プロジェクト2:99%を占める中小企業、特に小規模企業にお金を回す

 

 

続き

 福岡市の企業のうち99.1%(企業数)は中小企業で、6割が小規模企業(零細業者)*1です。ここにちゃんとした金額・価格での仕事が回ることで、広く市民にもお金が回ります。特に市が発注している金額は約1000億円*2ものぼり、この流れを変えれば、市経済を大きく動かせます。

 森靖雄氏(元日本福祉大教授)は、100万円を地元商店に投じた場合と東京に本部がある大型店に投じた場合、前者は雇用も利益も地元で回るために1年間で2400万円の地元効果があるのに対し、後者では本部に大半が引き揚げられるので120万円の効果しかないというモデルを示しています。*3

 中小企業振興条例で地元の小規模企業への配慮や発注をするように定めているのに、髙島市政は、市の契約のうちどれだけを小規模企業に発注しているのか、調べもしていません。

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 高島さんの経済政策っていうのは、結局こういう地元の小さな企業、つまり「まちにある、ふつうのお店や業者さん」に仕事を回し、お金を循環させる取り組みがとても乏しいんですよね。

 たとえば観光。たしかに高島さんになって外国人観光客がふえました。経済も成長してますよね。だけど市民にお金が回ってこないというのは、さっき見たとおりです。不思議ですよね。「まちにある、ふつうのお店や業者さん」を素通りしていってしまうんです。つい最近までは「爆買い」ブームでしたが、あれも結局外資が組んだツアーで、東京に本社のある大手資本の系列の店で、やはり東京の大手資本の化粧品や日用品を買って帰るビジネスモデルでした。

 だから、クルーズ船を着岸する岸壁をバンバンつくって、ホテルをガンガン建てて、バスをどんどんチャーターし、安上がりの民泊をじゃんじゃん進めるという「とにかく量だけ呼び込み、大型開発や規制緩和の口実にする」というやり方になってしまう。

 地域にお金を循環させて地元や市民が潤うという知恵がないわけです。また、観光としても持続可能じゃない。

 このことをふまえて、私は次の施策をすすめます。

  • 投じた金額の16倍の地元効果がある*4、住宅リフォームへの助成制度をつくります。
  • 市からの発注などでの賃金水準を時給1500円以上(公共工事は設計労務単価通り)確保する公契約条例をつくります。設計労務単価が下請まで適正に払われているか、市として調査・指導を行います。
  • 小さな地元業者でも市の仕事を受けられる「小規模事業者登録制度」は請願が採択されながら長い間たなざらしとなっており、すぐスタートさせます。
  • 中小企業振興条例4条にもとづいて悉皆調査など「中小企業者の実態の把握」ができるよう市の中小業者担当部門を強化します。相談員に銀行OBなどを安易に配置せず、中小業者の立場にたつ行政に変えます。
  • 国連家族農業10年にふさわしく、大手だけでなく多様な担い手や「農・漁」にかかわりたい人を応援し、新規就農・漁への市独自の支援を充実します。
  • 原発ゼロを前提にして、再生可能エネルギーの普及目標を2030年に全市の電力消費量の8%という消極的な目標から、まず他の先進政令市と同じ20%に引き上げます(国の目標も20%前後です)。特に風力・省エネの促進について計画・目標をもちます。玄海原発の再稼動は認めず、同意権をふくむ立地自治体なみの協定を九電に求めます。
  • 2019年10月からの消費税の10%引き上げに反対します。小規模事業者の負担が増え、発行できない事業者や免税業者が取引から締め出されるおそれがあるインボイス(適格請求書)導入に反対します。
  • 大型開発や規制緩和で無尽蔵に人を呼び込む観光政策を改め、地域の商店や小規模企業にお金が回る、身の丈にあった観光行政に切り替えます。違法民泊をなくし、住環境を守るための民泊の規制条例をつくります。「住んでよし・訪れてよし」を基本にした観光にすれば、「コト消費」にもつながるし、「福岡ファン」も増やせるし、観光客も地元住民もハッピーな、長くつづけていくことのできる観光になります。

 

防災のための身近な工事を増やす

  • 保育園・特養ホーム・市営住宅など暮らしに身近な公共事業を思い切ってふやします。これらをふやすことで、入れなくて困っている人たちのためにもなります。

 災害対策でのメンテナンスのための身近な公共事業・民間工事は、地元の小さな業者が請けやすいうえに、雇用効果が高く(100〜1000万円規模の工事では100万円あたりの就労者数は1〜5億円規模の工事の6倍*5)、しかも市民のために対策が急がれるものです。

 福岡市の大型開発の典型・人工島の岸壁改良工事だと地元小規模企業への発注はゼロ、下請けまで含めても8%しかありません。他方、学校改修事業でみると、地場の小規模企業への発注は95%になります。*6

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 身近な公共事業こそ、地場の小規模企業に発注されます。

  たとえば、市がとった市民アンケートでは、災害時に一番不安に市民が感じるのは水道などのライフラインの確保なのですが、福岡市ではまだ水道配水管の4割が耐震化されていません。透析などが必要な病院へのラインも後回しにされています。近年の災害を見れば非常に心配です。私は、この耐震化を現状の2割増しのスピードで急がせます。

 災害対策のなかでも、通学路のそばにある800件もの危険なブロック塀の撤去は急がれます。現在民間の危険ブロック塀の撤去の補助はあるのですが、対象がせまいうえに、補助額が少なく年間の利用はたった5件です。

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 私は初年度に補助額と対象を抜本的に増額し、特に通学路については特別の体制で危険ブロック塀をゼロにするプロジェクトをおこないます。これにより40万円(撤去20万円・フェンス新設20万円)×800件=3億2000万円の民間への仕事をすぐに起します。

続くkamiyatakayuki.hatenadiary.jp

*1:中小企業基本法第2条5項「この法律において『小規模企業者』とは、おおむね常時使用する従業員の数が二十人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、五人)以下の事業者をいう。」

*2:官公需契約実績。

*3:森靖雄『中小企業が日本経済を救う』(大月書店、2004)。

*4:公益社団法人福岡県自治体問題研究所・県政研究会、2013年度調査。

*5:建築着工統計調査2016年度。

*6:人工島は2017年度博多港中央埠頭地区岸壁改良工事における請負状況。学校改修は2017年度南区の学校改修事業。いずれも福岡市財政局契約監理課資料。