架空討論(5)市営住宅建設は「いかがなものか」?

 引き続き、高島市長の記者会見をもとにした架空討論会を勝手にやってます。

 今回は、市営住宅や家賃補助のことですね。

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 はいはい。出ましたね。

 私の方が問題を投げかけている分野です。

 市長はどういっているか。

―対立陣営からは公営住宅などセーフティーネットをもう少し強化していいんじゃないか、という指摘もある―

 高齢社会に向かってどのように高齢者の住宅を確保していくのか。入院から在宅へという流れの中で、地域で安心して暮らしていけるのかという課題は、日本全体にとって非常に大きな課題だと認識しています。人口が減っていく街であっても、増えていく街であっても、問題は変わらないと思うんです。

 そのうえで福岡市はどういう事に取り組んでいるかというと、一つは民間の賃貸住宅などを借りていく。福岡は新築志向が非常に強い土地ですので、意外と、築何年の住宅が空きがあったりという事もある訳です。

 こうした空き部屋を活用していくのは非常に大事で。こうしたアセット(資産)があるにもかかわらず、市が別の形で住宅を建築するのは、行政の最適化からしてもいかがなものか。

 民間の皆さんにとって、どういう形であれば、例えば低所得者の方とか、高齢者の方を受け入れやすいのか。やはり保証の仕組みが大事になってくる訳です。ですから、福岡市社協と一緒になって、民間の皆さんと、高齢者が住み替えを促進できるような協定を結んだり。そういうかなり先進的な取り組みをしてきている。

  昔は賃貸→持ち家という「はしご」を登らせるように政策誘導がありました。

 結婚して家族ができ持ち家を持って「一人前」だとするような風潮。

 こういう政策イデオロギーはそのままで、お年寄りになっても、ずっと賃貸に住んでいる人は結構増えてきたんですよね。

 そうなるとパートナーが死んだり離婚したりして、一人暮らしになって、年金が1人分しかなくて非常に苦しくなってきます。

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 しかし、一人暮らしできるようなアパートが今度は見つかりません。

 昔は古い木造賃貸アパート、いわゆる「木賃」があったんですが、どんどんなくなっている。新しいアパートは家賃も高いのです。

 そして、大家が入れたがらない。

 だから、国も住宅セーフティネット法を作って、そういう住宅の確保に「要配慮」をしなきゃいけない高齢者などをなんとかマッチングさせて住宅を確保しようとしています。

 

民間頼みではうまくいかない

 しかし、民間だのみではどうなるのか。

 このセーフティネット住宅に登録してくれる住宅がものすごく少ない。

 2018年11月現在で福岡市ではゼロです。

 市長の宣伝とは裏腹に全く機能していないんですね。そういう現実を市長は見ていないと思います。

 

 福岡市の住宅審議会が開かれていて、第4回(2018年8月23日)の議事録が興味深い。登録が全然進んでいないことについて、当の大家さんたちの利害を代表する団体(宅建協会)はどう考えているかが書かれています。「委員」が宅建協会の人ですね。

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/30913/1/01giziroku_04.pdf?20181011160140

●副会長:私たちはフォローが必要な人達の観点で議論していますが、セーフティネット住宅として住宅を提供していただくことが前提となっています。宅建協会でこの議論についてどのように考えておられるのでしょうか。もっと考えるべき点を出していただいた方がいいのではないでしょうか。セーフティネット住宅の登録がなかったということになると、根底が崩れてしまうと思います。

●委員:よくわかります。貸す側になって考えた場合、どのような方に貸したいかということが重要です。耐震改修や間取り変更にどれだけお金が必要でしょうか。それだけの金額はなかなか取り返せません。そこまでして貸す必要はないと考える大家さんもかなりいると思います。さらに、居住者が亡くなった場合の心理的瑕疵の問題がありますので、前回申し上げました通り、居住者の死亡に関する報告義務の期間を定めるなど、その辺を明確にしていただきたいと思います。……

●副会長:……宅建協会の中でもセーフティネット住宅の取り組みについて是非とも議論していただいて、意見をまとめていただいてはいかがでしょうか。国も推奨しており、市としても住宅に困窮しておられる方の救済策として、一所懸命取り組もうとしている問題です。

●委員:ご意見はわかりますが、非常に難しい問題であります。入居者に対して経過の報告を(ママ)が必要になりますし、大家の説得が必要になることも考えられます。我々も大家の立場で住宅をお貸ししています。そこに法的な問題を入れてこられると、にっちもさっちも動けなくなってしまう恐れがあり、そこについてはご理解いただけないかと思います。

 

 要するに大家としては、慈善事業ではないのでリスクはとれない。福祉的な事業を大家の善意でやるのは限界がある、と言っているわけです。

 それで現に登録がゼロなわけですから、民間任せ・民間頼みでマッチングをしていてもダメなわけです。

 じゃあ、市営住宅を新しく作るか、もしくは市が民間アパートを借り上げて市営住宅のようにして安く高齢者を入居させるしかないわけですよ。

 ロープウエーとか作っている場合じゃない。

 

 セーフティネット登録だけに頼っているやり方だと、家賃補助も始まって行きません。

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 高島市長の反論をお待ちしています。(このオチ、書いていてだんだん虚しい)