(大激論)松竹伸幸さんの安保問題での綱領理解をただす

 共産党を除名された松竹伸幸さんとの綱領の理解——日米安保条約についての政策をめぐって激論しています。

 私はこの激論対談を除籍(24年8月6日)前に行いましたが、もちろん規約違反ではありません。なぜなら「松竹さんの安保政策は綱領に違反しているんじゃないんですか?」という立場で論戦を挑みに行ったからです。いわば、党大会決定を率先して実践しに行った共産党で唯一の党員だったといっても過言ではないでしょう。

 党大会決定で松竹さんを批判していますが、実際に松竹さんに直接会って勝負(論戦)を挑みに行った共産党員の方、います? いたら教えてください。

 

www.youtube.com

 1時間もある長い動画なので、先に私が何を問題にしているのか、していないのかを知っていてもらうと聞きやすいかもしれません。

 

 私の話の柱は次の3つです(そして松竹さんもこれにそって回答しています)。

 

(1)論戦を正確にするためにということで確認の質問。「松竹さんはいわゆる安保容認ではなく、民主連合政府において安保条約を廃棄することは求めていて、少なくともそこは共産党と同じですよね?」


(2)「共産党が目指しているのはあくまで民主連合政府だから、安保条約は廃棄以外にはない。国民連合政権や野党連合政権は、選挙管理内閣(国会を解散させて総選挙をすることだけを一致点にした政権)と同じ『さしあたって一致できる政府』でしかないから、その政権はすぐ終わる。つまり超特殊なレアケース。ゆえに安保の存在を前提にした基本政策を中間的に設けることは綱領に反するのではないか」


(3)「松竹さんは『核抜き抑止力』を唱えていて、共産党も『新綱領教室』や第29回大会決議で『軍事同盟のもとでも「核抑止」から抜け出せば条約への参加は可能である』と言っているから、これは『核抑止力抜きの軍事同盟』であり、松竹さんとそっくりな考えで、同じように『核抜き抑止力』だと思ったのかもしれないが、これはあくまで日米地位協定の改善と同じように当面の政策であって、基本政策にはなり得ない。だから『アメリカの核抑止力の発動を放棄させた日米軍事同盟に改革しろ』ということを共産党の基本政策にするのは、やはり綱領に反しているのではないか」

 

もしこれだけじゃわからないという人のために

 上記のポイントを読んでもらっても「わからない」という人へ。

 あー、じゃあ、そこまで今は考えなくてもいいかも、とは思いますが、「何としても知りたい!」という人のために一応。長いな〜と思えば読む必要はありません。

 

 (1)は、さすがに説明不要ですよね。共産党も安保廃棄、松竹さんも安保廃棄。どちらもめざしているということです。はい。

 

 (2)は、安保条約をなくそうという国民の中に合意がまだできないときに、もし共産党が他の野党と政権(暫定政権)を組んだら、安保条約をどうするか、という話です。

 そのときは安保条約を「凍結」する…というのが今の共産党の方針なんですね。

 本来、共産党は「安保条約は危険きわまるものだから、すぐなくすべきだ」という考えです。でもまだそれをなくすという国民の合意がない時に、他に急いでやるべきことあるからという理由*1で政権に入っちゃったら、安保条約については手を触れない——これが「凍結」という意味です。

 例えば共産党が入った暫定政権で、「安保条約を発動すべきだ」という判断が閣内で多数になったとします。そのとき、安保条約を発動しないのではなくて、現状のまま暫定政権が安保条約を発動する、ということを共産党として認める、ということです。

 安保条約をなくす方向に手をつけない、だから「凍結」という表現なのです。

 これに対して、松竹さんは、「その期間、何も手をつけられないのはいかがなものか。じゃあ、その期間は、同盟国・アメリカの核兵器の脅しの力(抑止力)に頼らない、『核抑止抜きの専守防衛』を目指すことにしたらどうか」という提案をしたわけです。

 この提案が綱領に反するかどうか、ということを議論しているわけです。

新幹線から富士山。雲に隠れていました。

 (3)はどういうことでしょうか。

 実は、松竹さんが除名されるより少し前の2022年に、共産党は“核兵器禁止条約を日本が批准するためには、アメリカの核の抑止力から抜け出さないといけない”ということで、党首だった志位和夫さんが次のように言っています。

日米安保条約は「核兵器」に一言も言及していません。他方、核兵器禁止条約にも「軍事同盟」には書かれていません。核兵器禁止条約に明記されているのは、核兵器の使用や威嚇を「援助、奨励、勧誘」しない。つまり「核抑止」から離脱する義務なのです。この義務を履行しさせすれば——「核抑止」「核の傘(拡大抑止)」から離脱しさえすれば、軍事同盟のもとでも核兵器禁止条約に参加することは可能です。(志位和夫『新・綱領教室 2020年改定綱領を踏まえて 下』新日本出版社、2022年、p.34)

 これは「核抑止抜きの軍事同盟」ということです。

 しかもこれは共産党としての政策です。決して、「共産党はイヤだけど、合意になっていないから政権としてイヤイヤやる」政策でもありません。

 あれれれ?…なんと志位さんと松竹さん、そっくりですね。

 

 志位さんは、「ちがう! 全然ちがう!」とおっしゃいます。どこが違うのか。

 共産党は、安保条約のもとでも緊急の改善策をいくつか取ることを認めています。例えば日米地位協定の改善などはその一つです。辺野古の基地建設中止もそうですね。

 同じように、この「核抜き軍事同盟にする」というのも、核兵器禁止条約を批准するための緊急の改善策の一つだというのです。

 これはあくまでも緊急の改善策であって、基本政策ではない! 安保条約は段階的に改革して無くしていくのではなく、即時廃棄しかない! というのが共産党の立場だというわけです。緊急の改善に取り組みながら、安保条約廃棄をめざすことを志位さんは「二重の取り組み」と言っています。

 

「二重の取り組み」とは、念のために言いますと、あくまでも「二重の取り組み」であって、安保条約の「段階的解消」論——「安保条約を解消するためには、いくつかの段階=中間的措置が必要だ」——という立場では決してありません。(志位前掲p.53)

 

 自分のいう「核抑止抜きの軍事同盟」は緊急改善策であって、松竹のいう「核抑止抜きの軍事同盟」は段階的解消論だから綱領違反だ、というのが志位さんの言いたいことです。

 しかし、同盟国アメリカに対して同盟(安保条約)を結んで基地を置かせて使わせたまま、「核兵器は絶対に使わないようにしてください」と約束させる、もしくは日本としては核使用・威嚇に同意を与えたり、勧めたり、助けたりしない…ということを認めさせるのは、かなりの難問です。

 そうとうな大仕事ではないでしょうか。

 

 さて、安保条約廃棄の国民合意がまだできない時に、「核抑止抜きの専守防衛」(核抑止抜きの軍事同盟)を提案した松竹さんは綱領違反と言えるかどうか。これが3つ目に私が問うていることです。

 

 そんなことを念頭に置きながらお聞きください。

*1:例えば企業・団体献金の禁止だけをやる政権をつくる、とか、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回させる政権をつくるとか、ですね。