福岡県知事選挙に出ている星野みえ子さんの公約は、コロナ対策が最大の柱ですが、もう一つの大きな柱がジェンダー平等です。
NHKのサイトでは次のように記者が解説しています(強調は引用者)。
-争点は?
1つは、10年間続いた小川県政の評価です。
星野氏は小川県政を刷新して、新型コロナウイルス対策やジェンダー平等などに取り組むとしています。
一方、服部氏は小川県政を継承して、新型コロナウイルス対策や「人財」の育成などに取り組むとしています。
正直、私が2018年に福岡市長選挙をたたかったときにはこの政策は「柱」にはなっていませんでした。これが首長選挙の政策の大きな柱になるところまで本当に短期間で時代が大きく変わったんだなと驚かされます。もちろん、これで星野さんが当選すればさらに大きな時代の変化を感じさせることになるわけですが。
星野さんは森発言に触れて、公約で次のように言っています。
つい最近も森喜朗さんが「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「時間を制限しないといけない」といって大きな問題となり、辞任に追い込まれました。
これは福岡県政にとっても人ごとではありません。女性公務員の管理職登用の状況は2020年でも13%しかありません。県は16%にするという本当に低い目標しか設定していなかったのですが、それすらも達成できていないのです。
福岡県男女共同参画審議会が昨年12月に出した答申を読んでみましたが、確かに低い。
こんなに低いんだ、と思います。
県の審議会答申ですら、
現状では、管理職に占める女性の割合は 17.3%にとどまるなど、未だ低い状況にあります。依然として、家事や育児、介護の負担が女性に集中していることから、性別役割分担の解消に向け、更なる取組みが必要です。
としています。
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/571026_60677853_misc.pdf
意思決定への女性の参加の低さ、端的に言って「締め出されてきた」状況ですが、それは何を生み出すのでしょうか。
星野さんは次のように述べています。
ケア労働の中心を担ってきたのは女性たちです。私も多くの女性の皆さんの声を聞いてきました。しかし、その女性たちが意思決定の場から締め出されているのです。
つまり、女性が県政の意思決定の場から締め出されてきたことによって、県政からケアを重視する視点がすっかり失われたのではないか、ということです。
これは重要な観点だと思います。
星野さんが指摘しているように、コロナであらわになった県政の社会保障・ケアの貧弱さの原因の一つがここにある可能性が高いと私も思います。
自民党中心の県政が長く続いてかつて県内に21ヶ所あった保健所は今9ヶ所に減らされ、人員も801名から532名と大幅に減少しています。
廃止・民営化・独法化で5つあった県立病院は無くなりました。
また、県は国のガイドラインに基づき「地域医療構想」を策定しましたが、そこでは、2025年の必要病床数を2015年度に比べても3000床近く削減することになっています。
ここでも、対決点は明瞭になります。
- 服部さんはこれまでの県政のほぼ中枢にいたわけですから、意思決定への女性の参加はこの程度でいい、あるいは多少改善するくらいでいい、という人は服部さんに投票しましょう。
- 「県の指導的地位にしめる女性の割合を30%にし、男女同数を目指します」(公約より)という状況に変えたい人は星野みえ子さんに投票しましょう。
そんなに難しい選択じゃないですね(笑)。
いや、服部さんの「この程度でいい」とか「多少改善するくらいでいい」というのは恣意的なアレかもしれないんですが、そもそも副知事として県政を担ってこられたわけですから、結果に責任があります。そして、次の県の男女共同参画計画素案には目標数値はそもそもありません(成果指標は今後設定される)。県庁の計画を規定した「福岡県特定事業主行動計画」では課長以上の管理職で女性が占める割合を「15%以上」としています(現在14%)。まあ、「この程度」「多少改善」というのは恣意的な表現じゃないことがわかってもらえると思います。
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/566535_60636945_misc.pdf
「半数とか無理に決まってるだろ」「15%くらいが現実的」「15%『以上』だから50%も含まれる!」と思う人はどうぞ服部さんへ投票してください。ホント。さあどうぞ。
私は3月に福岡市議会で、星野みえ子さんの後継者である松尾りつ子市議の質問を聞きましたが、松尾市議によれば国連ではグテレス事務総長になり、幹部の男女同数、管理職の女性40%が実現したと言います。松尾市議は、中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表がそれを解説していた発言を引用していましたが、やはりトップの意思・決意は大きい。
国連では、2017年にアントニオ・グテーレス氏が事務総長に就任し、「2028年までにすべての役職レベルで男女同数に引き上げる」数値目標が掲げられました。
約2年で幹部レベルでは同数を達成し、中間管理職の部長・課長クラスでは40%弱です。
日本人女性初の国連事務次長として軍縮担当上級代表を務める中満泉さんは、「トップの意思によって、かなり早いスピード感をもって達成することができた。非常に重要だったのは、数値目標をきちっと打ち出したことが上げられる。その目標に向かって、それぞれの部局で非常に詳細な行動計画を立てて、どのような進捗状況になるのかを常に監視されている。ありとあらゆるところに“ジェンダーレンズ”を組み入れて、きちんとやっていかないと。根が深い問題なので…なかなか差別をなくしていくことはできないと思っている」と述べています。
グテーレス氏が事務総長になってから「国連の中での男女同数を達成することは、自分にとっても一番重要な優先事項のひとつである」と述べ、70年以上変わらなかったことが、一気に変わりました。男女同数を目指すのは世界の大きな流れであり、その実現にとってトップの姿勢こそ重要です。
(3月9日の福岡市議会での松尾市議の質問から引用)
星野さんのような人に替わることは、ジェンダー平等やケアに手厚い県政をすすめるうえではかなり重要なことじゃなかろうかと私は考えます。