松竹伸幸さんの裁判に連帯し応援する

 松竹伸幸さんは日本共産の本部で安保・外交の政策を担当していました。松竹さんの党除名は、私がそれに異論を唱えたために、党幹部ににらまれ、ありもしない「規約違反」の汚名を着せられ、党を追放されるきっかけになった問題です。

松竹さんの母校(私もこの周辺の街に2年ほど暮らしましたが…)

 私は例えば、共産党が参加する政府(民主連合政府)において安保条約を廃棄すべきだと一貫して訴えてきましたが、松竹さんの主張する政策について賛成している点もあるし、反対している点もあるし、どちらでもない・微妙だなと思っている点もあります。松竹さんのいうことならなんでも賛成とか、松竹さん掲げる主要な政策・政綱はほとんど支持しているとか、そういう立場ではありません。

 

 また、松竹さんは党大会に向けた除名の再審査を求め、除名を撤回してほしいと多くの人に向かって書いたことをもって、党幹部は松竹さんを「党破壊・撹乱」をする人だと呼んでいました。そして、党幹部は私について「党破壊・撹乱」の「同調者」「擁護者」だと党員に宣伝して回りました。

 しかし、私はそのような「党破壊・撹乱」などをしたことはありません。その同調や擁護をしたこともありません。

 

 もちろん、私が除籍前に松竹さんと分派を組んだという事実もありません

 

 つまり私はいかなる意味でも、松竹さんの政策的同調者ではないし、誰かの「党破壊・撹乱」に同調・擁護をしたこともないし、「松竹一派」すなわち松竹さんと一体の分派でもないのです。これらは党幹部が私の罪をでっちあげようとして、1年半も私を「調査」してもひねり出せなかったものです。そんな事実がないからです。

 

 しかし、私は松竹さんの除名には重大な瑕疵があると考えています。

 松竹さんの除名理由は4つあり、それぞれにそれが本当に成り立つのか、疑いがあります。日本共産党規約において、「除名は、党の最高の処分であり、もっとも慎重におこなわなくてはならない」(54条)と定められているように、除名の理由に一つでも瑕疵があれば、それは「もっとも慎重におこな」ったとは言えないものであり、処分を見直すべきです。

 もともと23年2月の県委員会総会で発言したように、私は4つの除名理由にはそれぞれ根拠がない・疑わしいと思っています。

 中でも、松竹さんが「分派」をつくったという話は出版編集者としての打ち合わを「分派」のように見なすなどまじめに相手をするのが馬鹿らしいほどの難癖ですし、松竹さんが党中央に意見をあげなかったことを除名理由にするのは権利を義務と混同した、1グラムも除名理由にはならないものです。

 さらに、その後わかったことは、いっそう重大でした。

 さまざまありますが特に私がひどいと思ったのは、規約違反があったかどうか、その上で除名処分にすべきかどうかは、他でもない松竹さんが所属していた支部で決めるというのが規約の規定(50条)ですが、地区委員会・京都府委員会はこの規定を踏みにじってその権限を勝手に取り上げて処分を決めてしまいました。支部の指導部は同意していないと証言しています。

 

 規約で「もっとも慎重におこなわなくてはならない」と厳しく定めているものが、穴だらけだったわけで、とてもこのままにしておくわけにはいきません。

 私がルール違反をしたのではなく、党幹部が規約を踏みにじる運営をすることによって、まさに党組織を私(わたくし)していると考え、その是正を訴えて裁判に臨んでいます。これこそ、党幹部が自分の気に入らないものを排除するまさに規約3条「意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない」の蹂躙そのものなのです。

 

 松竹さんの問題はまさにこれと共通する問題を是正するものです。

 自分とは違う事件ですが、そこに同じ問題を見出したわけです。

 したがって、私は、松竹さんとは政策的・政治的な主張に異同はあっても、彼の裁判に連帯し、応援する立場をここで明確に表明したいと思います。

www.j-cast.com

 

松竹さんの裁判を傍聴して

 2024年11月14日に、私は松竹さんの裁判を傍聴しました。

 傍聴席は文字通り満席になっていて、廊下で待っている最中に傍聴に駆けつけた皆さんとお話しする機会がありました。そうすると少なくない方が、松竹さんとの自衛隊論や安全保障政策での違い、「慰安婦」問題での解決方向の違いを口にされました。政治的に考えていることがかなり違うという点があるのです。

松竹さんの裁判の報告集会(24年11月12日、都内)

 にもかかわらず、その人たちは、松竹さんの裁判を応援するために傍聴に来ていました。私もまさに同じ気持ちでした。「松竹裁判を応援するのは安保容認だ」「松竹さんの裁判を支援しようとする者は『慰安婦』の反動的解決を目指しているのだ」という一部の意見は、原則的にそもそも間違っていますし、実体的に松竹さんの主張をほとんど読んでいない粗雑な議論です。

 

(一例ですが、ブログ読者の皆さんは「共産党も参加する民主連合政府において日米安保条約を廃棄する」ことに、松竹さんは賛成しているか反対しているか、答えることができますか?)

東京の国立駅前。久々に散歩しましたが、私が住んでた頃とは様変わりです。

 

 

答え:

 松竹さんは、共産党が参加する民主連合政府で安保条約を廃棄する立場であることを繰り返し本の中で述べています。

私〔松竹さん——引用者注、以下同〕は、第二段階〔民主連合政府で安保条約廃棄の国民合意ができたが自衛隊の解消は国民合意がない段階〕で安保条約が廃棄されることも、第三段階〔民主連合政府で安保条約廃棄も自衛隊解消も国民合意ができた段階〕で自衛隊の解消に取り組むことも支持している。だから、第二段階における党の基本政策が安保条約廃棄であることについても、何の疑いも持っていない。松竹伸幸『私は共産党員だ! シン・日本共産党宣言Ⅱ』文春新書、2024年、p.113)

 

私〔松竹さん〕は綱領や大会決定の通り、第二段階で日米安保をなくすことを支持しています。(松竹『不破哲三氏への手紙 日本共産党をあなたが夢見た21世紀型に』宝島新書、2023年、p.122-123)

 

3人の弁護士の話を聞いて

 「共産党不当解雇裁判をはじめるつどい」が2024年11月12日に都内で開かれました。会場いっぱいに来ていただいた皆さん、ありがとうございます。

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 ここでお名前や肩書きを紹介することはできない方も少なからずいらっしゃいます(そして会場や会場外で渡してくれた募金、本当にありがとうございます)。

 「ご飯論法」で流行語大賞トップ10を共同受賞した上西充子教授もご参加していただきました。会場でお見かけしてびっくりしてしまいました。上西さん、ありがとうございました。

 私の裁判には2人の弁護士がついてくれています。私の拙い主張を訴状という法律形式の形に見事にまとめてくださったお二人に深く感謝します。まずは、ぜひお二人の渾身の力作である訴状をお読みください。本当にいい出来だと思い、久々に乗った東京の移動の電車でもなんども読んでいます。 

 加えて、報告集会では、特別ゲストとして、川人博弁護士にあいさつをいただきました。

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 ご存知の通り、川人博弁護士は、過労死問題での取り組みであまりに有名であり、私も学生時代から尊敬していました。最近では宝塚のパワハラ問題で遺族側代理人を務められ、私が務めていた共産党福岡市議団でも話題になっていました。

 その方から、あいさつをいただけるなんて、夢にも思いませんでした。

 以下、つどいでの川人弁護士のあいさつを紹介します。(文字起こしは引用者)

 弁護士の川人です。私なりにこの裁判がとても重要なものだと感じておりますので、いくつかお話ししていきたいと思います。

 この裁判は私の理解では二つの性格を持っていると思うんですね。

 一つは、政党の構成員の人権問題。この点は松竹(伸幸)さんの裁判と共通する問題だと思います。具体的にはその政党の構成員だった神谷さんが組織幹部によって集団的な威圧を受け、ついには結社に参加する権利を奪われて、そして組織から排除されたということですので、そういう事実関係があればそれは違法というレベルにとどまらず、憲法の13条、人間の尊重・尊厳を否定するものでありますし、あるいは19条の思想・良心の自由を否定するものでありますし、そしてまた21条の結社の自由を否定するものであり、文字通り憲法違反の重大な行為であります。

 この点が松竹さんの裁判に続き東京地裁で提訴することになったということですし、重要な意義を持っていると思います。

 同時にもう一つ、神谷さんの裁判については、性格があって、これは先ほどの弁護団の先生からもお話ありますように、政党の専従勤務者の人権問題という性格を持っていると思います。

 政党の、福岡の方で専従者として勤務していた神谷さんに対する県組織による人権侵害で、政党からの給与による収入で生活をしていて、また給与だけでなく厚生年金、あるいは健康保険、これらも入っていますよね(神谷「入っています」)、入っています、そういう加入資格を得てずっと福岡で活動・仕事を続けていらっしゃったわけで、今回の解雇によってこうした生活収入、あるいは日本の福祉制度の利益を享受する資格が奪われるということになります。

 これは憲法の勤労の権利という問題を否定するものでありますし、あるいは、労働基準法、労働契約法その他様々な労働法規に違反する重大な違法行為であると思っております。

 この政党の専従勤務者の方というのは全国でも多数いらっしゃると聞いておりますし、その方々の中には神谷さんと同じようにハラスメントを受けていろんな意味で人権侵害を受けている可能性があると思います。

 いうまでもなく、政党の勤務従事者も通常の民間会社に勤務している人も様々な収入を得て日常生活を送る必要があるわけですね。したがって、専従勤務者の人たちがその実態に見合った賃金を請求し、あるいは、様々な福祉を享受するというのは当然の権利としてあるわけです。

 ところが、政党レベルの話になった時に、この当たり前の大原則というものがあるときは「革命のため」とか、あるときは「世のため、人のため」とかいうことで、そういう名目でないがしろになっている。そういう実態があるように思います。

 今から47、8年くらい前に、裁判所でやや似た事案で日本共産党の側の主張で次のようなものがあるんですね。

日本共産党の専従者は、すべてその生命、生活の全てを結社の目的実現に向かって捧げてゆくことを当然の任務としている。この専従者に対する『給与』は、…日常不断に…党任務の遂行を物質的に保障するために支給される活動費である」

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/600/019600_hanrei.pdf

 逆に言うと「賃金ではない」(と党側が述べている)。これの中で当時明確に「労働者ではない」「労働契約ではない」んだと。革命のために命を捧げた集団であって、こういう理屈を50年近く前に公然と主張しておりました。

 果たして今回の訴訟で答弁書で正式にどのように主張してくるのか、とても重要なところだということで、私も思っているところです。

 やはり今の世の中で、様々な政治活動をしていく上で、普通に収入を得て生活するっていうことは、絶対条件ですよね。そういう当たり前のことを、当たり前のこととして、認めるようなそういう組織でなければいけないというふうに思います。

 したがって労働法規に基づいて様々な規制を受けるということも当然必要であると考えております。

 今回のように政党の幹部が合理的な根拠なくして組織から気にくわない人を排除すると。こういうことが横行すると、それを見た専従勤務者の方々はやはり自分の生活を守るために、身を守るために、理不尽なことがあっても幹部の指示に対して、なかなか反対できない、というふうな気持ちになるということは、ありうることなんですね。

 賃金を得て生活する人にとって組織からの指揮命令に対して従属せざるを得ない。そういう立場から、それは政党においても、どうしても上司に対して、上のものに対して、忖度するということが生じ得ます。

 問題は、そういうことによって結社の自由、政党の中の民主主義がより機能しなくなる危険性を帯びていくわけです。つまり今回のような神谷さんに対する、専従者に対するやり方が、許される・横行する・黙認される、ということになれば、政党における民主主義というものがますます機能しなくなる。そのように私は思います。

 そういう意味では今回の裁判は松竹さんの裁判と同様に、また、独自の意味を持って、とりわけ重要な専従勤務者の権利を擁護するものとして私は注視し、応援していきたいとそのように考えている次第であります。

 

抽象的な制度ではなく個人の具体的な尊厳が先にある

 弁護団の主張は先ほど述べたとおり訴状に結実しています。

 ただ、弁護士のお二人(平裕介・松尾浩順の両弁護士)の立場として、改めて自分なりに考えさせられたことがありました。

 それは「結社の自由」というものを考えたとき、私たちはつい「結社」という抽象的なものの自由を考えてしまいがちです。

 しかし、そこには結社をした一人ひとりが権利を守られ、幸せになるということが想定されてるはずです。ノッペラボーな「結社」が栄えて、一人ひとりが我慢させられ抑圧される——そんなことがあっていいはずがないのです。

 だから結社の自由を結社という抽象的な団体の利益ではなく、そこの構成員一人ひとりの利益を具体的にイメージすることが必要だ。

 こういう考えで弁護団の思想が組み立てられています。

 私などはつい、理屈だてから入って、抽象的な「結社」というものの利益を優先してしまいがちだったな、と思いました。それは無意識に自分の中にあった全体主義だとも言えます。個人の尊厳から問題を考えていないということです。

 これは弁護団のお二人が、食事の時に象徴天皇制について議論しているのを聞いても、そういう「個人の尊厳」という思想を読み取りました。

 すなわち、天皇が譲位したい、と突然言いだした事件が最近ありました。あの事件は、象徴天皇制から見れば政治のコントロールを超えた逸脱ではないか、ということを、私などはつい考えてしまいがちなのです。

 しかし、そこにいかに天皇といえども、人権はあり、彼が高齢となってその人生を穏やかに暮らしたいと願う権利があるのではないかという話になりました。私は「個人の尊厳」という角度からその発想を立てられず、象徴天皇制という制度の理屈を優先させていたのではないか、とものすごく反省したわけです。まさに自然な「自己批判」でした。*1

 

 次は、松竹伸幸さんの裁判について、私はどういう立場で臨むかをお伝えします。

*1:党幹部の皆さん、これが本当の道理の力による自己批判です。追放するぞと脅しつけて自己批判を迫るというやり方がどんなに罪深いか、そして道理や納得によって人を動かすという力がない人間のやることなのだとぜひ「自己批判」してほしいものです。

共産党不当解雇裁判を支援する募金

 私は共産党幹部から、ありもしない「規約違反」に問われ、不正な手続きとパワハラで追放されました。除籍・解雇の撤回、パワハラを償わせることを求め、2024年11月12日に東京地裁提訴することにしました。

 この裁判(共産党不当解雇裁判)を支援していただく募金を呼びかけます。

銀行名:セブン銀行

支店名:ハイビスカス支店

店番号:108

口座番号:普通 2198241

口座名義:神谷 貴行(カミヤ タカユキ)

 「共産党不当解雇裁判を支援する会」がすでに立ち上がっています。「支援する会」でクラウド・ファンディングや団体としての口座作りにチャレンジしてもらいましたが、うまくいきませんでした。そこでまず、私個人名義の口座で募金をスタートさせます。

使い道と会計報告について

 募金は、主に裁判費用を支援するためのものです。

 もし最高裁まで争うことになれば数百万円かかる見通しです。(この募金で各地での報告会をはじめ支援運動にも使いたいのですが、とてもそこまでの余裕はないと思います。)

 「支援する会」で総会を開いて会計報告を適宜おこない、集まり具合や使い道についてみなさんにインターネットなどで公開いたします。 

 

泣き寝入りしている人たちの分も

 裁判に費用がかかるだろうとは思っていましたが、やはり金額の見通しを聞いて、クラクラしました。そして何年もかかる可能性があります。

 それだけの手間やお金をかけて裁判をやろうという意思がある人、また、条件のある人というのは、そんなにいるわけではありません。

 しかも、私の場合、党幹部がこちらの不注意やミスを突いてくるかもしれないので、ルール違反を絶対に侵さないよう細心の注意を払いましたし、「言った・言わない」にならないよう記録や第三者の証言をきちんと集めることもかなり意識的に行いました。しかしいきなりそんな準備をできる人も、やはりあまりいないと思います。

 そうなると党幹部からどんな理不尽な目に遭わされても、これまでは裁判まで起こすことは絶望的に難しかっただろうと思いました。ハラスメントや不当な除籍を受けながら、泣き寝入りした人がたくさんいるはずです(すでにいろいろ聞いています)。

 私には幸いにも(?)裁判を起こせました。

 こうした裁判をしたくてもできなかった人たちの分も代弁する意味を込めて、共産党幹部の不正をただし、共産党を立て直すために裁判をがんばりたいと思っています。

 ぜひ募金の形で応援をお願いします。



共産党不当解雇裁判をはじめるつどい」(11/12)

 すでにお知らせしましたが、提訴する11月12日の午後4時から、東京都「DAYS赤坂見附」5F会議室にて記者会見を兼ねた報告集会(共産党不当解雇裁判をはじめるつどい)を開きます(1時間半程度)。

 どなたでも参加できますので、関心のある方はぜひお越しください。

 

私の裁判の弁護団を紹介します

 共産党を不当に除籍・解雇された私が裁判を起こすということは前にお伝えしましたが、私の裁判を担当する弁護団の弁護士を紹介します。

 平裕介弁護士と松尾浩順弁護士です。

and-lawoffice.com

lawoffice-k.com

 お二人にたどり着くまでに長い紆余曲折がありました。

 行政がやっているような法律相談で出会った弁護士にいろいろお会いしましたが、一般論を述べるだけで、私にとって有益なアドバイスはほとんどありませんでした。ただそれは弁護士の方の問題というより「共産党との裁判」というあまりに特殊な状況のために、「自分はわからない」というような感じでした。

 ハラスメントについては「面倒そう」という対応をされる場合もありました。パターンが決まった労働問題の裁判はやりやすいけど、ハラスメントの立証は、ある種の弁護士にとってはやはり依然としてハードルが高いのかなと思いました。

 人権派と呼ばれている弁護士の方にもいろいろお会いしました。「ひょっとして党側に全部漏れたらどうしよう」という不安があり、そもそも声をかける弁護士に迷いました。いざ声をかけてみて、こちらが詳しい経過も話さないうちから「あなたが反省文を出せば」と冷たい「アドバイス」を言われたこともあります。

 非常に熱心に話を聞いてくれる弁護士もいたのですが、依頼の条件が合わなかったり、残念ながら「利益相反」(共産党側の仕事を受けている)ということで引き受けてもらえなかったりもしました。すでにお二人に決まった後に、私の除籍・解雇を知ってお声かけいただいたという方もいます。(これらの人たちには深く感謝しています。)

 

 私は、自分が共産党の議員団事務局として住民の相談に関わっていたときには、弁護士につなぐことは全くなんでもない話でした。ところが、「共産党を相手どる」となったとたん、これらのリソースが一切断ち切られてしまったのです。

 しかも「政党、しかも共産党を相手に除籍・解雇の撤回、ハラスメントの損害賠償を求める」というのは相当特殊な状況なので、そういう裁判をやったという前例が回りにまったくありませんでした。

 太平洋のど真ん中で、食料も水も羅針盤もなくボート1隻のまま、置き去りにされたみたいな気持ちになりました。(そういうリソースに出会えない住民の心細さということが、少しはわかった気がします。)

 

 そんな中でようやく二人の弁護士の方に出会えたという嬉しさを理解していただくことができるでしょうか? さっきのたとえで言いますと、大海のど真ん中でボートを浮かべて途方に暮れていたところに、大きな客船が通りかかったみたいなものです。

 

 平弁護士は、表現の自由の問題で私のペンネームの方のXのタイムラインにもよく投稿が表示されていた方で、「宮本から君へ」事件裁判で勝利を勝ち取ったことで私の記憶に鮮明に焼き付いていました。そして何より、共産党を除名された松竹伸幸さんの裁判の主任弁護士もされています。

 松尾弁護士は、平弁護士の紹介でご縁ができました。これまで打ち合わせの中で何度かやり取りさせていただきましたが、私の解雇・除籍について深く理解してくれて、明晰な回答や方向性を与えていただいています。個々の対応についてもアドバイスをもらっています。

 このお二人を力を借りて裁判をたたかおうと思っています。

「東アジアサミットの活用」という公約でいいのか?

 以下の記事は総選挙中に書いたのですが、あまりアップする気になれませんでした。選挙が終わった今、やっぱり出してみようと思って出します。

*       *      *

 日本共産党は、自民党政権の戦争国家づくりに対して平和外交を訴えています。そのカナメの一つが東アジアサミットの活用です。

いま日本がやるべきは、軍事的対応の強化ではなく、ASEAN諸国と手を携え、「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)の実現を共通の目標にすえ、すでにつくられている東アジアサミットを活用・発展させて、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法9条を生かした外交である。

 共産党の予定候補や地方議員が街頭や集会の演説でもよく訴えていらっしゃいます。それほど共産党の政策にとっては、重要な会議です。

 自分たちと価値観を共有する国だけを集める「ブロック政治」ではなく、すべてのメンバーをテーブルにつかせる「包摂的外交」を呼びかけたものです。10月25日付の毎日新聞に載った岩間陽子・政策研究大学院大学教授の“アジア版NATOよりアジア版OSCEを”という呼びかけはこの観点ではないでしょうか。

 

 志位議長はヨーロッパでの安全保障への提起としてこのOSCEの再活性化を呼びかけています

ウクライナ侵略を終わらせ、欧州の平和と安定を回復するうえで、きわめて困難であってもOSCEの再活性化が重要になってくるのではないかと考えるものです。

 共産党の提案は、この「アジア版OSCE」を、「今ある枠組みの能力」(岩間)として「東アジアサミット」を舞台にして行おうというふうに読めます。

 

 ところで、この東アジアサミットが2024年10月11日に開かれ、13日に議長声明が出ていたことをみなさん(特に共産党員や、共産党の予定候補や地方議員の方々)、ご存知だったでしょうか?

 知らない…という共産党員や共産党の地方議員、予定候補の方々はけっこういらっしゃいます(最近ある地方の共産党の国政候補者に聞いた話ですが、被団協のノーベル平和賞受賞さえ知らない方が共産党集会への参加者でも少なからずいらっしゃったそうです)。

 「しんぶん赤旗」でも報道しています(下写真:13日付=右と14日付=左)。

 ただ、あれほど政策においては重要視している会議なのに、赤旗での報道は非常に扱いが小さいのではないかと私は常々思っています。党から不当解雇される前のことですが、私が知っている共産党の地方議員の方で、東アジアサミットの実際の中身に関心を持っていらした方はほとんどいませんでした。

 まず、扱いがだいたいは国際面で小さいことがほとんどです。1面・2面にくることはなかなかありません。

 中身も客観報道が多い。党としてどこが問題だったのか、どうすべきだったのかを評論したものはほとんどありません。

 

 東アジアサミットは、そもそも自民党政府が参加しており、石破首相自身も今回積極的に訴えを行なっています。

www3.nhk.or.jp

 

 議長声明ではASEANの平和構想であるAOIPの支持強化を打ち出しています。これは先ほど紹介したように、日本共産党自身が高く評価している構想です。

 そして、自民党政府も、共産党の国会での度重なる質問において、だいたい「AOIP支持」を答弁しています。

山添拓 二〇一九年のASEAN首脳会議で採択されたASEANインド太平洋構想、AOIPは、東南アジア友好協力条約を指針に、東アジア規模での友好協力条約を展望する構想です。現に、ASEAN十か国に加えて日本や米国、中国など八か国が参加する東アジア・サミット、EASが存在します。これを活用し発展させる外交ビジョンを持ち進むことにこそ東アジアの平和への展望があると考えます。答弁を求めます。

岸田文雄  東南アジア首脳会議、EASと東アジアの平和についてお尋ねがありました。
 東アジア首脳会議は、米中も含む各国首脳の間で地域共通の課題について率直な対話を行うことができる重要なフォーラムです。同時に、我が国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPと本質的な原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを一貫して強く支持をしております。
 ASEANを含む関係国と緊密に連携しつつFOIPを推進していくとともに、AOIPに示されているような地域の平和と繁栄に積極的に貢献していく考えであります。

(2023年3月27日参院本会議)

 

 そうなると、当の自民党政府自身がAOIPを「支持」し、東アジアサミット(EAS)を「活用」しているわけで、共産党が主張する「AOIP支持」「EAS活用」は自民党政府自体がすでにやっていることになってしまいます。「軍事的対応の強化一辺倒」(共産党の提言より)という自民党政府に対する批判が成り立たなくなってしまうのではないでしょうか。

 

 「いや、大軍拡をやっているからAOIPやEASを裏切っているのだ!」「自民党政権はAOIP推進と言いながら、ブロック政治であるFOIPを推進しているのは矛盾だ!」というのであれば、大軍拡やブロック政治を止めることが政策であればよくて、わざわざAOIP支持やEAS活用を共産党の政策にする必要はありません。

 

 そうではないはずです。

 本来、東アジアサミットではどのような訴えが必要なのか。その角度から見て、今回のサミットは成功だったのか、失敗だったのか、を評価すべきではないでしょうか。そうでなければ「東アジアサミットを活用すべきだ!」と言っても「え…あ、はい…活用してますけども…」みたいな反応をされてしまいます(実際国会答弁はこんな感じになってしまっています)。

 

 東アジアサミットの「活用」だけでは正直、公約にならないと思います

 少なくともこの方向を提起すべきだ、という内容を掲げ、その基準で現在の政府の外交を批判・評価すべきではないでしょうか。

 もちろん、日本共産党アジア政党国際会議で提起し、最終的に宣言に「ブロック政治を回避し、競争よりも協力を強調する」という話は知っているし、それを入れ込むことが予定されているというかもしれません。

 あるいは「日中両国関係の前向きの打開のために」で提言した3つの柱を提案すべきだということかもしれません。

 しかし、東アジアサミットをそこまで重視しているなら、一回一回の会議で何を提起するかを丁寧に打ち出したり、申し入れたりして、その申し入れとの関わりで会議がどうだったのかを評価する必要があるのではないでしょうか

共産党などに裁判を起こします

 2024年11月12日(火)、私は日本共産党と同福岡県委員会に対し、裁判を起こします(東京地裁)。

 私への不当な除籍・解雇を撤回させ、パワハラを償わせようと思います。

 私の生活や尊厳がかかった切実なものですが、同時に共産党を立て直す一助になるはずだと信じています。

 同日記者会見の後、16時からDAYS赤坂見附(5F会議室)で報告集会を行います。

 メディアの方はもちろん、関心のある方は、ぜひお越しください。もちろん共産党員の方も大歓迎です。私に疑問・批判がある方もどうぞ。

 担当の弁護士やカンパ先など、詳しいことについては、続報いたします。

総選挙の結果について

 2024年の総選挙の結果が出ました。

 与党の過半数割れなど、日本の政治のゆくえのことはもちろん言いたいことはありますが、ここは日本共産党のことにしぼって書きます。

新幹線で見る田んぼはどんどん埋まっていくなあ

 日本共産党は10議席から8議席へと減らしました*1。他の野党*2と比べてみると、立憲民主党やれいわ新選組が躍進し社会民主党議席を維持する中で、いわば一人負けという状況です。

 得票も比例で言えば416万から336万へと100万票近く減らし、近年まれにみる低さとなりました*3国民から厳しい審判がくだったと言えましょう。

 

共産党は閉鎖的」「自由がない」というイメージ

 選挙戦の最終盤には共産党自身が「大激震」が走ったと述べた赤旗の2000万円問題での特大スクープもあったはずなのに、なぜこんなことになったのでしょうか。

 要因はさまざまあるでしょうから、今後事実などにもとづいて分析すべきであり、今から早急に一つにしぼるわけにはいかないでしょう。

 

 しかし、結論から言えば、記者クラブの質問にあったように「共産党は、極めて閉鎖的な政党ではないかというイメージもどんどんでき上がっ」た結果、共産党に託すのではなく他の党に託してしまった、あるいは共産党に増えてほしいと思ってがんばっていた人が次々離れて運動量がしぼんでしまった、ということは、要因の一つとして、間違いなくあったのではないでしょうか。

 もっと短く言えば、共産党は閉鎖的」というイメージが沈殿し、託す動き・広げる動きが弱まった。それが全てではないが、一因であった、ということです。

 

 2023年2月に松竹伸幸さんが共産党除名されて大きな騒動となりました。今回の総選挙は、実は松竹さん除名後、初めて迎える国政選挙でした。いわばその影響や蓄積が現れる選挙戦だったわけです。

 その間に、松竹さんの処分に異論を唱えた人たちの排除、党大会での異様な結語とネットでの拡散、さまざまな経緯での地方議員の離党、そして私の解雇・除籍、さらに私をかばった砂川絢音さんの除籍や、全国各地での除籍へむけた動き…。無数に続きました。

 私のいる福岡では、私の問題とは別の形で始まった、民青同盟に集う青年たちへの、党県委員会による徹底弾圧がありました。しかもその中で、私への人権侵害はおかしいと声をあげた青年たちをもいじめて追放する動きを加速させたのです。排除された青年たちと話す機会がありましたが、本当にすばらしい活動家ばかりで、明らかに共産党と日本の政治の未来を背負って立つ人たちばかりでした。ところが党幹部は、いわば共産党の宝ともいうべき人たちを、執拗に壊して回ったのです。異常としか言いようがありませんでした。

 この動きの中にいなかったけども、地域の中核となっていた若い党員も、こうした党幹部のやり方に怒り、呆れて、党を去っていきました。

 今回の選挙で福岡に立ち寄った、ある東京暮らしの党員は「前回と比べて福岡の民青の人たちの姿が選挙で全く見えないのでびっくりした。確か福岡は数の上では近年かつてないほど民青が増えているはずなのに、一体どうしたんですか」と私に話しかけてきたのが印象的でした。

 各種の追放やパワハラ告発や弾圧など選挙には何も影響がなかった、この点における党幹部の対応はすべて正しかった——そんな選挙総括を続けるつもりでしょうか。本当になんの曇りもないのでしょうか。

 

 「お前のせいでマイナスイメージが広がったんだ!」…とおっしゃってくれる人がいたとしたら、それはちょっと買いかぶりです。

 広い有権者が私の除籍の話など、いちいち細かく知っているはずはありません。

 しかし、松竹問題以来の党のありようが、記者クラブで問題にされ、地方議員が離れ、コアなファンが次々去っている…という中で、投票行動を起こす層や近づいてきてもいい層に、なんの影響もなかった、一切関係なかった、と本当に言えるでしょうか?

 共産主義には自由がない」というイメージがあるから、その払拭をねらって、選挙前の3中総ではそのことを学び語り合う「大運動」を始めたはずですよね? つまり、そういうイメージの沈殿があったことは党員であれば誰でも否定できないはずなのです。

 

 今回ばかりは自民党公明党を懲らしめよう。

 さて、投票先を野党の中から選ぼうか。

 ——そう思ったときに、「共産党は、まあ…やめとこうか」と思って選んでもらえなかったわけです。

 そういうふうに、選択肢から除外されてしまったときに、現在の共産党の「閉鎖的」イメージが影響していないとは言い切れない。

 そう私は思います。

 このプロセスのリアルな現れは、共産党とれいわとの関係のうちに生じたと思います。今度の選挙では、共産党が10→8議席に衰退し、れいわ新選組が3→9議席へと躍進しました。れいわがいいとか悪いとかいう話ではなく、共産党の元の支持層や、本来共産党に来るべき層がごっそりそっちに行ってしまった、というのはリアルなところではないでしょうか。*4

 なぜ共産党が選ばれなかったのかを考えたときに、まさに共産党の「閉鎖的」「自由がない」イメージがあったということができると思うのです。

 

 なんども申し上げますが、今回の後退の要因の全てではありません。

 しかし影響の一端はあったのだと私は考えます。

 

私が23年4月に党中央に意見を提出したことがそのまま…

 私は、松竹さんの除名が起きてすぐに行われた2023年4月統一地方選挙の後、まだ私は党県委員会の常任委員であり県党の政策論戦部長でしたが、党本部から選挙の感想を出すように言われて(県の常任や候補者・地区委員長が全員求められた)次のような感想文を提出しました。

 

統一地方選挙の感想

神谷貴行(2023年4月)

 

(1) 

 松竹神幸氏らの除名をめぐる問題は、これまで党に好意的だった知識人からも批判の声が上がりましたし、私の知っている人でも共産党の対応を怖がって、もしくは不満に思って投票をしませんでした。根本的な原因ではないにせよ、前半戦にも後半戦にも「共産党は異論を許さない政党だ」というイメージを形成し一定の影響を与えたと言わざるをえません。 

 「共産党は異論を許さない政党だ」というイメージは厳密には「誤ったイメージ」ですが、別の形で厳密に言えば「共産党の建物の中では異論をいえるが、建物の外(社会)に出たら一言も異論を言うことは許されず、連絡を取ったり、外で異論を言ったりすれば除名される政党だ」という「正しいイメージ」で理解されたとしても、市民感覚からすれば「恐ろしい政党」であることには変わりなかったと言えます。また、メディアが松竹氏除名への党の対応を批判したことを、「結社の自由」を理由に、政党の運営にメディアが意見を述べること自体が「乱暴な介入」「干渉」 であり、憲法上の権利(結社の自由)への「攻撃」だと志位委員長*5表現したことは「異論を許さない政党」というイメージを助長しました。 

 今回これに加えて、党中央を先頭に、議員・地方組織から現場の党員に至るまで松竹氏個人への「批判」、市民的に見ればバッシングに近い言動が機関紙・SNS・演説などで繰り返され、中には松竹氏ら個人への攻撃としか思えないものも見受けられ(他方で松竹氏が冷静で紳士的な対応に終始した)、市民から見て「恐ろしい」姿を示してしまいました。 特に、市田副委員長のSNSでのコメントや演説、伊藤岳議員の演説は率直に言って処分に値するほどひどいものでした。「共産党の建物の中では異論をいえるが、建物の外(社会)に出たら一言も異論を言うことは許されず、連絡を取ったり異論を言ったりすれば除名され、組織をあげて攻撃バッシングを受ける」というイメージになってしまったと言えます。 

 松竹氏の言動にどう対応することが最も公正であったかを別にして、上記のような党の対応そのものが、市民の中に「共産党は異論を許さない政党だ」というイメージを形成し、否定的影響を及ぼしたと言わざるを得ません。これは、今回の選挙戦にとどまらず、国民の中に沈殿する恐れがあります。国民の中ではハラスメントや人権の意識、民主主義の感覚がかつてなく前進している今日では過去とは比較にならないほど、「共産党は異論を許さない政党だ」というイメージ の影響は続く可能性があります。

 

 (2) 

 ところが、後半戦後の4月24日の常任幹部会声明では「『共産党は異論を認めない政党だ』などといった反共キャンペーンが、一部の大手メディアをつかって大々的に展開されました」「反共キャンペーンに対して、綱領と規約に示された日本共産党の本当の姿を語る努力もすすめられました」という記述はあるものの、この影響がなくなったのか、続いたのか、党がそれに対応し続けたのかについては、何も記述や評価はありません。しかし、小池書記局長は、前半戦後の記者会見(4月10日)で松竹氏らの除名をめぐる問題が前半戦の結果に影響したか聞かれ、「いろいろな宣伝物なども含めて誤解を解く努力を全力でやったので、それが影響したとは思っていない」と答えており、記事だけから常識的に判断して、前半戦終了までにこの影響は「消滅した」と党幹部が評価していたことは明白です。いわば武装解除をしてしまったのです。 

 これは党中央自身の、この問題に対する著しい軽視と言わねばなりません。 実際、小池氏だけでなく、〔統一地方選挙後半戦における〕党幹部の演説やそれを報道する赤旗記事からもこの観点は消えました(もしくは非常に微弱になりました)。 

 

(3) 

 この問題は、第一に、規約を基準にどう公正に扱うべきかという点について言えば、〔2023年〕2月の県委員会総会で私が松竹氏の除名問題について意見を述べた通り、松竹氏を除名した際に当該の党機関や中央幹部が挙げた除名理由はどれも成り立たないものであり、除名自体が誤りでした。「反共キャンペーンが、一部の大手メディアをつかって大々的に展開され」(常幹声明)たのではなく、党を攻撃しようと待ち構えていた反動勢力の跋扈する死地に、党自身が間違いを犯して自ら飛び込んでいったようなものです。この点から、県委員会総会の決定は誤りであり、次の県総などでその誤りを正直に認めるべきです。

   第二に、選挙戦の問題として、影響が続いたことを直視し、対応を行うべきでした。 その場合の対応とは、本来的には「第一」で述べた通り除名を撤回することです。仮に除名や処分が正しいと判断するにしても、党中央や県委員会が行ったような「ビラなどで党内民主主義について語る」というやり方では対応になっておりません。 党中央をはじめとする党の対応(振る舞い)の全体は、 (1) で示したように、市民の中に「異論を許さない」というイメージ形成を促してしまう拙劣なものでした。それをいくら「言葉」(ピラ・演説)で言い訳(反撃)しようとしてもできるものではないからです。対応(振る舞い)全体を反省し見直すべきです。 

 第三に、「共産党の建物の中では異論をいえるが、建物の外(社会)に出たら一言も異論を言うことは許されず、連絡を取ったり異論を言ったりすれば除名される」という現在の党のあり方全体(規約とその運用)を見直し、民主集中制を現代的に発展させなければ、党の未来はありません。中央や機関に意見を述べるのではなく、他の党員に体系的に自分の見解を知ってもらおうとすれば、せめて書籍程度の分量の意見を述べる自由がなければならず、わずか数分の発言、400字*6程度の大会決議案への意見書だけでは、他の党員に訴えることはできません。 言葉ではなく、振る舞いの全体が、市民から見てわかりやすく「異論が許されている」と思える政党に変えようということです。(以上)  

 この感想文は、よく講演会の後で集めるような「感想文」とは違い、そのあとに行われた第8回中央委員会総会決定のため経験と意見集約の一環でしたでしょうから、いわば規約15条に基づく正式な意見書として私は提出しました。もちろん私は党の規約を厳守しましたから、この意見書を外に漏らしたりはしませんでした。党幹部が誠実に耳を傾けてくれるのを辛抱強く待っていたのです。

 それは「党機関が決定をおこなうときは、党組織と党員の意見をよくきき、その経験を集約、研究する。出された意見や提起されている問題、党員からの訴えなどは、すみやかに処理する」(規約15条)というふうに扱わねばならないはずのものです。

 

 耳の痛いことではあっても規約に基づいて誠実に意見を述べたつもりです。にもかかわらず、党幹部によって「集約し、研究」され「すみやかに処理」された形跡はなく、それどころか、いよいよ「異分子」として目をつけられて追放へむけたいじめが始まっていったようにしか思えない経過をたどりました。*7

 意見書で出した問題は放置され、それどころか、いっそう党幹部によって助長され、拡大されてしまったのです。「共産党は閉鎖的」「自由がない」というイメージは党幹部自身によってますます国民の中に沈殿していきました。

 

 「『共産党は閉鎖的』というイメージが沈殿し、託す動き・広げる動きが弱まった」と申し上げましたが、そのイメージは、私への不当な除籍・解雇などに見られるように、偏見や根も葉もないものではなく、一定の事実であり、根拠があるものです。

 イメージをいくらよくすることだけやっても、その事実や根拠自体を解消しないかぎり、イメージは消えません。うんこがあるのに、うんこを除去せず、芳香剤をいくらきつくしても、匂いはごまかせないのです。

 

 「共産主義には自由がない」というイメージを払拭すべきだ、として3中総で志位議長を先頭に、「共産主義と自由」を学び、語り合う大運動に全党が立ち上がりました。これは問題意識としては間違っていなかった、と思います。

 党幹部自身も、現場のみなさんも、「共産主義には自由がない」というイメージを払拭すべきだ、と思っていたはずなんです。

 

 でもいくら「共産主義社会では自由な時間がふえて人間が全面発達しますよ」みたいな話をしても*8、いま目の前で、誠実に諫言している党員や、まじめな若い党員たちに対して、これでもかというほどハラスメントやいじめを加えながら「共産主義はッ! 共産党はッ! 自由ですからッ! 異論を認める政党ですからッ!」と叫んでいたら、なんの説得力もないのです。*9

 イメージの払拭をしたいという問題設定は正しかったと言えます。

 でも処方箋が全く「あさっての方向」だったのです。

 

 いい加減にこんなことはもうやめませんか。

 このことに目をそらしたままの、党幹部に都合のいい総括をしていっても、その方向に共産党と日本の政治の未来はありません。党がゆっくりと壊死していくだけです。

 

このことに目をつむったままの総括で本当にいいのか

 「でも異論を言えば『自由な討論』という名で神谷のように吊るし上げられたり、他の党員のように呼び出されて説教される…」「じゃあどうすればいいのかという対案もないままに言ったら、怒られる…」——違和感を抱いている党員のみなさんには、そんな不安があるかもしれません。

 党職員の方で言えば、神谷のように精神を破壊されて職を取り上げられて、叩き出されるかもしれない、という恐れもあるかもしれません。

 実際、福岡の民青の(中にいる党員でもある)若い人たちは、連名で意見を述べたことをもって「分派」だといわれ、なぜか共産党から査問にかけられました。

 確かに私は「こうすれば党幹部からのいじめを回避して意見を言える」という策をお伝えすることはできません。無理強いすることもできません。

 しかし、本当にこのままでいいんでしょうか。

 まちがった方向に日本が、あるいは党自身が落ち込もうとしているとき、どんな困難があっても、ちゃんと声をあげていくというのが共産主義者じゃないんでしょうか。

 党員や党職員が苦労して築き上げてきたものを、党幹部自身が私(わたくし)して、壊しているのです。そんなあり方が正しいとは言えません。

 党幹部の言うことに何も異論を唱えない、それを合理化して補強することだけが「党派性」だ、党への信頼だ、あるいはせいぜい選挙戦術上の小さな意見だけをしゃべって「中央にちゃんとモノを言った」と思うのは、端的に言ってかんちがいです。もし根本的なところが間違っているなら、その根本的なことを言うべきです。親友が根本的に間違った道に行こうとするときに、間違っているよと言ってあげられるのが親友というものではないでしょうか。

 今回の敗北はそのチャンスだとも言えます。

 党幹部は今回の敗北を受けてあり方を見直してください。まず私への不当な解雇・除籍を撤回するところからそれを始めるべきです。そのことを厳しく求めておきます。

 

 

補足

 共産党が今回貢献した(例えば赤旗スクープが与党過半数割れに追い込んだ)歴史的な積極面、あるいは、後退した「他の大きな原因」(例えば高齢化や党勢拡大の不足など)がありうることは否定しません。しかし、「それがあるから、これ(閉鎖性問題)は無し」という論法は詐術です。論議の際にはくれぐれもご注意ください。

*1:2021年の総選挙比。

*2:共産党としては維新は「野党ではない」という位置付けでしょうから。

*3:一般に参院選は総選挙よりも投票率が低くなりますが、2022年参院選の361万票からも大きく減らしています。

*4:24年10月30日補足:10月30日付京都新聞の調査によれば、「比例の共産党支持の票は、れいわ(3.7%)よりも国民(4.7%)に流れている」とのことです。https://twitter.com/minako_saigo/status/1851394128653009210

*5:2023年4月当時。

*6:1600字の間違い。

*7:私はそのとき提出された他の常任や地区委員長などの感想を全て持っていますが、私の意見は他の人たちと比べると全くユニークなものでした。

*8:それはそれでマイナスになることはないでしょうが。

*9:ましてや共産主義と自由時間に関する自著を、貴重な選挙の演説時間を割いて、あろうことか「10万部」などという売上目標まで提示して宣伝するなど、あってはならないことです。