日本共産党にこだわるのをやめたら? と善意でおっしゃってくれる方へ

 2024年9月2〜8日は「街頭で、SNSで、政治を変える展望を太く語れる日本共産党の姿を知らせましょう」という日本共産党全国宣伝行動スタート週間です。

 私は党幹部によって不当に党を追放された身ですが、今日における共産党の役割を知ってもらうことは大事だと思うので、その宣伝にこの場で参加したいと思います。

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 日本共産党にこだわるのをやめたら? と善意でおっしゃってくれる方がいます。裁判とか考えずに、新しい人生を始めればいいじゃんとか。

 あるいは自分で新しい党を作れば? とおっしゃる方もいます。いわゆる別党コースですね。

 しかし、少なくとも今現在、私はそれらの選択肢を考えていません

 

 今の日本共産党にいろんな弱点や不備があることはその通りなんです。しかもけっこうシャレにならないレベルで。

 最近102周年を共産党は迎えたんですが、この党が今の日本社会で持っている役割、そして例えば私が共産党を飛び出してにわかに政党を作るっていうことでは代替できない大事な、そしてかなり分厚いリソースの蓄積っていうのが3つあると思っています。

 

(1)弱い人・困っている人の相談に乗るというネットワーク

 一つは、弱い人・困っている人の相談に乗るというネットワークです。

 このネットワークは、膨大な数の地方議員をはじめ党支部・事務所・党員、そして党員がやっているいろんな要求団体という組織的なストックによって支えられています。

  • 25万人の党員*1(日本のどこにいても見かける「おまわりさん」。全国の警察官の数が26万人ですから、それに匹敵します。*2
  • 1万8000の支部*3(あなたの住んでいる一番身近な地域は小学校の校区ですよね。全国の小学校数は1万9000。それに匹敵する数の基礎単位があるのです。)
  • 2300人の地方議員*4自民党が3438人、公明党が2873人*5。昔は地方議員数第1党でしたが、町村合併などで減ってしまいました。それでも自民・公明と同じレベルの数の地方議員が今もいます。)

などです。

 共産党員がやっている相談活動、あるいは社会運動としての訴訟などに関わっている党員弁護士や党員ではないけど協力している弁護士などもかなりの数です。

 創価学会の人でも生活に困ったりしたとき、「共産党に行けと言われまして…」といって共産党の生活相談会に来られたりします。相談会に来てもらうだけでなく、党員が日常の生活の中で、困っている人の話を偶然聞いたりすると、議員につなげたりします。

 「自分個人の困りごと」でしかなかったものが、「社会的な正当性」「公的な救済ルート」につながるって、マジで人の生死を分けたりします。

 昔はこれを党員がまわりの人を巻き込んで社会運動にまで高める機能が強かったんですが、いまそれは衰えちゃってるんですね(そこは再興したい)。でも運動までいかなくても、救済はつなげられる。

motomura-nobuko.jp

 こういうネットワークは、日本社会にとって不可欠のインフラだとさえ私は思っています。そのインフラにもいろんな歪みがあるんですが、そのマイナスを差し引いてもかけがえのないストックだと思います。こんなの「新党を立ち上げます」って言って、一朝一夕で作れるわけがない。

 

(2)政治や社会の不正をチェックするという機能

 二つ目は、政治や社会の不正をチェックするという機能です。

 特に、「みんなでなあなあ」という雰囲気が強い地方議会の中では、共産党の議員がいるかいないかで全く違うと思っています。それだけじゃなくて、「そんなネタ、どっから探してきたん?」みたいな事実を掘り出したりします。

 「赤旗」による裏金スクープは典型的ですね。

www.jcp.or.jp

www.jcp.or.jp

 

 国政だけでなく、地方議会では私も関わって明らかになったものもあります。

www.jcp.or.jp

 

 もちろん、そういうチェックが、ある種の一面性をともなっていたり、重箱の隅を突くような追及が政治のコストを逆にあげてるんだよという指摘があったりすることは、わかります。過剰な検診が個人や財政にとって余計なコストを生むかのように。

 だけど、チェック機能がない・きわめて弱い議会という方が害悪が大きい。誰も指摘しなくなる。そこはやはりきわめて貴重な役割を果たしています。

digital.asahi.com

 こうしたチェック機能は、地方議員・国会議員、それを支えている秘書団(事務局。私もその末席に位置しておりました)、そして、「しんぶん赤旗」の記者集団という、これまた組織的なストックで生み出されているものです。やはり「優秀な個人が新党を作る」みたいな形で短期間に代替できるものではありません。

 

www.youtube.com

 「共産党のその機能は認めるけど、自分たちの不正やロジックの穴には甘くないか?」という批判はあるでしょう。そこは考え是正しないといけないことですが、本体の不正追及機能が全くの虚偽だというほどの話ではないのです。

 

(3)ラジカルなオルタナティブを対峙させる役割

 三つ目は、ラジカルなオルタナティブを対峙させる役割です。今の社会の主流とは違う大きな選択肢を示すということです。

 戦前の日本は「中国侵略をやめる」「満州・朝鮮から手を引く」という大きな選択肢がほとんど示されませんでした。戦争をすることや植民地支配の継続は当然の前提で、その中での戦術的な微修正をめぐって争われた言論・政策が大半でした。

 今の町内会活動なんかを見ていても思いますが、大もとの政治が狂っているので、町内会が自助・共助で防災や防犯に過剰な役割を担わされているんだよ、という指摘がないのです。大もとの政治の間違いを是認・前提とした上で、狭い役割の押し付け合いを住民の中でやっています。

 大きな、抜本的な選択肢を示す、という機能が日本社会にはきわめて弱い。一方向に社会が流れていくと、引き返すようなレジリエンスが脆弱なのです。

 軍拡・軍事同盟以外の抜本的な選択肢(安保条約廃棄と地域共同体の強化など)をつきつけること、資本主義以外の社会(社会主義)を示すこと、こういう根本的な代替の選択肢を示せる政党として、日本共産党は不可欠の役割があります。

 もちろん「事実上、軍備全否定かよ」とか「共産主義の具体的イメージがねえじゃん」とかいろんな意見があるのはわかります。そこには課題があることは明白なのです。だけど、根本的な選択肢を政治の場で示し続けるという意義を失わせるほどのものではないのです。

 この機能もやはり人のストックがあります。

 (だいぶ減りましたが)党員の研究者、あるいは党がいろんなつながりで親しくなった知識人から知恵を借りるというネットワークです。様々な社会運動が持っている知恵、それを解毒して全国民向け=政党用にアレンジする党内政策集団も、組織的な蓄積として存在しているのです(やはりここにも弱点や課題は生じつつありますが)。

 「共産党こそ一方向に流れていくと引き返せないんじゃないの?」って言われるとホントに恐縮なんですが、それは改善していきたいし、やはり党が社会に対して発揮しているその機能とは分けて考えたいんです。

共産党に敵対したり否定したりする気はさらさらない

 この3つです。

 この3つは、日本社会の中で今の共産党が果たしているかけがえのない機能・役割だと私は思っています。そしてそれらはいずれも組織的な蓄積によって支えられているもので、個人が新党をにわかに作ったからといって、すぐに真似できるようなものではありません。

 そこに参加し、関わっている党員や協力者一人ひとりが形づくり、日々更新している財産です。「組織的なストック」「リソース」とはそういう意味です。このような蓄積は一部の党幹部の「所有物」ではありません。幹部が党規約を守らず、ハラスメントで組織を壊していることは、このような財産を「私(わたくし)する」ことだろうと思います

 繰り返しますが、そこに弱点、単なる部分的な弱点ではなく、重大な弱点・課題があることも承知です。しかし、本体を否定するほどのものではありません。少なくとも今は。

 先ほど申し上げた3つの点でのリソースは分厚いもので、これらを捨てて新しいものをゼロから作るのは正直大変ですし、もったいない話です。メンテナンスし、リサイクルしてまだまだ使うべきでしょう。

 

 だから、私は共産党で活動することにあくまでこだわりますし、共産党に敵対したり否定したりする気などさらさらありません。弱点を直して改革することを目指します。そのときも、そのルールを厳格に守っていきます。

 もちろん、それは組織の多数派の言うことを盲信したり、無批判に受け入れたりすることではありませんし、ルールの範囲内であれば、そのルールを徹底的に活用し、どんなにヒンシュクを買っても、その中でたたかいぬきます(すでに私は追放されていますが、もちろん今後党幹部の誤りが断罪され、私が党に戻る前提です)。

 野球で四連続敬遠させたら「スポーツマンシップにもとる」と言われるでしょうが、それはスポーツのエトスを理解しない発言です。ルールの中でならルールを徹底活用すべきなのです。個人が組織に殺されず、組織と共存するためには、そういう組織との緊張関係があったほうがむしろいい。

 この3つの巨大な財産を持っている共産党に、しっかりメンテナンスして、もっと日本社会で積極的な役割を果たしてもらおうではありませんか。

 

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 なお、この文章の骨格は私が除籍・解雇される前の今年(2024年)5月に書き上げていました。それに加筆・修正を加えて、発表します。

 私はこの立場を私が不当に除籍・解雇された後も、ネットテレビに出演した際にきちんと表明し、同じ番組で「共産党はもう役割を終えた」と述べた松崎いたるさんとの違いが鮮明になりました。

news.yahoo.co.jp

 この3つの役割は、共産党の反対者であっても認めるところだと思いますし、街頭や演説会で訴えても共感を得られるだろうと思います。

 現役の党員のみなさん。全部でもいいし、部分的にでもいいので、ぜひお使いください。著作権フリーです(笑)

*1:2024年1月の第29回党大会決議より。

*2:暴力装置と同列に共産党を論じるのか!」とお怒りの古参党員もいらっしゃるかもしれませんが、「意外」なことに共産党は適正配置を前提とした警察官の増員を政策で掲げています。

*3:2022年1月の英文での党紹介より。

*4:2024年7月時点。党の公式ページより。

*5:2023年12月末時点。総務省調査より。