引き続き、高島市長の記者会見をもとにした架空討論会を勝手にやってます。
この架空討論会、前は毎日新聞が、今日は朝日新聞が注目してくれています。
現新2人の候補者、対照的なネット戦略 福岡市長選:朝日新聞デジタル https://t.co/W2Gm2bnG1m
— 上西充子 (@mu0283) 2018年11月11日
新顔の神谷貴行氏(48)と、現職の高島宗一郎氏(44)
今回は、成長戦略についてです。
これはよく質問されます。「かみやさんの成長戦略はなんですか?」と。
大学生ITベンチャー「PoliPoli」のスマートフォンアプリの特設ページでも聞かれましたし、そこに関わっている方にも街頭のトークライブでも聞かれました。
―これまでの8年間でこういうことができました、ここが足りません、だからここをやっていきますっていう意味で、公約を読み解いてほしい―
福岡のポテンシャルを開花させていくために、まず産業構造はどうなっているかを分析しました。福岡は政令指定都市の中で唯一、1級河川がありません。だから、工場をつくることができません。ですから、知識創造型産業ですとかサービス業、いわゆる第3次産業が非常に重要になってきます。第3次産業が大事になったときに、何をしなければいけないか。
よく福岡って「七社会」経済って言われてましたけど、私は七社会経済ではないなと思ったわけです。福岡っていうのは第3次産業の街だと捉えたわけです。ですから、福岡の成長戦略を、短期的にリターンがかえってくるもの、中期、長期と分けました。
短期的リターンは交流人口の増加。中期的リターンは知識創造型産業の育成。長期的リターンは支店経済からの脱却です。支店経済からの脱却は、手段としては本社機能の誘致、ならびにここに本社をつくっていく。これがスタートアップです。
こうした短期・中期・長期で成長戦略をつくったのが、8年前の出来事なんです。これを着実に進めていくためにどうしようか。私はマスタープランを改訂することに手を付けたわけです。福岡市全体の大きなマスタープランを改訂して、その長期的プランを実行していくために政策推進プラン、行財政改革プランをつくったのが第2段階です。
で、福岡市としての計画に落とし込みをして、そのうえで毎年の予算編成の中で、交流人口がまず短期的リターンでかえってきますから、これを増やしていくために国際会議やMICE、スポーツイベントの誘致をするようになりました。それによって就任2年目で入り込み観光客数が日本一になった、過去最高になったわけです。そしてその後も7年連続で、国際会議開催件数が政令市で1位となったわけです。
これは、効果てきめんでした。就任直前の3年間は11位だった税収の伸び率が、3年間で1位になったんです。そのあと1期4年間も政令市で1番の伸び率になったわけです。こうやってソフト施策が非常に進んできた中で、何が起きたか。
九経連の事務局長みたいなことをおっしゃってますよね。
結局、こういう成長戦略を2期8年してきて、市民の側には何も回ってこなかった。というか市民が貧しくなってしまった……というのはこれまで述べてきた通りです。
市民の家計の可処分所得がダウンしたっていうのはもうさんざんいってきたので、今回は市民の家計の可処分所得じゃなくて、市民経済計算でいうところの「賃金・俸給」でみてみましょうか。
高島市長がなる前の2009年度で2兆5727億円なんですが、最新統計(2015年度)は2兆5418億円で減っているんですよね。就業人口が増えているのにね。市内雇用者一人当たりの市民雇用者報酬も499万円から486万円にダウンしてしまっています。
なかなか悲惨な結末ですよね。
これぐらいはっきりとダメな数字が出ちゃうもんなんだな、と。
いや、福岡市の経済(市内総生産)6兆7308億円から7兆6561億円に、13%くらい累積で「成長」しているんですよ。何度も言いますけど。
その取り分が企業サイドにいっちゃっている。労働者や市民に還元されていないことがクリアに出てしまっているんです。
だから、この延長線上で「成長」していっても、市民にはほとんど還元されないわけですよね。
それなのに、最終的に「支店経済からの脱却」をしたいそうなんですよ。高島市長は。
東京やシアトルみたいな街になって幸せですか
それはつまり、東京みたいな街に福岡市をしたいのか、と思いました。
東京みたいな街になったら、皆さん幸せですか?
なるほど、企業、特に大企業は幸せそうですよね。
以前高島市長はインタビューで米国のシアトルみたいな街にしたいって述べていました。
若き市長、高島宗一郎(40)だ。高島は「福岡市を日本のシアトルにしたい」と意気込む。……高島は支店経済の街だった福岡市を、創業の街に変えたいと思っている。高島が描く福岡市の未来像は米国のシアトルだ。
シアトルは、アマゾンがやってきて潤っているかのように見える。しかし交通渋滞とホームレスの増加など都市問題が深刻化するばかりです。
計画の最終年であった2015年、シアトルのホームレス人口はゼロに近づくどころか、過去最大になった。アメリカ住宅都市開発省が同年発表したデータを見ると、シアトルのホームレス人口はニューヨーク、ロサンゼルス、ラスベガスに次ぎ、全米ワースト4位。しかも、その翌年にはさらに1408人もホームレスが増えて全米ワースト2位になり、シアトル市は緊急事態宣言を発令するまでに至った。
「支店経済からの脱却」のような成長目標は財界が描く成長のビジョンではあっても、政治家が語るべき成長のビジョンの少なくとも本筋の問題じゃないと思いますね。
サプライサイドつまり企業(大企業)側の「成長」の話ばっかりなんです。高島市長のこれは。「九経連の事務局長」と言ったのはそういうことで、それが政治が描く成長戦略なのかなと思うのです。
どうやったら、その成長の果実が市民に回ってくるのかが見えないわけですよね。
私の成長戦略は、デマンド(需要)のサイドを中心にして、しかもなおかつ地場の中小、特に小規模企業というサプライ(供給)サイドの対策を視野に入れた地域循環型経済の構築です。
労働(サービス)が社会を支えるだけ行われ、それがお金を仲立ち(媒介)にして、交換されるということができれば、「普通の暮らし」ができるんです。お金と労働が地域で回っていくシステムをどう作るのか。これは実は日本ではまだなかなか成功していないしくみづくりで、それを築いていこうというところに私の挑戦があります。
簡単に言えば、私がいっている二つの方向です。
一つは、市民の暮らしを直接応援することで、所得が増えるのと同じ効果をもたらす施策です。
もう一つは、地場の中小企業、とりわけ小規模企業に仕事を回し、雇用とお金が地域内で増えるように手だてをとることです。
「地域」といった時、これは福岡市を意味するだけではありません。
例えば、九州を一つの経済圏とみなしてそこ全体が総合的に発展する道を模索することです。再生可能エネルギーは確かに福岡市内で利用可能量は自給200%以上あるんですが、九州全体を一つのネットワークであると考えればもっと簡単に再生可能エネルギーを軸にした「自給圏」が構想できます。原発なんか直ちに止めた方がいい。
ともかく、大企業を中心にしたサプライサイドのことばかり考えている高島市長のやり方では経済は成長しても市民には還元されないどころか市民は貧しくなっていることが統計上はっきりしてしまったわけですから、変えないといけないのです。
「支店経済を脱却」して東京やシアトルみたいな街にしたいんですか?
そんな街が幸せですか?
内発的発展の都市政策の原則
ここから先はちょっと小難しい話になりますので、読みたくない人は読まなくて差し支えありません。
最近も福岡で講演された宮本憲一さん(元大阪市立大学教授)は、高島さんのような開発の仕方を「外来的開発」と呼んでいます。外からの呼び込みですね。実は自民党などの伝統的な政策はこれです。高度成長期に外から大企業を誘致してコンビナートを作らせたり、大型の公共事業を呼び込んで地方に再分配させるなどといったやり方です。
これに対する新しい政策の方向を宮本さんは「内発的発展」として紹介しています。私のいう「地域循環型経済」という成長論はこの「内発的発展」論の一つに位置付けられます。*1
それには3つの原則があります。
一つ目は、目的の総合性。つまり、経済成長のもうけだけを指標にするのではなく生活や環境の質が向上しないといけないというものです。まあ、これだけ見れば高島市長だってそう言っているわけですけどね(笑)。
二つ目は、地域内産業連関をつけ、社会的剰余を地元の福祉や文化に配分するということ。「できるだけ地域内で財貨やサービスに付加価値をつけることがのぞましい」「東京や大阪の商社やサービス業によって卸売やサービスされるよりは地元の卸売業やサービス業によって売買される方が雇用も所得も増えるのである」「さらに、都市で生み出される社会的剰余(営業利潤+個人の余裕資金+租税)が地域内で分配され、再投資され、その際にできるだけ福祉や文化など市場にのりにくい公共的な性格の財やサービスの向上にも配分されれば、地域の総合的な発展が可能になる」(宮本『都市政策の思想と現実』p.358)。
三つ目は、住民の参加と自治。天神ビッグバンやウオーターフロント再整備が住民の参加や自治で議論されることはありません。市長が「市民参加」を強調するのは、「税金で解決するのはもう古い」といって福祉から手を引き、町内会やボランティアにやらせようとするときだけです。
この3つの原則に則って内発的発展という形での成長をしていくようにします。
「税金を使ってやるというやり方でなく」?
ところで高島さん、記者会見でこんなことおっしゃってますけど……
ホテルが足りない、滑走路が足りない、MICEの施設が足りない、クルーズの着岸する岸が足りない。ソフト施策によって大きく喚起された需要により、供給力不足が顕在化したわけです。どうするのか。当然、これらの整備には大きなお金もかかるし、簡単に一朝一夕にできるものではない。
これらを税金を使ってやるというやり方ではなくて、できるだけ民間活力を利用しようと計画を考えた。
いやいやいやいやいや、つい最近、あなた、「市政だより」(2018年11月1日号)でむっちゃ「税金こんなに使ってるぜ!」って大宣伝してますやんwwwww
結局市民所得の向上策はなし――「成長」一本槍
そして記者から「市民の懐がさみしいようだけどどうすんの?」と問われてますよね。
―市民所得の向上についての考え、施策は―
8年前と比較しても有効求人倍率が非常に増えて、働く場所が大きく増えていった。市税、税収の伸び率も、5年連続過去最高になってきていて、福岡が明らかに元気になっていることは、皆さんご承知いただけてると思うんです。
一方で、最近言われているのが、内部留保が多いんじゃないかとか、要するに、人件費比率です。これが低くて企業がため込んでいるっていうのは、やっぱりよくないと思うんです。やはり、給与を上げていただく施策に、これから企業の皆さんも努力をしていただきたいと思っています。
高島市長、大企業の内部留保が多いことはお認めになったわけですね。ちなみに議会で質問されたとき、「市内大企業の内部留保は減っている」「内部留保は設備投資などに回っていて全部が使えるお金ではない」ということを局長が答弁していてこの記者会見と全然別のことを述べているんですが……。あの局長答弁はどうしちゃったんですか?
まあ、それでもいいでしょう。きっと「あの答弁はダメだった! あんな答弁した局長は更迭だ!」と悔やんでこういう内部留保批判をされているんでしょう。知らんけど。
だけど、記者の質問に高島さんは結局どう答えたのか。
ただ、前提として、福岡市の経済自体が良くなっていかない限りは当然、給与を上げよう、ボーナスを上げようなんて話にはなりにくかったりもすると思うんです。今、人が不足しているのは間違いないんで、皆さん非常に人を欲しがっています。これは待遇とか、所得を上げていく良いチャンスではないかなと思っていますんで、行政としては産業政策として経済を活性化していくことによって、市民所得の向上の後押しをしていきたいと思っています。
結局ゼロ回答。
この回答はとどのつまり「経済成長すりゃいいじゃん」ってことですよね。
人手不足になるからやがて給料は伸びるでしょ、と。
前から高島市政は、この問題を聞かれると「求人倍率は上がっている」と答えるのが常でした。例えば2015年10月22日の経済観光文化局長の答弁は、
でした。で、結局2015年の家計の可処分所得も、賃金・俸給も落ち込んだわけですよね。つまり求人倍率はずっと上がっているんですが、市民の家計の所得は変わりがないんですよね。どうしてここまで還元されていないのか、よく考えるべきじゃないでしょうか。
高島市長の反論を、待っております。もう、全くもって、全然きませんが。
本日の私の演説です。