民の声がわからなくなる、資金についてもカネへの感覚が麻痺してくることになるんじゃないでしょうか。河井克行元法務大臣・案里夫妻の大規模選挙買収事件、秋元司担当副大臣のカジノ汚職事件、吉川貴盛農林水産大臣の鶏卵汚職事件、甘利明経済再生担当大臣(前自民党幹事長)のUR口利き疑惑、安倍総理の「桜を見る会」前夜祭の買収問題など、腐敗事件が連続してることは偶然じゃないと思います。
私は「政党助成金を受け取って何かいい使い方をしたら?」という主張は誤っているという認識を共有し、志位委員長が述べた日本共産党の立場で引き続き実践を重ね、検証していきたいと思います。
さて、ここまでの私の記事および解説を聞いてどう思われました?
「神谷は政党助成金廃止に向けて頑張っておるのだなあ」と思っていただけたかと思います。
まさか、「神谷は政党助成金廃止の記事にかこつけて、4つのダッシュ(——)の部分で政党助成金必要論を展開し、必要論を実は広げようという真意を隠し、党規約第5条(五)にある『党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない』に反しておる!」など思った方は一人もいないと思います。
そんな方がいたら、いたわってあげたいですね。
どうしましたか? 大丈夫ですか? 休みは取れていますか? 何か嫌なことがありましたか?
共産党の政党助成金についての考え方、および共産党の規約に基づく党内民主主義とはどういうものか、ご理解の一助になれば幸いです。