13日付「しんぶん赤旗」で日本共産党の福岡西部地区委員会の経験が掲載されています。
第29回党大会(2024年1月)比で読者が日刊紙読者4、日曜版18のプラス。
これはなかなかすごいことだと思います。(党員は不明ですが…)
支部レベルで読者陣地を維持しているとか目標を達成したという話は聞きますが、地区ではなかなかありません。
党中央はこうした地区の経験の経験の解像度を抜本的に上げて全体に伝え学ぶようにすべきではないでしょうか。
4月末までが「500万要求対話・党勢拡大・世代的継承の大運動」の期限だったので、明日全国都道府県委員長・書記長会議があるそうですが、そういう方向が打ち出されるように期待します。
私は現在の共産党組織や活動の抜本改革が必要と考えていますが、それとは別に、現在の路線のもとでの活動を激励したり、そこから教訓を汲み取ることを否定するものではありません。現に今の路線や組織体制の下でも、お金や人手は今すぐに必要になるわけで、改革提案がされていないからといって、現場での取り組みを中断するわけにはいかないからです。
もちろん活動にあたって、パワハラなどをしていないというコンプライアンスが前提であることはいうまでもありません。仮にこの地区では「そういうものは一切ない」という前提で話をします。
雑な教訓化では力にならない
「経験交流ニュースなどで伝えている」というかもしれませんが、そういうレベルではなく、県委員会決定・中央決定などに反映すべきだと思うのです。
例えば「要求アンケートが力に」のような教訓化は雑すぎるのです。「うちもやってるんだがな…」という違和感しかないのです。
「月初めに目標を意思統一」のような「教訓」化も、たいがいの組織はやっています。そこから具体化する手立てがどう違うのかを、他の地域の組織は知りたいはずです。そこがない。
余談ですが、昔、党の会議で、ある支部が経験を発言したので、出来ていない問題も含めていろんな角度から私が根掘り葉掘り聞いたら、他の参加者から「ディスってんのかと思った」と言われました。
オンライン交流は1つの精選した経験に絞って
記事では同地区が域内の1つの支部の経験を「堤ヶ丘方式」として学び、広げるようにしていると報じられ、行動の日程調整や「毎週行動」を無理なく行うにはどうしたらいいかなどの概要が書いてあります。
しかし、他の組織からするともっと詳しく知りたいはずです。
党中央はオンラインでの支部経験交流をこの間頻繁に開いていますが、率直に言って、1つの支部が経験を話す時間があまりにも短かく、自分たちが抱える疑問を解決するものになっていないと思います。「いいお話を聞いた」で終わってしまうのです。また、本人たちがどこに教訓のポイントがあったのか分析・自覚化していない組織もあって、「聞いてもよくわからない」ケースも正直いくつかあります。
県や中央として、本当に「これは」と思えるような支部や地区の活動を精選し、1つだけじっくり聞き、質疑応答するような、そしてそれを決定に反映させて経験として広げるようなイニシアチブが党機関には求められているように思います。
私が知りうる限りですが、福岡西部地区委員会は、自身の活動のスタイルにかなり自覚的であり、なぜ達成できたか/なぜできていないか、について、(現在の組織建設路線のもとで)非常に解像度の高い教訓を引き出せるように思います。
教訓化にあたって注意すべきこと
ただ、こうやって経験を広げるやり方は、いくつかの注意が必要です。
第一に、機械的な経験の引き写しになりやすいこと。そうならないようにうまく一般化することこそ、指導部の指導部たるゆえんであって、それができず、「電話で煽って/高圧的に点検する」だけの指導部は指導部とは言えません。
第二に、このタイプの経験は一歩間違うと、地区や支部がマイクロマネジメントに陥り、その過程でハラスメントや無理な押しつけが起こりやすいということ。とにかく、どこの党組織であっても目標と現状との関係では相当な距離があるので、そのギャップを期日内に本気で埋めようとすれば自発性でなく「締める」という形で作用しがちなのです。
29大会決定(田村報告)は、「強化方向」のトップに、支部が自主的に「政策と計画」を作ることを掲げていますが、あくまでそういう方向を堅持しなければならないでしょう。
まず、すべての支部が、「政策と計画」をもち、要求実現の運動にとりくみつつ、党勢拡大の独自追求を進める「車の両輪」の活動に、自覚的にとりくむことです。これを、多数者革命を推進する党づくりの大道として重視しましょう。
残念ながら、“「政策と計画」を支部と討議して足を踏み出し長い時間かかったが多くの支部が発展している”という形での地区・都道府県の活動の報告は、毎日目を皿のようにして赤旗の党活動欄を読んでいるものの、寡聞にして知りません。
第三に、抜本的な路線や組織の改革抜きにはこの方向は持続可能ではないこと。そのことを忘れないことです。
そうはいっても、この方向でずっといけるものではありません。
前から述べているように、中心的な活動家がいなくなってしまえば急にそのエリアの活動は消えてしまいます。サバイバルしているエリアの「教訓」のみがクローズアップされ、「どうして他の地域は火が消えてしまったのか」ということには目が向けられません。「持続可能なやり方ではなかった」という検証ができないのです。そうなるとまさに「生存バイアス」となり、全体はどんどん縮小に向かっているのに、縮小していないところだけを見て「教訓」にしていたら、どうなるかわかりますよね。
余談:「潮目の変化」
明日の全国都道府県委員長・書記長会議の報告はおそらく、「情勢の潮目の変化」が起きているという話が出るでしょう。
この間、常任幹部会をはじめいろんなところで強調されていますから。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-05-02/2025050201_02_0.html
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-04-29/2025042902_02_0.html
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-04-23/2025042303_01_0.html
どういう意味でおっしゃるのかわからないので一概に否定するものではありません。ただ、消費税減税の機運が広がっているということであるなら、そうした「潮目の変化」を共産党への注目・支持に変える意味でも「ワン・イシュー」で認知を広げるための方針を出した方がいいと思います。
これは「ワン・イシュー」で行け、つまり消費税問題以外をやるな、という意味ではありません。
しかし、訴える時間、ビラなどに割ける紙幅、党員が取り組める運動の量は限られています。
その中で「消費税を下げるためにがんばっているのは共産党だな」と思ってもらえるには、割り切った強調が必要になります。アクセントをはっきりさせる提起を求めます。
財源問題は、現在の共産党のビラ(赤旗号外、下図参照)では非常に簡単なものしかありません。「ざっくり大きな方向がわかればよい」「詳細なものを載せてもかえって読まれない」という意見は一応受け入れるとしても、詳細な財源自体は、QRコードで誘導しておくことは最低必要です。
それとともに、「消費税の財源」としてだけでなく、国にあり方を問う問題の入り口として消費税と再分配(財源)を提起する必要があります。つまり生活防衛問題として消費税を下げて、それでお金の辻褄をどう合わせるか、という話として(だけ)ではなく、そもそも税金のあり方、再分配、社会保障が今のような形でいいのか、この機会に政治を大きく変えるべきではないのか、という問題提起です。そういう形でワン・イシューを目立たせながら、全体の問題につなげていく工夫が必要ではないでしょうか。*1
*1:都議選は消費税のことは関連しつつも、地域の問題が最前面に来ることはいうまでもありません。