山下報告を読む/地方議員を大切にしてあげて

 日本共産党の全国都道府県委員長会議が行われ、山下芳生副委員長が報告しました。

www.jcp.or.jp

 

党組織の1、2割しか動いていない深刻な状況

 第一印象として、本当に党組織が動いていない、と感じました。

入党を働きかけた支部は1割に届いていません。党員拡大がほとんど「止まった状態」から脱していないことに、現在の運動の最大の問題点があります。

二つの『Q&A』(「赤本」・「青本」)の学習は、2割を超える支部で始まり…なお多数の支部ではこの運動がはじまっておらず、全党的な学習運動にしていくための努力の抜本的強化が必要です。

 「集中期間」として党を挙げて取り組んでいるのに、その項目で取り組んでいる支部は1割、2割という深刻な状況です。特に、鐘や太鼓で大宣伝してきた志位和夫議長の本(「赤本」「青本」)の学習は、全党員が読了を目指すのではなく、とりあえず支部で学習を「始める」だけでいいのに、22.8%しかないのです。*1

 以前、「党内離党」という話をしましたが、「動いていない」というより、組織方針についていけずに、大量の「静かな戦線離脱」が起きている状態ではないでしょうか。

 党内にいる人に話を聞くと、反論や異議を唱えれば、激しい論難をされ、場合によっては「話し合い」という名前で呼び出しを受け、こんこんと問い詰められるので、そんなコストをかけたくない人は「用事が」「体調が」ということで活動の現場を離れていっていると聞いています。

 「1、2割しか動かない時は過去もあった」と言うかもしれませんが、もしそうだとしても、そんなことが繰り返されている自体が重大です。方針としての体をなしていません。前から述べているように、やはり臨時の党大会を開いてこのままでいいのかを真剣に全党で討議すべきだと改めて思います。

 

「生きた目標」にするためにどう政治討議をすればいいのかわからない

 山下報告はそんな抜本的見直しは拒んで、方針が全く貫徹していかないこの状況を現状の方針を前提に打開しようとします。「活動のどこに弱点があるか。どう突破すべきか」としてこの会議での討論すべきポイントを3点示しました。

 しかし、私から見るとどれも困惑してしまうものばかりです。少し見てみます。

 山下報告があげる「第一」は「『集中期間』の目標が、生きた目標になっているか、目標を本気でやりぬく構えがつくられているか、という問題」です。

 この提起は10月3日に小池晃推進本部長(書記局長)が行っていますが、それが「十分できていない」と山下報告では述べています。

「本音をぶつけ、率直に、徹底的に」

「決意を固めあい」

「最大の原因は…成功させる構えと決意を固めきれていない」

「どうやりぬくかまで決意を固めあう、徹底した議論が十分でない」

「何度でも繰り返し議論すべき」

 頭がクラクラするような表現が繰り返し出てきますが、「決意を固めあう」討議、「徹底した」討議、「生きた目標」にするための討議とは果たしてどのような討議なのかは書かれていません。現場はまじめにやっていて本当に苦労しています。しかし組織は動かない。どうすればいいのかわからないので、その方針がほしいと心の底から思っているのですが、中身を示さずに「決意を固めあう」討議、「徹底した」討議、「生きた目標」にするための討議をしろ、できるまで何度でもしろ、というのは、まるで判じ物のようです。

 しかし、今回注目すべき点として、中央として現場の17地区委員会に入って「問題点をつかむ」、それだけでなく「ともに党員拡大で突破する援助」まで行ったということが述べられています。

 ここで何かヒントが述べられるのかな…?

 と思って、報告に耳を澄ませます。

援助をつうじて私たちが感じたことの一つは、地区常任委員会で政治討議*2の時間が十分取れない状況が広くある、ということです。

 キターッ!

専従者が少なく議員活動などで忙しい同志が多いなどの事情から、短時間の会議となり、課題の確認が中心になるなど、会議運営に苦労している状況がありました。しかし、こうした実情があるからこそ、やっぱり政治討議が大事なのではないでしょうか。「集中期間」の目標を生きた目標とするための真剣な討議がされてこそ、機関メンバー一人ひとりのもつ力が発揮されるのではないでしょうか。

 …終わりです。え? これだけ…?

 “政治討議が忙してくできていないようだけど、やっぱり政治討議が大事だ”——これが17地区に入って中央が得た処方箋なのでしょうか。「決意を固めあう」討議、「徹底した」討議、「生きた目標」にするための討議がどうすればできるのかは依然として、わからないままです。

 ちなみに、赤旗の報道では山下副委員長は討論のまとめで、都道府県委員長会議の結果「決意を固めあった」そうなので、その「秘伝」は、各県に無事持ち帰られたのだろうとは思いますが…。

 

 

支部を党員拡大に「起こす」ために立ちはだかる二つの困難

 山下報告があげる「第二」は「党機関が、『実践で突破する』というイニシアチブを発揮できているか」という問題です。

 「実践で突破」というのは一見「党機関自身が、党員拡大や読者拡大の先頭に立って増やすこと」のように思われるが、それだけでなく、「支部が入党の働きかけに踏み出すことに“つなげる”」ことだ、として、山下報告はそのポイントを

なにより重要なことは、支部から出される世代的継承を中軸とした党員拡大への“ためらい”や“あきらめ”を克服し、一つひとつの支部を党員拡大に“起こしていく”こと

だと述べます。

 私は、今の路線を前提にするなら、福岡県での実践を見ていた限りでは、この教訓はそれなりに効果的なものだと言えます。私が除籍される前の実践ですが、地区の副委員長も兼ねていた地方議員が、自分の担当エリアの支部の一つひとつを回って「支部から出される世代的継承を中軸とした党員拡大への“ためらい”や“あきらめ”を克服」する議論をやって、党員拡大のための「つどい」をセッティングして、そのためのビラも作って党員を実際に拡大していました。

 ただ、それをやるには、さらに解像度をあげてみると、次のような困難があることがわかってくると思います。

 一つは、支部を回って掘り起こしていくための役員、前述のケースでは、地区の副委員長である議員のようなキーマンの存在がどうしても必要です。しかし、それがいない地区委員会が少なくないのです。起点となって動ける人が、地区委員長一人しかいない場合、常任委員会会議や地区委員会総会でまず議論して動ける人を広げようとしますが、その討議がうまくいかないのです。

 もう一つは、党員拡大だけに集中すればなんとか取り組みは始まりますが、読者拡大も、「赤本」「青本」学習も、それ以外にあれも・これもとなれば、とてもできるものではありません。課題が多すぎます。「議員活動などで忙しい」「課題の確認が中心」ということになってしまうのです。

 この突破は前の教訓に立ち返って立派な「政治討議」をすればうまくいくのでしょうか。政治情勢と共産党に役割は活発に討議できても、党建設の話になるとみんな黙ってしまう、ということが繰り返されているもとでは、一体どうしたらいいのかわからない、というのが現場の率直な気持ちではないかと思います。

 

 ちなみにこの「第二」の教訓は「実践での突破」ではなく、より正確には「支部が入党の働きかけに踏み出すことに“つなげる”」というふうに表現した方がいい教訓だと思います(そしてその中身は「支部から出される世代的継承を中軸とした党員拡大への“ためらい”や“あきらめ”を克服」することです)。

 中央は「実践で突破」をずっと言ってきたんだ、と山下報告には書いてありますが、うーん、これを「実践で突破」という言葉でまとめられるものなんですかね。むしろ「実践で突破」という方針の解像度の低さが実践的に突破されて破綻したということではないかと思いました。もちろん、それは実践で検証されたことですから、民主集中制の一つの大事な効果ではあると思いますが。

 そして、「今頃そこなんですか…?」という驚きもあります。

 

マイクロマネジメントに陥っていないか

 そして、山下報告があげる「第三」は「『集中期間』らしい臨戦態勢がとられているかどうかという問題」です。

 一言で言って、やることを微細に管理して現場に押しつけて、それで緻密な指導をしたつもりになるという、「マイクロマネジメント」の典型です。

支部でいえば、毎週支部会議を開くことを軸にして、要求対話や署名、宣伝などにうってでて、日々「つながり名簿」が更新される。『Q&A』の学習計画をたて毎週学習にとりくむ。すべての同志に6中総を届け読んでもらう働きかけを行う。毎週入党や購読の働きかけをどうするかを具体化し、党勢拡大の集中行動の頻度を増やす――こういう毎週毎週の活動に入ることではないでしょうか。「党生活確立の3原則」、新入党員の声が生きる活動も大切ではないでしょうか。

 さっきも述べたように、支部はこんなに一度にやる力や時間がないのです。

 「打開のための手だてを日々打って」と山下報告で述べているように、これを毎日点検されるのでは、支部はたまったものではないでしょう。

 地区はさらに微細です。

 党機関はどうか。何よりも全支部と連絡をとりあい、全支部がたちあがる援助をできる臨戦態勢をとることです。そのためには、党機関は日々うちあわせし、どの支部にどう援助するのか、弱点があればどう打開するのかの相談・検討が必要です。目標を本気でやりぬこうとすれば、地区内で日々購読や入党の働きかけを組織し、計画も次々入っていく、ニュースもLINEなども使ってどんどん出していくような運動が必要です。そのための臨時の機関体制もいります。

 また地方議員・予定候補者が自らの目標をもって総決起するとともに、自治体・行政区ごとの地方議員と支部指導部での意思統一も行う必要があります。そのためにも、12月に第1次発表を行う予定の統一地方選挙の候補者を急いで決め、「集中期間」の飛躍のバネにしていくことを訴えたいと思います。

 これは特別の態勢のために必要なことであって、これ以外に、配達や集金など絶対に外せない日常的な業務が山のようにあるのが地区委員会です。*3

 今の路線を前提にするならば、私がみている限りでは、このような課題を全てでないにしろ、一定程度こなせるには、「地区委員会」の「地区委員」(大半は専従者ではない一般の会社員・自営業者やリタイアの人。20〜30人くらい)が活動家として積極的に動くレベルに達しているようにするのが原則です。しかし、このような地区委員のレベルアップは全ての地区ができているわけではないし、今から短期日にはできないのです。

 現実的なのは、地方議員を動かすことです

 地区に平均して4〜5人いる地方議員が地区役員を兼ねていることが多く、彼らが集団として結束してこの課題をやるということになります。しかし、「専従者が少なく議員活動などで忙しい同志が多いなどの事情から、短時間の会議となり、課題の確認が中心になるなど、会議運営に苦労している状況」になってしまっているのです。それは「政治討議」に成功すればうまくいくのか、よくわからないのです。そして、仮にうまくいくとしても、どうすれば「政治討議」が成功するのかは、山下報告には書かれていません。

 仮に議論がうまくいって、地方議員を中心に動き出したとしても、ここまで微細に管理する必要はないように思います。それは「必要な手立てを打つ」のではなく、現場を信用せずに管理強化をしていることになりませんか。支部が生き生きと活動できるように地方議員にのびのびと活動してもらうことのほうがはるかに重要です。

 

問題を解決するための必要な解明がない山下報告

 結局、

  • 地区機関が「集中期間」に必要な活動をするためには、地区役員を兼ねる地方議員を動かすことが鍵だが、「政治討議」でうまく動く保障はないし、どうすれば「政治討議」が成功するかもよくわからない。
  • 仮に地区役員がうまく支部に入って指導できるようになっても、支部は党員拡大だけでなく、読者拡大も、志位本の学習も、そして、さまざまな諸課題も一度にやることはできそうにもない。

という点で、山下報告は問題に対する必要な解明ができていないということではないでしょうか。

 本論はここまでです。あとは余談です。

 

余談:外国の党をモデルにする前に

 山下報告では、欧米の社会主義政党の成功例が紹介され、あまり大した留保もなく、そのままモデルにするように提起されています。

 コービンの党、ドイツ左翼党、DSAが党員を増やしているというわけですが、それらの党の体質・文化が、日本共産党と違っていることは無視して良いのか、という問題があります。

 「分派の禁止を中心にした民主集中制の原則がない」という党、「既成の左派政党への失望が広がり、その追放者がつくった」という党が党勢を拡大しているのだとしたら、そうした党の体質は見直さなくていいのか、ということが俎上に上ってしまうのです。

 

余談2:地方議員を大切するための岡嵜論文

 共産党の岡嵜郁子自治体局長が「議会と自治体」誌の11月号で「六中総で、なぜ地方議員団活動が重視されたのか」という論文を書いています。

 今回の山下報告でも示された通り、地区・県の役員を兼ねていることが多い地方議員の活動は、「集中期間」にとっても、あるいはもっと大きく共産党の今後を牽引していく上でもカナメになっています。

 29大会の4中総・6中総では、地方議員は党の自力の中核と規定され、岡嵜論文でもこの規定が強調されています。

 私が裁判に勝って党に戻って党の立て直しをしていく際に、地方議員は中心的な役割を発揮してもらうだろうと思います。 だから、安易に使い潰すようなことは避けて、岡嵜論文にあるように、

  • 議員の悩みに応える親身な相談
  • 議員団会議をしっかりともち、議員団活動の前進を
  • 学習を中心とした議員(団)の質的強化を
  • 地方議員こそ「集中期間」で学習・交流を

などに務め、地方議員を大切にするようにしてほしいと思います。

 特に新人議員については、「新人議員が求めている援助とは」に書かれている諸点に応えていってほしいと思います。

 

「議会と自治体」2025年11月号/岡嵜郁子「六中総で、なぜ地方議員団活動が重視されたのか」p.11

*1:月末に福岡県委員会が出している日々の推進ニュースを見たら、機関紙(しんぶん赤旗)読者の拡大のことばかりだったので、読者拡大に取り組んでいる支部はもっと多いのだろうと思います。

*2:「政治討議」とは、今の日本と世界の政治状況を話し合い、日本共産党の役割がどこにあるのかを議論することです。高市政権がいろんな国民を苦しめているから、今こそ共産党は広く共同を呼びかける時だ、とか。

*3:「だから臨時の機関体制を組むんだ(リタイアした人などを特別に活動に引き込むこと)」というかもしれませんが、それを探して頼むだけでも大変な手間暇がかかるので、それだけでいろんな課題がストップしてしまうのです。