共産党都議団が10年以上前の私の調査を生かした質問をしてくれていたこと

 東京都に行く用事がありまして、池川友一都議(共産党・町田選出)にお会いしました。

 大変素晴らしい方でした。

 で、そのとき「神谷さんが東京都委員会の政策部にいた頃に調べた資料で原田あきら都議(共産党)が論戦していますよ」と教えられました。私が10年以上前に調べたことを、共産党都議団事務局にいた友人が都議に伝え、その論戦が行われたのです。

 調べてみると、確かに…ありました!

 2019年10月29日、環境・建設委員会でのやり取りです。

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 原田都議は、社会インフラの増強が必要であるにしても従来通りのやり方で進めていいのか、河川整備や防災、社会福祉などに中身を変え、新たな道路をどんどん作り続けるやり方は改めたほうがいいのではないのか、と提起します。

 しかし、東京都は道路がもっと必要なんだと主張していて、原田都議はその根拠になっている、建設局が毎年発行している「事業概要」の記述・数字を検証していきます。

原田委員 次に、第三段落、今度は国際比較しています。既成市街地とされている区部の道路率一六・五%は、既に道路率が二〇%を超えているニューヨーク、パリなどの欧州諸国の主要都市と比較すると低率だ、そう書いています。
 まずお尋ねしますが、既に道路率が二〇%を超えているニューヨーク、パリなどの欧米諸国の主要都市と比較すると低率だといっていますが、その出典は何も記載がありません。出典及びニューヨークやパリの道路率というのは一体いつの資料なのかお答えください。

村井道路建設部長 ニューヨークやパリの道路率は、国が監修している一九九九年版の道路ポケットブックに記載されたものを引用したものであります。

原田委員 今、一つちょっと答弁漏れがあるんですけど、九九年のポケットブックに書いてあったというのはわかりましたけど、そのポケットブックには、ニューヨークやパリの道路率、いつの調査だと書いてありますか。

村井道路建設部長 調査時点については記載がございません。

原田委員 つまり、二十年前のポケットブック、資料をそのまま使っている上に、その時点でもニューヨークやパリについていつ調べたのかもわからないデータなんです。余りにもお粗末な話ですよ。その数字を行政の事業を説明する文書に掲載していていいんでしょうか。そんな資料をもとに、区部の道路率は一六・五%だ、一方、ニューヨークやパリは二〇%を超えているというんですが、この道路率は果たして同じ基準として見ていいのかも問われます。
 といいますのも、先ほどおっしゃっていたように、区部は既成市街地であるとおっしゃって、要は、公園も川も農地も全部ひっくるめた全面積を既成市街地扱いして、その中に道路が占める割合は一六・五%だというふうにいっているんです。公園も農地も川も全部分母に入れている。しかし、ニューヨークやパリはどうかと。私も道路ハンドブックを拝見しましたが、既成市街地面積に占める道路の割合とされているんですけれども、じゃあ、このパリとニューヨークの既成市街地の基準、定義、全く書いていないんですね。
 そこでお尋ねしますが、区部と比較しているニューヨークやパリの既成市街地の定義は同じである、こう断言できますか。

村井道路建設部長 既成市街地とは、首都圏整備法第二条によると、東京都及びこれと連接する枢要な都市を含む区域のうち、産業及び人口の過度の集中を防止し、かつ、都市の機能の維持及び増進を図る必要がある市街地の区域とされております。
 具体的には同法施行令により定められておりまして、東京都の特別区の存する区域及び武蔵野市の区域と三鷹市横浜市川崎市及び川口市の区域の一部となっております。
 ニューヨークやパリについては、既成市街地の定義についてはポケットブック等には記載がございません。

原田委員 ニューヨークやパリの既成市街地の概念は、何と定義が記載されていないということだったわけですね。
 東京都は既成市街地の定義について、国土交通省から確認した上でこの数字を使ってきたんですか。

村井道路建設部長 現在、ポケットブックの記載内容については直接確認をしておりますが、まだお答えはもらっておりません。記載については、今回確認したかどうかについては不明でございます。

原田委員 率直な答弁でした。要するに、既成市街地の定義について東京都はわからないままこの数字を使ってきたと。驚くべきことです。これでは正確な比較ができるはずがないじゃありませんか。
 実は、かつてこの道路ポケットブックに書かれた既成市街地について、日本共産党の東京都委員会の政策部という部署があるんですけれども、そのメンバーが、今から十年以上も前のことですけれども、国土交通省の担当者に問い合わせをしたことがありました。そのときは、ポケットブックに書かれたニューヨークやパリの数字は、もともと昭和五十三年、すなわち一九七八年の数字なんで、出典は今はもうわかりませんと、そういうふうに答えたというんですね。何と引っ張ってきたのは今から四十年前の数字だったんですよ。
 その上で、この既成市街地とは何ですか、これも質問しました。すると、道路ポケットブックで使ったのは、DIDと呼ばれる概念で、一平方キロメートル当たり四千人以上が隣接している地域だといわれたと、こういうことです。知っていましたか。
 つまり、東京都区部の一六・五%という数字は、川も公園も、こういうものを全部ひっくるめて総面積を分母にして道路面積を割って出していると。ちなみに、区部で水面だけで五%あります。公園は六・五%面積を有しています。こういうのも全部分母に入れて道路を割っていると。
 ところが、もう一方のニューヨークやパリは、DID、純粋な市街地を取り出して分母にしているわけです。これでは数字が大きくなるのは当たり前で、正しい比較ができるはずがないんです。
 東京都は既成市街地の定義も確認しないまま、古くて怪しいデータをもとに国際比較をして、都民に向かって、それこそ私たち議員にも公式文書で、東京は国際的に立ちおくれているんだといってきたわけです。これも行政の姿勢として重大な問題ではありませんか。
 では、道路率について、頼りになる国際的な大都市比較の資料はないものだろうかと調べてみましたが、何と東京都環境局が環境白書二〇〇六で、東京、ニューヨーク、ロンドン、パリの比較をやっていました。
 これを見ると、興味深いのは、まず東京とニューヨーク、ロンドン、パリとは、行政面積がそもそも大きく違うわけです。東京都の総面積はパリ市の二十倍以上あり、森林や島も含みますから、これを単純比較してもおかしくなります。ですから、東京都は都心四区、ニューヨークはマンハッタン区、ロンドンは都心四区、それとパリ市を比較して道路面積を調べてみたと。
 その結論はこうです。マンハッタン区だけは突出して三〇%近くぐらい道路率があるわけです。二九%、三割近くあるわけですけど、東京都とロンドンの道路率は二二%から二三%、ほぼ等しくて、パリについても区分の違いを考えれば、つまり、パリの場合は道路交通施設率で二五・八%となっていますから、交通施設の分を除くとほぼ同水準と考えられるんだと。これは私がいっているんじゃなくて環境局がいっているんですね。
 少なくとも、この環境局の資料は、四都市とも総面積で道路面積を割り返すというように分母をそろえています。その上、面積も大体同じものにそろえるという点で、より精密な比較となっています。分母の基準が不明の建設局が出した道路率比較とどちらが的確な比較をしているかは明白ではないでしょうか。
 そして、このような環境局の調査を前に建設局は、欧米諸国の主要都市と比較すると東京区部の道路率は低率だと今でもいい切れるんでしょうか。そもそも建設局は環境局のこの報告を知らなかったんじゃないのかというふうに疑問というか、そういう指摘をせざるを得ない状況に陥っています。 

 このやり取りの、ほぼ全体が私が調査したことを使ってくれています。

 今私は共産党の福岡市議団事務局にいるので、議員の質問作りに参加するのはごく普通のことですが、10年以上前のあの日、東京都はとんでもないデタラメなデータをもとに道路建設の必要性を書いているとわかってもそれを議会質問にしてもらえるようなルートはなかったので、悔しいけどペンネームのほうのサイトにそっとあげるくらいしかできませんでした。まあ、とにかくあの時本当に悔しかったのです。しかしこうして議会質問として日の目をみることができて大変嬉しい気持ちになりました。

 

 取り上げてくれた都議団の皆さん、ありがとうございます。