観光をどう考えるか(上) 宿泊税について

 宿泊税は、「分捕り合戦」の様相を呈してます。

福岡県 ”宿泊税導入”念頭に作業加速 福岡市も導入へ動き|ニュース・天気|TNC テレビ西日本

 おまいら、落ち着け。

 

 この機会に「かみやが市長になったら観光をどうするのか」を述べます。

 

高島市政の観光行政の問題――持続可能でない観光

 今の高島市長のやり方は、

  • とにかく量的な呼び込み一辺倒。それが地元の一部企業や市外・国外の企業を潤すだけで市民や地元商店にはほとんど還元されていない。
  • その呼び込みのためのホテル、岸壁、大型施設(MICE関連施設=展示場や会議場)をつくるけども、巨額の投資をしてもあっという間に陳腐化するし、競合相手が多い。そしてそうやって集客しても利益は前述の通り地元にはあまり落ちない。
  • 渋滞、バス・運転手不足、民泊による旅館業破壊・街壊しなど地元には負担増になっている。
  • 競争激化や風向きが変われば絶えやすく、何十年も先を見越して投資できるものにはなりがたい。

などの弱点を抱えています。

 一言で言えば「持続可能ではない観光」なのです。

 

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 いまは落ち着いていますが、少し前の「爆買い」のビジネスモデルはこうした問題を典型的に示していて、中国の資本がクルーズ客を組織し、東京の大資本や中国資本の店で買い物をし、お金がほとんど地元に落ちませんでした。

 

宿泊税をどう考えるか――4つの問題点

 こうした中で宿泊税は、量的に呼び込まれてくる旅行客から税収を得ようというアイデアで、私は決してありえないとは思いません。例えば、その税収を元手にして、自然環境への負荷、あるいは生活への影響の負荷を軽くするというやり方はありうるからです。

 だけど、例えば福岡市が決めた宿泊税というのは、議会で答弁を聞く限りその財源でさらに観光振興をやろうというもので、ますます多くの旅行客を量的に呼び込むだけのものになりかねません。結局、そのアガリは大名小跡地に高級ホテルを建てるような大資本のものにしかならず、市民には回ってこないのです。ますます「1%がだけが富み、99%はコスト負担だけを押しつけられる」という構図になります。

 

 現時点で宿泊税には少なくとも4つの問題があります。

  1. 対象・額・範囲などが明確でないこと。それ次第では、低所得者や子どもなどに負担を押しつけ、「観光する権利」を奪う可能性があります。
  2. 中小の旅館・ホテル業が宿泊税を転嫁できない恐れがあること。となれば自腹を切る恐れがあります。
  3. 違法民泊は課税を免れ、著しい不公平をもたらすこと。
  4. 県との間で二重課税になる恐れがあること。しかも県のアンケートでは、県の課税に反対した市町村は福岡市だけです。

 まず1.についてですが、「世界観光倫理憲章」というものがあります。

https://www.jata-net.or.jp/membership/topics/2015/pdf/150601_unwtojpn.pdf

 この中で、第7条では次のように定められています。(強調は私)

 

  1. 直接的に、個人的に、地球の魅力を発見し、楽しむという側面は、全世界の住民に平等に開かれている権利である。ますます広がる国内、国際観光への参加は、持続的に増大している自由時間の最も良い表れのひとつであると見做されるべきであり、この観光への参加に障害となるものは取り除かれるべきである。
  2. 観光をする普遍的な権利は、休暇と余暇を取る権利と補完的な権利であると見做されなければならない。この休暇と余暇の権利には、世界人権宣言第 24 条及び経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約第7条(d)において保証されている合理的範囲内での労働時間の制限、有給休暇の取得の権利が含まれる。
  3. (略)
  4. 家族、青少年、学生、高齢者による観光と体が不自由な方のための観光は、奨励され、円滑化が図られるべきである。

 

 宿泊税という形での課税は、額、対象や範囲によっては低所得者からこの権利を奪うものになりかねません。福岡市の市民経済計算で見ると、高島市政前の2009年度に3219億円あった福岡市民の家計の「娯楽・文化・レジャー」の消費支出は、最新年度(2015)には2846億円へと12%もダウンしています。

 修学旅行に来た子どもたちにも負担になります。お金がなくて修学旅行に行けないという問題が起きている今、そうした「家族、青少年、学生、高齢者による観光」に逆行することになりはしないか。

 

 4つの問題のうち他の問題は特に説明の必要はないでしょう。

 4つの問題としてあげた4.の二重課税、特に県が集めたアンケートについてだけ言っておけばこんな感じです。

www.nishinippon.co.jp

  私は、「県なら課税してよい」とは単純には言わないので、この調査には私なりの留保があるんですが、少なくとも福岡市のいまの立場は県内の市町村の合意がありません。「それでもやらなきゃいけない」というタイプの問題は存在するとは思いますが、どう考えてもこれはそういうタイプの問題ではありません。

 こういう問題が何も明らかになっていないのに、高島市長は県との「調整」に乗り出しました。俺たちにやらせろと。

 私が市長になればまず協議を中止します。

 今、市も有識者会議を始めていますが、さっき私があげた懸念が解決するかどうか見定めます。問答無用のゴリ押しのやり方ではダメです。

 

 小川福岡県知事はトップ会談を呼びかけていますが、県は県でどういうものにするかも方向性を見出しているわけでもありません。

 だとすれば、もし私が市長になれば(さっき言った通り基本は協議を中止しますが)知事と1度だけ会って、お互いに性急な導入は見合わせ、当面じっくりそれぞれの考えをよく煮詰めましょう、ということだけ決めて終わる、というふうにしたらどうかと思います。

 

 次回は観光そのものをどう考えるかついて書きます。