松竹伸幸さんは日本共産の本部で安保・外交の政策を担当していました。松竹さんの党除名は、私がそれに異論を唱えたために、党幹部ににらまれ、ありもしない「規約違反」の汚名を着せられ、党を追放されるきっかけになった問題です。
私は例えば、共産党が参加する政府(民主連合政府)において安保条約を廃棄すべきだと一貫して訴えてきましたが、松竹さんの主張する政策について賛成している点もあるし、反対している点もあるし、どちらでもない・微妙だなと思っている点もあります。松竹さんのいうことならなんでも賛成とか、松竹さん掲げる主要な政策・政綱はほとんど支持しているとか、そういう立場ではありません。
また、松竹さんは党大会に向けた除名の再審査を求め、除名を撤回してほしいと多くの人に向かって書いたことをもって、党幹部は松竹さんを「党破壊・撹乱」をする人だと呼んでいました。そして、党幹部は私について「党破壊・撹乱」の「同調者」「擁護者」だと党員に宣伝して回りました。
しかし、私はそのような「党破壊・撹乱」などをしたことはありません。その同調や擁護をしたこともありません。
もちろん、私が除籍前に松竹さんと分派を組んだという事実もありません。
つまり私はいかなる意味でも、松竹さんの政策的同調者ではないし、誰かの「党破壊・撹乱」に同調・擁護をしたこともないし、「松竹一派」すなわち松竹さんと一体の分派でもないのです。これらは党幹部が私の罪をでっちあげようとして、1年半も私を「調査」してもひねり出せなかったものです。そんな事実がないからです。
しかし、私は松竹さんの除名には重大な瑕疵があると考えています。
松竹さんの除名理由は4つあり、それぞれにそれが本当に成り立つのか、疑いがあります。日本共産党規約において、「除名は、党の最高の処分であり、もっとも慎重におこなわなくてはならない」(54条)と定められているように、除名の理由に一つでも瑕疵があれば、それは「もっとも慎重におこな」ったとは言えないものであり、処分を見直すべきです。
もともと23年2月の県委員会総会で発言したように、私は4つの除名理由にはそれぞれ根拠がない・疑わしいと思っています。
中でも、松竹さんが「分派」をつくったという話は出版編集者としての打ち合わを「分派」のように見なすなどまじめに相手をするのが馬鹿らしいほどの難癖ですし、松竹さんが党中央に意見をあげなかったことを除名理由にするのは権利を義務と混同した、1グラムも除名理由にはならないものです。
さらに、その後わかったことは、いっそう重大でした。
さまざまありますが特に私がひどいと思ったのは、規約違反があったかどうか、その上で除名処分にすべきかどうかは、他でもない松竹さんが所属していた支部で決めるというのが規約の規定(50条)ですが、地区委員会・京都府委員会はこの規定を踏みにじってその権限を勝手に取り上げて処分を決めてしまいました。支部の指導部は同意していないと証言しています。
規約で「もっとも慎重におこなわなくてはならない」と厳しく定めているものが、穴だらけだったわけで、とてもこのままにしておくわけにはいきません。
私がルール違反をしたのではなく、党幹部が規約を踏みにじる運営をすることによって、まさに党組織を私(わたくし)していると考え、その是正を訴えて裁判に臨んでいます。これこそ、党幹部が自分の気に入らないものを排除するまさに規約3条「意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない」の蹂躙そのものなのです。
松竹さんの問題はまさにこれと共通する問題を是正するものです。
自分とは違う事件ですが、そこに同じ問題を見出したわけです。
したがって、私は、松竹さんとは政策的・政治的な主張に異同はあっても、彼の裁判に連帯し、応援する立場をここで明確に表明したいと思います。
松竹さんの裁判を傍聴して
2024年11月14日に、私は松竹さんの裁判を傍聴しました。
傍聴席は文字通り満席になっていて、廊下で待っている最中に傍聴に駆けつけた皆さんとお話しする機会がありました。そうすると少なくない方が、松竹さんとの自衛隊論や安全保障政策での違い、「慰安婦」問題での解決方向の違いを口にされました。政治的に考えていることがかなり違うという点があるのです。
にもかかわらず、その人たちは、松竹さんの裁判を応援するために傍聴に来ていました。私もまさに同じ気持ちでした。「松竹裁判を応援するのは安保容認だ」「松竹さんの裁判を支援しようとする者は『慰安婦』の反動的解決を目指しているのだ」という一部の意見は、原則的にそもそも間違っていますし、実体的に松竹さんの主張をほとんど読んでいない粗雑な議論です。
(一例ですが、ブログ読者の皆さんは「共産党も参加する民主連合政府において日米安保条約を廃棄する」ことに、松竹さんは賛成しているか反対しているか、答えることができますか?)
答え:
松竹さんは、共産党が参加する民主連合政府で安保条約を廃棄する立場であることを繰り返し本の中で述べています。
私〔松竹さん——引用者注、以下同〕は、第二段階〔民主連合政府で安保条約廃棄の国民合意ができたが自衛隊の解消は国民合意がない段階〕で安保条約が廃棄されることも、第三段階〔民主連合政府で安保条約廃棄も自衛隊解消も国民合意ができた段階〕で自衛隊の解消に取り組むことも支持している。だから、第二段階における党の基本政策が安保条約廃棄であることについても、何の疑いも持っていない。(松竹伸幸『私は共産党員だ! シン・日本共産党宣言Ⅱ』文春新書、2024年、p.113)
私〔松竹さん〕は綱領や大会決定の通り、第二段階で日米安保をなくすことを支持しています。(松竹『不破哲三氏への手紙 日本共産党をあなたが夢見た21世紀型に』宝島新書、2023年、p.122-123)