単身高齢女性の貧困

 「女性のひろば」2022年2月号を読みました。

 ここで注目したのは、「一人暮らし高齢女性 2人に1人が貧困の衝撃」です。

 この特集では、貧困率相対的貧困率)の年齢層別・性別のグラフが載っていますが、高齢女性になるとぐんぐん上がっていきます。65歳以上は25%近くになります。

 さらに、これを単身者・夫婦のみ…など世帯タイプ別・性別に見ると女性の単身では相対的貧困に陥っている世帯は46.1%におよびます。

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「女性のひろば」2022年2月号

 私が福岡市長選挙で取り上げた問題で、福岡市では年収300万円以下の世帯を「低所得世帯」としているのですが、それは4割台の多さです。

 おそらく、その中でも、高齢者の単身世帯はここにかなり入っているだろうと思われますが、さらにその中でも女性の貧困が際立っているだろうことは予想できます。

 福岡市でもこれを調査できないだろうかと思いました。

 

 ただし、この特集でコメントしている阿部彩・東京都立大学教授は次のように述べています。

私は研究者として「子どもの貧困」を訴えてきました。しかし「〇〇の貧困」とカテゴリー化してしまうことで、世代間や男女の分断を促進することになったのではないかという忸怩たる思いもあります。「子どもの貧困が大変だ」「高齢女性が大変だ」とカテゴリー化して、一時的な対策を求めるだけでは貧困問題は解決しないのではないでしょうか。(「女性のひろば」2022年2月号、p.30)

 なかなか辛辣です。

 ではどうすればいいのか。

「高齢女性」という限られた世代の問題にしてしまうのではなく、人が生活するうえで最も切実な問題——住宅、医療、介護、交通費、光熱費などの負担を下げ、実態に即して支援するといったきめ細かい対策をとる必要があります。(同前)

 これは、ベーシック・サービスとかベーシック・インカムのようなものだろうと私は解釈しました。もちろん、「ベーシック・インカム」のような単一の制度が一気にできるという意味ではありません。資本主義のもとでつくられていくひとつひとつの社会保障の仕組みがパーツのように積み重なって、そういう制度に到達するというイメージです。

 人が生きていく上で最低限保障しなければならないもの、つまり「健康で文化的な最低限どの生活」を得るために必要なものを社会が保障するという考え方です。

 私は、常々これは、「経済を利潤追求のためではなく社会のために役立たせるようコントロールした社会=共産主義社会」の重要なパーツの一つだと考えています。労働時間の抜本的短縮、および経済に対する合理的規制と合わせて。

 私が、市長選挙で公約した「家賃補助」(公的住宅、公的住宅手当)はその一つです。

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

 「女性のひろば」では「暮らせる年金」への引き上げという結論になっていて、それはそれで「老後のベーシックインカム」のようなものだろうと思います。このようにして、資本主義社会のもとで、その次の社会=共産主義社会のためのパーツが一つひとつ準備されているわけです。