(続き)
市民が貧しくなっている大きな原因に、年金暮らしになった高齢者が増え、しかも一人暮らしになっていることがあげられます。福岡市で高齢単身世帯はこの10年で2倍近くになっています。*1そして、就職氷河期を体験したいわゆる「ロスジェネ」世代までを含め、若い人の単身世帯も多く*2、非正規も増え*3、今や福岡市の半分が「一人暮らし」、単身世帯です。*4
なのに、非正規の若い人はそもそも福岡市では市営住宅から厳しく排除されています。年金暮らしの高齢者は「例外」扱いで、高齢者でも入れる賃貸として用意されているセーフティネットの登録住宅は福岡市ではゼロ件です。*5市営住宅の管理戸数はへり、新設はゼロのまま。*6そして今後も増やす計画はありません。
いまの政治は、重すぎるローンを必死で組み、自分の力で市場から持ち家を手に入れることのみを中心にしています。ローンを払い終えた持ち家に年金暮らしで高齢者が住む――こういうタテマエで組み立てられた国と市の政策は、世の中の変化にいよいよ機能不全になっています。髙島市政はそこに手立てをとっていないのです。
- 年金生活の一人暮らしの高齢者が住めるような民間アパート借上の市営住宅を増やします。そして、非正規で独身の若い人たちのために、民間アパートへの家賃補助をはじめます。必要に応じて、市営住宅そのものも増やします。
住まいは人権であり、社会が本来支えるべきもの――すべての人に公的な住宅か、住宅の手当が出るしくみへと政治を変えていく、第一歩にします。
AI(人工知能)やIT(情報技術)が発達し、もうけ本位に使われると深刻な失業が起きかねないとされて、すべての人に最低限度の所得を保障する「ベーシックインカム」が注目されています。もし「健康で文化的な最低限度の生活」がすべての人に無条件で保障される社会になれば、たしかに労働時間も短くなり、新しい技術もどんどん入れられます。しかし、ベーシックインカムを本当に取り入れるには、財源をどうするか、これまでの社会保障制度をどうするか、など解決すべき課題がたくさんあります。だから今すぐには導入は難しいと思います。
ですが、まず住宅を社会で支えることは、多くの人が一致できるんじゃないでしょうか。特に、低所得の人たちに公的な住宅を保障したり、家賃補助をしたりすることは。これを私は「福岡式ベーシックインカム(の第一歩)*7」と呼びたいと思うのです。本当は国が考えること、やることだけど、私はまず第一歩をこの福岡から発信していきたいのです。
そうすれば、その家賃の分だけ、お金が自由になります。
中・低所得の人たちの消費性向は大きい、つまり生活費としてお金を使いやすいので、個人消費もさかんになり、お店の売上げも上がるでしょう。
家賃補助や民間住宅借上は、一人暮らしの高齢者や独身の非正規の若い人たちの貧困をやわらげながら、同時に、経済の果実を確実に市民に回し、地域の経済を元気にする策ではないでしょうか。さらに、空き家の解消にもなるという、何重にもおトクな政策です。そして、その道は、AI時代にもそなえられる、新しい社会保障――ベーシックインカムへとつなげることも可能です。
子育て世代の教育費を軽減する
低所得層だけでなく、中間層もふくめ、子育て世代にとっては、住居費とならんでキツいのは教育費です。
九州大学に入るのには初年度だけで81万7800円、福岡大学(理工)なら164万6710円も必要です。
なぜ大学に入るのに何百万円も用意しないといけないのか。そのために進学をあきらめる、大幅に進路を変える人も少なくなりません。
たとえ入れたとしても、「奨学金」という名のローンを組まされ、社会人になる門出で何百万円もの借金を背負う――こんな社会は異常です。
私は、学生時代から学生自治会運動にとりくみ、その全国の連合体である「全日本学生自治会総連合(全学連)」の委員長をしてきました。そのころから、学費値下げ、とくに大学教育の無償化の運動をやってきました。2012年にようやく日本政府がその無償化の条約を受け入れたとき感慨はひとしおでした。
しかし、その負担はいっこうに軽くなりません。政治がその実施を遅らせてきたからです。私にも小学生の娘がいます。この子がもし大学に行くとなったとき、果たしてお金の心配をせずに大学に行けるのか? 自分は大学で多くのものを学んだのに、娘には「お金がないから我慢してくれ」「数百万円の借金を背負ってくれ」と言うのか――子育て層の一人として、人ごとではない話です。
私は教育費の負担を軽くするために、以下の施策をすすめます。
- 大学進学のための市独自の給付制奨学金をつくります。
- 学校給食への助成をはじめ、無料化をめざします。
- 就学援助の切り下げを元に戻し、充実をはかります。
- 国の施策とあわせ、保育園・幼稚園の無償化をすすめます。
市民の暮らしを直接支援
そして、同じように、市民の暮らしを直接支援する以下の施策をすすめます。
- 高すぎる国民健康保険料を引き下げ、負担を軽減します。
- 介護保険料・利用料の負担を軽減します。
- 就学前・小学生の自己負担をなくし、中学3年生まで医療費を入院だけでなく通院も完全に無料にします。
- 生活保護を必要な人は誰でもうけられるよう市の運用を改善するとともに、生活保障法への改正を国に求めます。また、下水道料の使用減免の復活や夏季手当をつくります。
- 最低賃金をただちに時給1000円にするよう国にもとめ、時給1500円の実現をめざします。中小企業には社会保険料負担の軽減などをあわせて実施するよう求めます。
- 認可保育園を抜本的にふやし、保育園に入れない子どもをなくします。
- 保育士・学童保育支援員・介護職など福祉職員の待遇改善のために家賃補助制度の拡充をはじめ市独自の支援制度を広げます。
- 「ブラック企業根絶条例」を制定し、全市あげてとりくみます。特に市として調査・相談・啓発に積極的にとりくみます。
ブラック企業問題は、残業代未払いや「いきなり首切り」など、その多くが、今ある法律さえ無視したものです。最近でも、ある有名菓子店でバイトした学生が、賃金の15分単位での切り捨て、着替え時間の未払い、有休分の未払いを解決して23万円を勝ち取った事例を労組のニュースで見ました。*8相談やサポートを受け、ルール通りにきちんとやる――これだけでも大きな違いがあります。
髙島さんは、「史上最高の税収」と誇っているのに、結局その果実は市民に回ってないのではないか。私はそうした税収を生かしこれらの施策のうち初年度まず10億円分(家賃補助、奨学金、子ども医療費助成など)を新たにスタートさせます。財源は財政調整基金の活用、人工島関連事業の削減などでまかないます。「ロープウエーより高齢者乗車券を」「ロープウエーより暮らし・福祉を」の声に応え、大型開発のムダをなくし、市民の暮らし応援に回します。1%の大企業や大金持ちのためでなく、99%の市民が豊かになる政治に切り替えます。
(続く)kamiyatakayuki.hatenadiary.jp
*3:就業構造基本調査。2007年度と2017年度の比較。
*5:福岡市議会2018年9月10日住宅都市局長答弁。
*6:「福岡市住宅確保要配慮者賃貸住宅供給促進計画」(素案)。
*7:ベーシックインカムは一般的には用途を限定しない最低生計費の現金給付とされているが、ここでは「健康で文化的な最低限度の生活」を営むための保障と考え、全ての人がかかわる住宅などを社会保障とすることで、住宅の固定費分などが削減され、自由に使えるものと考え、ベーシックインカムの一種、もしくはその橋渡しをするものだとみなした。専門家や社会運動の中にはベーシックインカムが先か、従来の社会保障制度の充実が先かという論争があるが、従来の社会保障制度を充実させながら、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、ベーシックインカムを展望できるようにした。