市長選挙に入って、11月15日に田中しんすけさんの個人演説会がありました。
私も参加している「福岡市から政治をかえる会」が中心になって企画したもので、野党が勢ぞろいして田中しんすけさんの応援演説を行い、田中さんも登場してそれに応える場となりました。
ダイジェスト
プログラムは以下の通りでした。
1. 開会挨拶 かえる会代表世話人 星乃 治彦・福岡大学名誉教授
2. 各政党からの訴え
★ 立憲民主党 福岡県連顧問 藤田 一枝・元衆議院議員
★ 社会民主党 党首 福島 瑞穂・参議院議員
★ 日本共産党 国会対策委員長 穀田 恵二・衆議院議員
★ れいわ新選組 辻 恵・元衆議院議員
★ ふくおか緑の党 代表 荒木 龍昇・福岡市議会議員
★ 市民ネットワーク福岡 代理人 森 あやこ・福岡市議会議員
★ ふくおか市民政治ネットワーク 清水 倫子・福岡城南代表
3. メッセージ紹介
★ 国民民主党 福岡県連幹事長 泉 日出夫・北九州市議会議員
4. 田中しんすけ市長候補からの訴え
5. 講演 中野晃一・上智大学教授
6. 閉会挨拶 片山すみこ・かえる会代表世話人
日本共産党の穀田恵二衆院議員が私のツイートの引用リツートが、この光景についての感慨そのものになっています。
今回の福岡市長選は、歴史上初めて市民と野党の共闘で田中しんすけさんを応援する体制ができています。
— 穀田恵二 (@kokutakeiji) 2022年11月17日
「かえる会」@seijiwokaerukai のみなさんが内定していた候補者を取り下げ、真剣な協議をへて八項目の政策協定を実らせるなど、大きな役割を果たされました。私は心から敬意を表したいと思います。 https://t.co/DwiZwVTpDe
会場が「熱気」に包まれていました。物理的じゃなくて、政治的な意味で(笑)。
その理由は、いくつかあります。
一つ目は、会場いっぱいに人が集まったことでした。
演説会が行われた西鉄ホールは500人弱の会場ですが、事前の参加状況などを聞いていたときは「埋まるかな…」と少し心配していました。しかし、フタを開けてみればぎっしり満杯となりました。
二つ目は、応援弁士に野党が勢ぞろいし、しかもそれぞれ通り一遍ではない、熱のこもった訴えをしたことでした。
東京からやってこられた議員の方々も、共闘の経過、田中さんの公約、髙島陣営の公約、選挙戦の状況などをかなり詳しく踏まえた訴えをされました。
東京から急遽ローカルな選挙の応援にやってきた弁士の方で、しばしばトンチンカンな訴えをされる光景を見てきた私ですが、今回そういうことは全くなく、むしろ、当地に私たちとは違った視点から、福岡で起きていることの意味を訴え、私たちも新たに気づくというプロセスがありました。
社民党の福島さん、共産党の穀田さんが学校給食の無償化にフォーカスした訴えをされていましたが、会場の呼びかけで行われた「#福岡市の学校給食を無償に」のツイッターデモともかみあって、その場で「一つの流れ」が発信されるライブ感がありました。
三つ目は、(一番長い尺をとったという意味で)メイン弁士の中の中野晃一さんの話が「当地に私たちとは違った視点から、福岡で起きていることの意味を訴え、私たちも新たに気づく」という点での真骨頂でした。
中野さんは、日本国憲法の9条、13条、そして各種の人権条項を示して、それを福岡市長選で訴えられている政策に照らして解説されました。すなわち、国家を目的としていた原理を転換して、個人の尊重と幸福追求が日本国の政治の原理として打ち立てられ、自衛隊でさえそれを存立基盤としていること、学校給食をはじめとする義務教育の無償化もその一つであることが示されました。
上記のように書くとけっこう「カタい話」のように聞こえるわけですが、それをわかりやすく、しかもときどき会場が笑いに包まれながらの話だったので、参加者は実に熱心に聞き入っていたわけです。
今述べたように、ここでも学校給食など義務教育の無償化が話で触れられました。やはり期せずして、この会場の場からこの問題がテーマとして浮かび上がり、みんなでそれを共有するというダイナミズムが感じられたのです。
しかも中野さんは締めくくりで、選挙戦の支持拡大にまで話がおよび、運動の実践的にも刺激を受け取りました。
四つ目は、田中しんすけ候補本人の訴えがよかったということです。
語りとして熱がこもっていたというのはその通りなのですが、あれこれの公約というより、「市民と対話する」という姿勢を「月1回以上の懇談」という形で打ち出したことは、現市長との差をはっきりと示しました。
田中さんが、「かえる会」という田中さんにとっては「異文化」の陣営に乗り込んできて、厳しい批判も受けながら、しかし丁寧に説明されたことはすでに書きました。もう彼は「実践」して私たちに示しているわけです。だから、言葉だけでない説得力が私たちにはありました。
これは、「トップダウン」「サプライズ」を特徴とすることを自他共に認め、批判に向き合おうとしない髙島市長とは好対照なのです。髙島さんは自著の中で、「全体最適」を掲げて「私個人への面会も基本的にすべて断っています」「企業や個人の意見を市役所として受けるのは、あくまでそれぞれの担当部署の仕事です」(高島宗一郎『福岡市を経営する』p.58)と述べています。事実として、髙島さんは髙島さんに批判的な市民運動系の人たちと会うことはありませんでした。
私は、市長選に出馬したとき、注目している3人の地方政治家(知事)をインタビューであげました。潮谷義子・熊本県知事、翁長雄志・沖縄県知事、蜷川虎三・京都府知事の3人です(いずれも現在は現職ではありません)。
新しい政治をいっしょに - かみや貴行のブログ 1%でなく99%のための福岡市政を
この3人はいずれも保守系出身ですが、対立者との対話、もしくは違う党派の陣営をまとめた手法で有名な知事です。
対立者と対話ができない政治は、長い目で見てうまくいきません。
そういうボトムアップの方向性は私と田中さんで共通していました。だからこそ私は推したわけです。
あと、細かい話ではありますが、選挙情勢は田中さんには現状では不利が伝えられている中で、それに対しての田中さん本人の切り返しと話しぶりが自分として学ばされるものがありました(興味のある人はこの記事の終わりにつけた全体動画で確認してください)。
五つ目に、この集まり自体が福岡市における市民と野党の共闘の歴史の中で全く新しいものだったということです。
そもそもこれだけの数の野党が勢ぞろいして訴えるという場に、野党共闘候補が飛び込んで訴えてそれを囲んで気勢を揚げるということがありませんでした。
参加者は「これまでとは違うものを見ている・参加している」という感覚が強く残ったのだろうと思います。
会場のその場でツイッターデモを呼びかけるという取り組み自体もあまりなくて、「新しいことをしている」という感覚がありました。
以上5点が私なりに考えたことでした。
だから、参加者からは終わってからも「あの演説会はすごかった」「余韻がまだ残っている」と言われるものになっているのです。私も演説会が終わった後も、そういう気持ちになっているのはとても珍しいなと思いました。二日酔い…じゃなくてほろ酔いみたいな、上気した感覚がずっと残っているのです。
もちろん、「あれができていない」とか「他の都市に比べてこれがない」という課題は山のようにあります。
しかし、私はこの共闘が始まった時、こういう光景をリアルに想像できませんでした。それがここまで来たということに大きな感動を覚えているのです。
選挙そのものは勝たないといけませんが、ここまでの歩み自体は大きな財産だと言えます。
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