除籍を「カジュアル除名」として使うべきではない

(以下は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方は24年8月20日付の記事を先にお読みください。)

 

 私の除籍が正当か不当かは、私がもし裁判をすればおそらく最大争点の一つになるでしょう。そして、私は、私の行動が規約違反だったかどうかという問題とは全く別に、私に対して、処分ではなく、除籍を適用したことは全く当を得ていないと考えています。

この記事のまとめ

 この記事を最初に簡単にまとめておきます。

 一言で言えば、除籍は「党員の資格を明白に失った」場合に適用されるので、私は「規約を認める」ことを明言しているため「明白」には失っておらず、除籍は適用できないということです

 万が一私が規約違反をしていても、私と党幹部の間には違反をめぐり争いがあるので、それは除籍ではなく除名などの「処分」で対応すべきものです。党員を気軽に追放する「カジュアル除名」として除籍を濫用すべきではありません。

 

山本周五郎の謂う『汚い本棚』」(筒井康隆『大いなる助走』より)



この記事のもう少しだけていねいなまとめ

 もう少しだけていねいに言います。

 党幹部は私を不当解雇しましたが、その理由は私が除籍され党員ではなくなったので、党員であることを前提とする党職員の要件もあわせて失った、というものです。

 しかし、除籍は「党員の資格を明白に失った党員」を党員リストから外すという措置であり、①実は18歳未満だった、②実は日本国籍がなかった、③実は綱領と規約を認めていなかった、のどれかにあたる人がそうなります。

 「明白に」失うというのは、①年齢や②国籍のように、外から見て誰もがわかるものです。③綱領と規約についても、外から見て誰もがわかる場合に適用されるものです。「認めません」と明言する、もしくは「認めますか」と聞いても「認める」と答えなくなる場合に適用されるべきものです。

 「認める」と言っているけども、実際には規約を否定している可能性がある場合、つまり組織側と被疑者の間に争いがある場合は、「明白」とは言えません

 その場合は、除籍ではなく、規約の「処分」に関する手続きにのっとって、慎重に調査審議して判断されることになります。つまり違反を認定した上で、除名によって外に追い出したり、他の処分を適用したりします。

 私は繰り返し「規約は守る」と明言しているので、「明白」には、つまり外から見て誰もがわかる形では資格を失っておらず、除籍を適用することはできません。

 私の場合は、仮に私が規約違反であったとしても、除籍ではなく、処分の手続き(規約第48〜55条)にそって除名なり警告なりが行われる必要があります。

 つまり、私への除籍適用は無効だということです。

 そして、こういうことは全国の共産党組織で起きており、党幹部は規約を逸脱して、自分の気に入らない人の組織的排除のために、「カジュアル除名」として除籍を濫用すべきではありません。

 以上が、私の言いたいことの要旨です。

 

 以下は解説なので、時間のない方・興味のない方は読まなくても結構です。



除籍とはどういう措置か

 そもそも除籍とはどういう措置でしょうか。

 特に、共産党のことについて詳しくない人は、除名との違いがよくわからないと思います。どちらも党からは結果的に追い出されるからです。

 簡単に言えば、除籍は、「党員であることの資格を失ったから党員の名簿リストから消す」という、事務的な措置なのです。

 たとえば地域の俳句クラブの会則で、クラブに入る資格を「福岡市に住んでいる人」という条件をつけていた場合、Aさんが福岡市から引っ越ししたら、自動的にその俳句クラブの名簿から消されるようなものです。自動退会に近いニュアンスですね。別にAさんがルール違反をしたとか、そういうことは一切関係ありません。

 これに対し除名などの「処分」は組織としての罰(制裁)です

 規約を破るという悪い行為をしたかどうかを認定した上で、その悪さに応じて処分の重さを決めるのです。裁判で罪と罰を決めるのに似ていますね。

 先ほどの俳句クラブの例で言えば、例えば「盗作したら除名」という会則があれば、罰として除名(追放)されることになります。その際「俺は盗作などしてない」と本人が言えば、それも審査することになります。まさに裁判ですね。「引っ越しで名簿リストから消える」とは、だいぶ意味合いが違うことがわかると思います。

 「除籍は事務的な措置」、「除名は罰」なのです。



除籍と離党は近い措置、除名などの処分は全く別に定めている

 日本共産党の規約をごらんください。

www.jcp.or.jp

 除籍は党規約の第2章の終わりにあって、離党も同じ2章の中にあり、除籍のすぐとなりにあります。離党に関する条項は2章の10条、除籍は2章の11条です。

 これに対して、除名などの処分は規約の第11章の「規律」というところに定められています。

 除籍と、除名などの処分は、規約上全く別のものとして扱われているのです。

 

 除籍と除名は遠いけど、除籍と離党は近いのです。近いので同じ章でまとめられているのです。

 なぜ近いのでしょうか。

 離党は自分の意思で党から離れることです。それに加えて、自分の責任ではない場合も「離党」扱いにすることが定められています。党活動に1年以上加わらなかったとか、党費を1年以上納めなかったとか、そういう場合だよと10条に書いてあります。

 先ほどの俳句サークルの例で言えば、サークルには入ったけど、1年以上サークルに来ないし、会費も納めない、という人ですね。いわゆる「幽霊部員」です。

 共産党の現場では「未結集党員」などと言ったりします。

 実は共産党の規約では、この「未結集党員」を名簿リストから消すことは長く「除籍」として扱われてきました。1994年の第20回大会で規約を改正し、長期にわたって活動していない党員は、本人と協議(つまりこの「協議」は意思確認ていどのものです)した上で、離党扱いにすることにしたのです。

 離党なので本人からの申し出が必要だろうと思われますが、「その人の責任ではない」という意味で離党扱い、いわば「準離党」としているのです。第20回大会では、この規約改正の趣旨を「これらの同志は党員資格の欠格者などでなく、働きかけて結集すべき人びとなのだという認識がより明確になります」*1と報告しているように、組織の側がその人の面倒を見ずに放っておいたことが活動しなくなった原因なんだからその人のせいではない、という意味のことを述べ、だから離党として扱います、としたのです。

 逆に言えば、この規約改正で、「党員資格欠格者」が除籍されることに限定されました。実は日本国籍がなかった、とか、実は18歳未満だった、というような場合ですね。

 いずれにせよ、離党と除籍の境目がもともとあいまいなものであり、両者は親戚のように距離が近い措置であることはわかってもらえると思います。

 俳句サークルの例で言えば、自分から「やめます」(退会)というのと、福岡市から引っ越ししたので名簿から消された(除籍)というのとが、なんの色合いも含んでいない、同じような事務的な措置だということです。1年以上サークルに来ない人を「退会」「除籍」どっちにするかは微妙だけど、同じようなグループなのです。盗作をして罰として除名されるのとは全然ニュアンスが違うのがわかってもらえるでしょうか

 



除籍とは「第四条に定める党員の資格を明白に失った」場合になされる

 ここで党規約の除籍条項をちゃんと見ておきましょう。

 党規約第11条には

党組織は、第四条に定める党員の資格を明白に失った党員、あるいはいちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる。

とあります。

 

 除籍には2タイプあるのです。

  1. 第四条に定める党員の資格を明白に失った党員
  2. いちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員

です。

 私の場合や砂川絢音さんの場合は1.を適用されています。(2.については今回は関係がないので、議論しません。)

 

 「第四条に定める党員の資格」とは何でしょうか。規約第4条にはこうあります。

十八歳以上の日本国民で、党の綱領と規約を認める人は党員となることができる。

 ①実は18歳未満だった、②実は日本国籍がなかった、③実は綱領と規約を認めていなかった、のどれかにあたる人になってしまうということです。

 これは例えば、私が日本国籍を実は持っていないことがわかり、そのために除籍=名簿リストからの削除が行われるということです。



「明白に失う」とは?——外形性=外から見て誰もがわかるものが必要

 では「明白に失った」とはどういうことでしょうか。

 結論から言えば、外形性、つまり外から見て誰もがわかるものがあれば、それは明白と言えます。

 例えば「十八歳以上の日本国民で」という部分は、年齢と国籍です。年齢や国籍は戸籍など客観的に証明できる材料がありますから、争いの余地がありません。外形性=外から見て誰もがわかるものがあるわけです。いくら組織の側が「あなたは母親はドイツ人、父親は中国人ですよね。ですからあなたが日本国民とは言えないことは明白だから除籍します」と言い張っても「いえ、私、パスポートを持っていますので」と言えばおしまいです。

 これくらいに明白だからこそ、事務的に名簿から消せるのです。

 そして、除籍にも一応「慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる」「除籍にあたっては、本人と協議する」とあるわけですが、その「慎重」さとは、ちゃんと年齢や国籍について組織の側が証拠を持っておくという程度のものです。証拠もなし「なにぃ、お前が20歳? どう見ても15〜16歳だろ!? だいたい高校行ってるじゃないか!!」と言って党籍を剥奪してはいけないということです。その人が事情があって20歳で高校に通っていたら、とんでもないことになるからです。「協議」はそれを確認するというレベルのものにすぎません。「あなたは高校2年生ですよね? いったん入党してもらったんですが、18歳未満の人は共産党には入れないんですが…」と協議の場で切り出して、「私、実は長く入院してまして、遅れて高校に入ったんです。それで今高校2年生ですけど20歳です。ここに住民票もあります」という申し出があれば、協議によって除籍しなくて済むわけです。

 後で見ますけど、除籍にともなう調査や協議は、規約の「処分」のところ(第11章)で定めているさまざまなハードルの高さ(調査審議の要件、意見表明機会の機会保障、処分決定の割合など)とはまるで違います。

 

 では、党員資格である「党の綱領と規約を認める人」はどうでしょうか。

 これも同じです。

 「党の綱領と規約を認める」ことが、外形性、つまり外から見て誰もがわかるものがあれば、それは明白と言えます。

 それは「はい、私は党の綱領と規約を認めます」という言明や書面です。

 共産党の入党申込書には「私は党の綱領と規約を認めます」と書いてあって、それにサインをして入党します。

 それがある人は外形性があるので、誰でも明白にわかります。

 逆に言えば、公然と否定するような場合は、外から見て誰もがわかる形で「党の綱領と規約を認めていない」と言えます。「規約とかそんなもん、どうでもいいよ! 俺は認めねえ! 憲法の方が大事だ!」などと言ったりする場合ですね。

 あるいは「規約を認めますか?」と聞かれて答えない・黙っている場合もそうだと言えます。「認める」とは言えないということが外形的にわかるからです。

 これくらいクリアだから、その人が資格を「明白に失っている」と自信を持って適用できるわけです。

 党幹部がいくら「あなたが規約を認めていないことは明白だ」と言ったところで、仮に大声で5万回言っても、相手に「いえ、私は党規約は認めます」と言われれば、ちっとも「明白」ではないです。

 

 第20回党大会で、規約の一部改定についての中央委員会報告(小林報告)が行われており、そこでは「除籍と除名の違いがわかりにくいので、除名に一本化したらどうか」という疑問に答えて、次のように述べています。

ある党規律違反行為にいかなる処分が妥当かは、規律違反行為の内容や程度、党にあたえた損害、本人の立場などよってきまり、訓戒から除名まであります。除籍の場合は、規律違反行為の有無あるいはその程度とは別に、一部改定案や「提案説明」でのべているように、その言動から明白な党員資格欠格者となっている者についての措置であります。(「前衛」臨時増刊号、20大会特集、p.159)

 ここでは「規律違反行為の有無…とは別に」除籍される、とあります。

 除籍は規律違反者に行われると思っている人にはびっくりする言葉だと思います。

 「有」。「ある」ことと「ない」ことです。

 えっ、ということは規律違反がなくても除籍することがあるの!?

 そうです。

 規律違反(規約違反)をしていないけども、例えば「私はもう規約を認めません。民主集中制とかおかしいですもん」と、公然と宣言するようになれば、つまり「その言動から明白な党員資格欠格者となっている」場合には、除籍されるのです。(これは前に言ったように、党内では「民主集中制を定めた今の規約はおかしい」と述べるけども、「改正されるまでは今の規約を守って活動します」と述べているなら問題はないことはいうまでもありません。)

 

 その次にある「(規律違反行為の)その程度とは別に」という文言も、同じです。

 例えば、小池晃さんは、パワハラで警告の処分を受けました。処分の中では一番軽いものです。もし、その時、小池さんの言動がどうもおかしいなと思って、他の幹部が「小池さん、あなたは規約を守る気があるのですか」と聞いたときに「いや、もう私は党規約は守るつもりはありません。いちいち守っていたら活動なんかできませんよ」と言ったらどうなるでしょうか。

 その場合は、やったことは規約違反でその重さは警告相当の処分だけど、その問題とは全く別に、つまり「その程度とは別に」、規約を守る気はないと言明したわけですから「その言動から明白な党員資格欠格者となっている」ことになります。つまり除籍されることになります。規約違反としては一番軽い処分の当たるものですが、結果としては党から追放されてしまうことになります。



紛争になっている場合は外形的な明白性がない

 こうしてみれば外形的な明白性、つまり外から見て誰もがわかるものがあることが除籍の不可欠の条件であることがわかります。

 問題は、組織側は「お前は規約違反だ」と言っていて、被疑者が「いや私は規約違反などしていない」として、紛争になっている場合です。その場合はどうでしょうか。

 この場合は、外形的な明白性がありません

 「いやいや! あいつ、『こういうグループ作ろうや』って、大会の会場でビラ撒いたんやで。誰が見ても分派やし、規約違反やん。規約なんか守る気ないのはめちゃくちゃはっきりしてるで」という人もいるかもしれません。

 それでも本人なりに理屈があって「私は規約を守っている。規約を否定する気などない」と言っている場合があります。

 その場合は、やはり紛争になっているわけですから、外形的な明白性はありません。国籍がない、年齢が範囲外と同じような、事務的な措置である除籍を適用してはいけないのです。

 したがって、規約違反かどうかを認定して、処分の重さを決めるという、規約第11章(48〜55条)の処分プロセスに入らないといけません。

 

処分プロセスには厳格なハードルがある

 規約第11章(48〜55条)に定めてある処分プロセスは、除籍とは違う厳しいハードルがあります。それはそうです。裁判と同じですから。

  1. 調査が重い。:最大6ヶ月の権利制限をかけてじっくり調べることができます。
  2. 決定の方式が具体的。:除籍はどこで除籍を決めるかは具体的に書いてありませんが、処分の場合は所属する単位であることを明確にし、その総会であることを求めています。
  3. 役員はもっとハードルが高い。:一般党員は過半数で決まりますが、機関の役員の場合はさらに構成員(出席者ではなく)の3分の2以上の賛成という、一般党員よりもかなり高いハードルを設けています。
  4. 本人の弁明が保障されています。:処分審査の場では、被疑者に対して「十分意見表明の機会をあたえる」ことになっています。除籍は「協議」としか書かれておらず、「十分意見表明の機会」は定められていません。
  5. 除名はもっとハードルが高い。:除名の場合は、さらに慎重になるように定め、除名が決まってからも、その上の機関が承認する場合でも「関係資料を公平に調査し、本人の訴えをききとらなくてはならない」とワクをハメています。
  6. きちんと文書で残します。:処分決定後も組織側に本人への内容・理由を書いた通知義務などが課せられています。
  7. やり直しができます。:不服がある場合に再審査をすることができます。

 

 これらはいずれも除籍にはありません。「調査」「協議」などパッと見で似たものがある場合でも、全く質が違うことは、比較されればすぐわかると思います。

 つまり、組織と被疑者の間に紛争があるような場合は、こうしたいわばめちゃくちゃに高いハードルを超えないと認定も処分もできなくなります。裁判と同じようなわけですよね。

 「資格がありませんね。じゃあ名簿リストから消しますよ〜」という、事務的な手続きである除籍とは全く違うものであり、処分がわざわざ「規律」という別の章でくくられている意味も、こうしてみて初めてお分かりいただけると思います。

 逆に言えば、規約違反がそんなにはっきりしているなら、両者に紛争があっても、処分プロセスをちゃんと通れば、みんなは「こいつはひどい違反をしている。除名しよう」ということがすんなり決まるはずです。

 紛争があるのに組織幹部が勝手に「こいつの違反は明白だから」と言って、一方的に除籍プロセスで党から追い出したりしたら、むしろ組織幹部が党内裁判である処分プロセスにかけるのが怖くて(自分が負ける可能性があるので)、やってしまったという疑いが持たれてしまうことになるのです。



私を追放するなら処分プロセスでやるべきだった

 私の場合はどうでしょうか。

 私は書面(メール)でも、そして言葉でも、明確に「自分は規約を認めるし、規約を守る意思があるし、規約を守っている」と言っています。

 党員欠格者であるという外形的な明白性が全くないことがわかるでしょう。

 除籍プロセスに乗せては絶対にいけないのです。

 それでも、私が規約違反だというのなら処分プロセスで解決(決着)させるべきだったのです(もちろん、私は規約違反などしていませんが)。そして党幹部によれば私は「重大な規律違反」をしたそうですから、処分プロセスに乗せて、除名を提案すればよかったのではないでしょうか。そして、当時私は県役員でしたから、構成員の3分の2以上の賛成で、除名を決めたらよかったのです。

 党幹部が私の規約違反が「明白」だというなら、みんなすんなり賛成してくれたことでしょう。

 しかし、私の規約違反容疑の調査が終了して、その調査結果と処分提案が県委員会総会で公表され、それに対して私が「十分意見表明の機会」を保障されることはついに一度もありませんでした。

 私は2023年9月9日にその審査のための総会が開かれると聞いたので、音声や映像も含め、数十ページに及ぶ資料を人数分(65部)用意し(数万円かかりました)、経過や規約の解説などを含めた数時間に及ぶ意見表明原稿を用意していました。総会の出席者はいつもまともにそろわないので、構成員の3分の2以上がいくつの数になるかなどを厳密に計算したりしました。党幹部が不正をして強行採決した際の動議などもいくつか用意しました。また私の弁明を否定する会場からの発言に備えて、それへの反論原稿も、あらゆる角度から用意しました。でもそれは全部パーになったのです。9月6日に中止が周知されてから、認定と処分のための総会は永遠に開かれることがなかったからです。党幹部はその勝負から逃げ、規約に背いた安易な道(除籍濫用)に走りました。



私は除籍プロセスではなく処分プロセスで始められた

 私は除籍プロセスではなく、処分プロセスで始められたことは明らかです。

 まず、私への調査を決めた2023年6月21日の党県常任委員会決定は次のように書いています。

党規約に違反する規律違反について、深く自己批判すること、県委員会総会の議論を公表したブログを削除すること、これに応じた場合は、自己批判を踏まえて処分の指導要請を中央に提起する。できない場合党規約48条に基づいて権利制限をした上で、調査することになる。その場合、常任委員会で権利制限を決定し、規約に基づく調査を進める。 〔…中略…〕 これは異論を持つメンバーを指導部から外すものではない。規律違反について、調査・審議の対象となった党員の権利を党規約48条に基づいて制限するものである。 

 決定文書中に二度も「党規約第48条に基づいて」とことわりを入れています。つまり党規約第11章処分プロセスで私の調査を始めることを明言しているのです。

 さらに、私を排除して開かれた2023年8月下旬の地区委員長会議・福岡市議団会議などの一連の会議での県委員長の言明です。

それでこっから先は今中央委員会にやってて、経過を説明した上で党規約に基づく処分の指導要請を中央に上げています。これはまだ返事が返ってきていない。返ってきてから県委員会総会になる。県常任が(中央に)上げている指導要請というのは彼の常任・県委員からの罷免ということ。それで処分(案)を上げています

 除籍プロセスではなく、処分プロセスで調査をし、処分案まで書いて中央にあげていることがはっきりとわかると思います。

 だからこそ、私は、調査が終了して私の「容疑」というものの全容が明らかにされること、それに対して自分が「十分意見表明の機会」を保障されるのをじっと待っていました。*2

 しかし調査はいつまでたっても終わらないし、それがゆえに「意見表明の機会」も全く訪れません。一体どうなるのだろうと不安に思っていたところに、いきなり2024年8月6日に「あなたの除籍を決定した」という青天の霹靂の通知でした。

  • 調査が終了して、調査結果の全容を私に伝えたこともない。
  • それに対する意見表明の機会もない。(調査結果がないからできません)
  • 処分プロセスではなく除籍プロセスに、なんの通知もなく変わっている。
  • しかも「規約は守る」と私はくどいほど表明していた。なのに除籍。

というあまりにも驚くべき結末でした。

 行政手続法にはその人に不利益な行政処分をする際には「告知・弁解・防御の機会を与える」という原則があります。これは不利益を相手に与える場合に、一般的に必要になる原則だと思います。しかし、私の今回の除籍は、どれも全く欠いてることがわかるでしょう。規約を離れて、一般的な感覚や条理(裁判などにおいて標準となる社会生活の道理)にたってみても、それを全く無視したやり方ではないでしょうか。

 

 そして決定したからあなたと「協議」します、と言って日程を通知してきたのです。

 決定した後に協議する…?

 これも一般的な感覚や条理からすると不思議きわまるものです。

 除籍に際しての協議が国籍や年齢の確認のような事務的なものであっても、それはやはり決定の前に確認すべきことであって、わざわざ決定した後にやるのはおかしなことです。

 ましてや、単に綱領や規約を認める・認めないの事務的な確認にとどまらず、党幹部側が「そいつが綱領と規約を『認める』と言っても信用できない」というほど不明瞭で複雑なものであるなら、絶対に決定の後に協議などしてはいけません。党幹部の私への対応はまるで条理に沿っていないのです。



浜野忠夫副委員長はなんと言っているか

  浜野忠夫氏の『国民に開かれた党へ——日本共産党新規約のはなし』(2001年)は、浜野氏の個人著作ですが、浜野氏は日本共産党副委員長の著作であり、現在も共産党の講師資格試験において試験会場に持ち込み可能な文献の一つです。いわば2024年においても共産党のオフィシャルな参照文献なのです。

 

 

 この中で浜野副委員長はなんと言っているでしょうか。

重大な規律違反で、党と国民の利益を裏切り、党に打撃をあたえた党員に、「処分」をおこなわないで第十一条による党員資格喪失者として、除籍で処理するのは正しくありません。(p.73)

 私の行為は、党の県常任委員会(2023年6月21日決定)でなんと言われたでしょうか。

重大な規律違反を行なった以上、自己批判できなければ、党員の資格を問われることになる

 ご覧の通り、「重大な規律違反」だとしています。*3浜野氏に従えば、私には、除籍による処理ではなく処分を行わなければならないはずです。

 私への対応(処分をやめて除籍で済ましたこと)は、党のオフィシャルな規約解釈本からさえ逸脱したものなのです。

 

私の除籍をめぐっておきたことをまとめると

 つまり私の除籍をめぐっておきたことをまとめると、こうなります。

  • 党幹部は、初めは処分をするための「48条による調査」を始めることを私の目の前で決定し、そのための私の党員の権利の制限までかけ、中央にも「役員罷免という処分でいいですか」という指導要請(おうかがい)をしたけども、
  • 途中でそうした処分プロセスを勝手にやめ、いつの間にか除籍プロセスに切り替え、最後の決定の日(24年8月6日)に初めて「除籍を決定した」という一方的な通知を行いました。
  • 切り替えは私に告げられなかったため、処分プロセスのための「48条による調査」がずっと続いていると私は思い続け、調査の終了・結果の公表・意見表明機会の到来を私は最後まで待ち続けました。
  • 結局私が調査結果を聞き、それにもとづいて私が意見表明をする機会は、除籍決定前には、とうとう一切与えられませんでした

ということになります。

 なぜ党幹部はそんなことをしたのでしょうか。

 それは党幹部を調査しなければわかりませんが、推察するに、処分プロセスでは構成員の3分の2以上の賛成がないといけないし、私に組織的に公開の場で「十分意見表明の機会をあたえなければならない」ため、つまり長々と私に告発する機会を与えてしまうため、「まずい」と思ったのかもしれません。一言で言うと、負ける可能性があると思ったのかもしれないということです。

 それで面倒な処分プロセスをやめて、除籍にしてしまえ、と思ったのではないでしょうか。*4

 しかし、見てきたように除籍と除名は、効果は同じ「組織からの追放」であっても、両者はその運用が全く性格が違うものです。

 「本人がいくら『規約違反ではない』『規約を守る意思はある』と言っても、規約違反は明白であり、本人は自己批判していないので、除籍してよい」などという運用は、党規約の精神を踏みにじる「カジュアル除名」ともいうべき、「除籍の濫用」に他なりません。

 このようなタイプの「カジュアル除名」、すなわち処分プロセスの面倒を避けて党員を手軽に追放するための党幹部による「除籍の濫用」が全国各地で荒れ狂っており、日本共産党は組織として深刻な状況にあると言わねばなりません。

 

 「カジュアル除名」=党員を手軽に追放するための党幹部による「除籍の濫用」を、日本共産党の再生のためにも、何としても止めるべきです。



 

*1:「前衛」臨時増刊号、20大会特集、p.158-159。

*2:その後の県党会議でも私は発言自体はしましたが、自分の違反容疑そのものや処分については発言しませんでした。なぜなら時間もたった8分しかなく「十分意見表明の機会」などない上に、そもそも調査が終わっていないために調査結果も処分案も出ておらず、そのことについては発言しようがなかったのです。

*3:規律違反か、規律違反容疑かはここではおいておきます。

*4:党幹部らによる「党福岡県委員会」名の声明は、私の除籍について「神谷貴行氏が日本共産党員としての資格を自ら喪失した」と書いています。この表現の真意は謎です。しかしあえて推察すれば、自分たちの責任で処分したことにしたくないためだと思いますが、「国籍を自分で捨てて党員資格を進んで失うのと同じように、神谷も自分から規約を認めない立場を事実上表明したんで、自動的に、オートマチックに、自然現象のように、党員の資格がなくなっちゃったんですよ〜」と言いたいのではないかと思います。もちろん私は「規約を守る」と繰り返し表明しており、このような党幹部のたわいない言抜けはおよそ通用しません。