プロジェクト3:私らしく生きる自由――「町内会とボランティアに支えさせる福祉」から「予算をきちんと配る福祉」へ

続き

 「過去最高の税収」「成長の果実を市民に」といいながら、高島さんは「なんでも税金で解決するのはもう古い」「配る福祉から支える福祉へ」というかけ声で、市立幼稚園の全廃、市営渡船大岳の廃止、そして敬老金の廃止、福祉乗車証の廃止をしてきました。

 「過去最高の税収」「成長の果実を市民に」のはずなのに、おかしくないですか?

 そして、こんどは高齢者乗車券の削減・廃止の検討です。

 いま、その計画への反対運動がもりあがり、署名が約4万筆もつみあがっています。ところが高島さんはこの広がりに驚いたのか「そんなことは現在検討していない」と役人に答弁させました。しかし、実は廃止・削減をシミュレーションした検討をしっかりやっていて、議会でウソをついたかたちになっています。「シミュレーションだから検討じゃない」とか「前は検討していたけど、今この瞬間は検討していない」――とんでもない言い逃れをして議会でウソをつくのは、ご親密な関係にある安倍政権とまったく同じ体質じゃないでしょうか?

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 高齢者乗車券をなくすかわりに考えられているのが、インセンティブ(ごほうび)によるポイント制です。渡すお金をなくして、町内会などの活動をしたらポイントをあげるというのです。高齢者の社会参加と移動権(生存権の一部)を保障する制度を、こんな「住民の中に線引きをもちこんでエサでつる」やり方に置き換えていいのでしょうか。

 さらに、バスなどがこなくなった地域のために、市が車を貸してやるので、町内会や有志で事故のリスクを背負って運転しろという制度もつけようとしています。

 これが市長の言う「(予算を)配る福祉から(町内会やボランティアが)支える福祉へ」の実態です。

 ちょっと考えを反対にしてみてください。

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 高齢者乗車券は今タクシーにも使えるようになって、人気です。タクシーは地元の小さな企業さんが多いし、地元の運転手が多い。高齢者は乗車券のぶん、出歩くようになるし、健康にも環境*1にもいい。お金が他に回せる。そして、地元の企業の仕事も増え、運転手さんの報酬も上がります。

 バスでもいいでしょう。運転手さんを1人雇用して地域でバスを走らせ、若い人の働き口を増やすのと、事故のリスクを背負って地元の高齢者がやむにやまれぬ気持ちで無償ボランティアをするのと、どちらがいいでしょうか。

 

 私は町内会長を5年勤めましたが、市から依頼される仕事の多さにびっくりしました。私がやっていた時、市から地域への依頼は年間1000件にも達していました。

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 町内会の「下請け」化です。負担がどんどん積み増しされ、ますます担い手が少なくなる悪循環にハマっています。もともと町内会は「お隣さん同士の自然な助け合い」の気持ちから生まれたボランティアです。となりのおばあちゃん、最近見ないけど大丈夫かなと思って「おせっかい」にも探して回る……というのが町内会のおおもとにある自然な気持ちです。ポイントがたまるから探すんですか? そうではないですよね。「ポイントで釣って、行政の下請けをさせる」なんていうやり方は、町内会のベースをむしろ壊すものです。

 高齢者の社会参加の権利、移動権を支えることは政治の役割です。町内会やボランティアに丸投げしたり、それに甘えたりすることは、行政の責任放棄ではないでしょうか。

 防災にしろ、社会保障にしろ、公のしっかりした支えがまずないとやっていけません。例えば年金がまともに出ない社会で「家族の助け合い」だけで今生きていけますか? あるいは堤防工事をまともにやっていないのに「近所の助け合い」だけで水害の時に命が守れるでしょうか?

 東京オリンピックをめぐって、ボランティアの美名で無償労働させるやり方に批判の声が上がっていますが、私は高島さんとは逆に、「町内会とボランティアに支えさせる福祉」から「予算をきちんと配る福祉」をすすめます。

 社会保障や防災をしっかりさせ、基本的な人権を守ることは、もともとはその人がその人らしく生きられる、つまり「私らしく生きる自由」のためのものです。憲法13条の言うところの「個人としての尊重」です。

 私はこの福岡市が「私らしく生きる自由」のまちにするために、次の施策にとりくみます。

  • 高齢者乗車券の縮小・廃止計画はただちにストップし、対象年齢・金額などを拡充します。一度選んだら、乗り物を限定されてしまう現在の方式を改善し、タクシーにもバスにも地下鉄にも使えるようにします。
  • 大手事業者に生活交通の確保を義務づけるよう生活交通条例を改正します。公的な責任で必要な地域にコミュニティバスを走らせます。減便・廃止・無人化は住民の立場で西鉄やJRに是正を要求し、必要なバス便などの確保も市長として求めます。
  • 特別養護老人ホームを増設し、入れない人を計画的になくしていきます。
  • 障がい者差別解消条例を改正し、すべての人に差別的取扱いを禁じ、事業者にも合理的配慮の提供を義務づけます。福祉乗車証を存続・拡充します。
  • 性的少数者のためのパートナーシップ条例をつくります。
  • 外国から来た人を『もうけ相手』『安い労働力』とだけみるやり方をやめ、多文化共生社会推進計画をつくり、特に労働相談の充実、コミュニティ参加への支援をすすめます。また、ヘイトスピーチを許さない市の姿勢を明確にし、条例制定も視野に必要な対策をとります。
  • 専門職員のいる児童館の新設へ踏み出します。
  • 不足している800席程度の中規模の劇場型文化ホールを増やすように県とも連携し検討を開始します。
  • 防災を「自助・共助」まかせにせず、県・国とも協力して、河川改修・土砂災害対策、住宅の耐震助成の充実などを市として積極的にすすめます。市として避難の誘導に積極的な役割を果たします。
  • 福祉や防災を町内会・PTAなどに丸投げ・下請けさせたり、要綱できつくしばったり、推薦の仕事を押しつけたりする「ボランティア地獄」をなくし地域活動の負担を大幅に減らします。もちろん真に自主的な活動は大いに応援します。

続くkamiyatakayuki.hatenadiary.jp

 

*1:高齢者乗車券の多くは地下鉄・バスなどの公共交通なので環境効果がある。高齢者乗車券の経済効果・環境効果・健康効果は福岡市も議会答弁で認めている(2017年10月23日)。