第二次公約など(2)めざすべき都市像「8時間働けば・年金があれば普通に暮らせるまち」

 (続き)前記事に続いて、第二次公約などを発表した記者会見の内容を紹介しています。

 

 最初の記者会見(10月5日)の時、質問で「めざすべき都市像」を聞かれました。現在の市長が掲げているのは「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」です。

 私は記者会見で「『1%のためでなくて99%のための政治』というのが私のスローガンです。基本的には住みやすいというのがベースになって、成長していける際のベースにもなると思っている」と答えました。

 これが基本ですが、あえて「都市像」として言い直すとすれば、「8時間働けば・年金があれば誰でもふつうに暮らせるまち、そのために必要な成長がある都市」となります。

 すでに市内の世帯の半分が低所得世帯・単身世帯となり、その割合は高島市政になって率も数も増えています。一人暮らしの年金のお年寄り、独身の非正規の若い人がかなり増えているからです。

 今後AI(人工知能)やIT(情報技術)が発達し、もうけ本位に使われれば、大量の失業さえ生まれかねません。

 長い目でこの都市問題に対応するのが市政の仕事です。

 私が話を聞いた中ではトラック運転手の日当は6800円。もちろん食べていけませんから残業を月120時間超えてようやく月25万円だと言います。しかも日当を超える分は歩合制で高速道路を走ると高速代が引かれてしまうので下の道(一般道)を走る。実際にはもっと長時間になっていると聞きました。

 もし自動運転者ができれば、こうした問題は「解決」されるでしょうが、同時にそれは運転手の仕事が失われる瞬間です。

 高島市長は九大箱崎跡地を「スマートイースト」などと称して自動運転車を走らせるとはしゃいでいるようですが、「鉄人28号」のごとく、技術はそれを誰がどう握るかこそが問題のカナメです。市長の仕事は、ナイーブにただ大企業の儲け仕事を後押ししてやることではありません。それを政治・社会の側から問題を浮き彫りにして、対応する知恵をだし、政策にしていくことこそ必要です。

 また、「ローンを払い終えた持ち家に夫婦2人の年金で細々と暮らす」というモデルも失効しつつあります。高齢者になっても賃貸に住み、パートナーがいなくなって、高い家賃と1人分の年金では支えきれなくなっているのです。

 だからこそ、私は「福岡式ベーシックインカム(国などから行う全ての人への最低生計費の給付)」を提案し、全ての人に「健康で文化的な最低限度の生活保障」をする社会への切り替えを訴えました。その第一歩が家賃補助・市営住宅の増設、そして暮らしへの直接支援です。

 共働きでも、単身者でも、シングルマザーでも、障がい者でも、LGBTカップルでも、外国人でも、どんな家族の形態でも不利にならない暮らしができるまちにします。お金が市内で循環する地域循環型経済をつくり、限られた資源と成長でも暮らしていけるまちにします。そうして暮らしが安定してこそ、企業は安心して活動できるようになると思います。ウィン・ウィンです。

 大企業を応援してトリクルダウンさせようとして結局失敗したのが高島さん。暮らしを応援して成長と分配の本当の好循環をつくりだす(ノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツの言葉で言えば「トリクルアップ」*1をするが私・かみや貴行、ということです。

 

2ヶ月のバカンス、2時間の昼休憩、週36時間労働!

 候補者として市民の方にお会いする中で、映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」をお貸しいただきました。

 今日はオフなのでを視聴しました。

 これが新鮮!

 

 アメリカに取り入れるべき社会制度を他国に出かけて「侵略」して「ぶんどって」こようと映画監督マイケル・ムーアが出かけます。

 イタリアでは8週間(2ヶ月)の完全な有給休暇があり、2時間の昼休憩で家に帰ります。昼休みに電話に出たり、訪問客を相手する必要はなし。

 しかも労働生産性は日本よりも高い。

https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2017_press.pdf

 

 ドイツでは週36時間労働(日本は建前でさえ週40時間労働ですが、実態はさらに……)。午後2時に仕事が終わる日もあります。

 

 午後2時ですよ。

 皆さん、何しますか?

 

 さらに、ストレス過多の人は無料でスパに3週間滞在し、完全に仕事・家事・育児から解放される――というのが個人的にはえらく魅力的でした(笑)。

 もちろんムーアは「イタリアにももちろん問題はある」として必要なエクスキューズはいれています。しかし、ムーアが言うように、ともかくも何らかの形で「実現」しているっていうことが大事なんですよね。

 ムーアは、映画の随所に、アメリカでもそういう運動があったことやもともとアメリカ発の理念が多いことを紹介しています。

 つまり「うらやましいね。いいな外国は」で話が終わらないのです。

 それを変えるエネルギーや起源の理念は、自分たちの中にあったんだよ、ということをムーアは示そうとしています。

 そしてベルリンの壁の崩壊で映画の最後を締めくくっているように、システムは人が作ったものですから、必ず人の力で変えられるというメッセージで終わっています。近代草創期に多くの人々が持っていたはずの、楽天的な社会観がここにはあります。

 私たち福岡市民にも、これまで人工島の住民投票条例を求める運動、オリンピック招致に反対する運動、国保料を値下げする運動、中3まで医療費無料化を迫る運動などが数々ありました。それらは実現しているものも少なくありません(国保料値下げ、オリンピック不招致、中3までの入院無料化など)。

 福岡市民だって、そのエネルギーは持っているわけです。

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オフなので映画を見ていました。


 イタリア人の経営者たちにムーアが話を聞いているシーンが印象的でした。

 もっと儲けるようにしたらお金が入るよ? と聞くと、呆れたような顔をして、お金をこれ以上もらってどうするのか? という趣旨の反論をしていました。必要な分はすでに手に入れている、と。

 経済成長は必要ですけど、それは成長のための成長を目的としてではありません。私たちが生活をするためのものです。(もともと「経済」とは「経世済民」、つまり世の中をうまく治めて、市民生活を救済する、という意味です。)ましてや「アジアの中でのリーダー都市」になるために成長するわけじゃありません。

 だから私の都市像は「8時間働けば・年金があれば誰でもふつうに暮らせるまち、そのために必要な成長がある都市」なのです。「アジアのリーダー都市」になるかどうかじゃありません。

 

(続く)

*1:ジョセフ・スティグリッツ『世界の99%を貧困にする経済』徳間書店