消費税が10%になった今、どういうたたかいを始めるか

 私が市長選挙で公約し、主に街頭で訴えていた3つの大きなテーマがあります。

 一つは、ロープウエー計画の中止。これは実現しました。

 二つ目は、高齢者乗車券の存続。これも実現しました。

 そして三つ目は、消費税の10%への増税中止でした。残念ながらこれだけは実現していません。そして、10%となってしまいました。

 もちろん、私はあきらめるつもりはありません。市長選で掲げた公約は、あくまで追求していくつもりでいます。

 では、この時点でどういう運動を始めていくべきなのでしょうか。

 私が所属している日本共産党は、次のような呼びかけを行いました。

 

www.jcp.or.jp

 

共産党の呼びかけのロジック

 この呼びかけは、どういうロジックで成り立っているのか、注意深く読んでみましょう。

 まず、そもそもに立ち返り、消費税という悪税を廃止する旗を改めて高く掲げています。

 その上で、

同時に、消費税廃止を目標としつつ、次の緊急の要求を掲げて、国民の共同のたたかいを発展させることを呼びかけるものです。

 とつなげています。それは消費税を5%に減税することを「国民の共同のたたかい」、つまり共闘の目標にしていくというわけです。

  • 党としては、廃止を展望する。
  • しかし、当面の市民と野党の共闘では5%減税を目標にするよう努力する。

という整理でしょうか。

 そして、さらに次のような書き方がしてあります。

 野党は、共通政策で「消費税10%への引き上げ中止」を公約にして参議院選挙をたたかいました。安倍政権が10%への増税を強行したもとで、野党が減税に向けた共闘を発展させることは、国民に対する当然の責任だと考えます。

 日本共産党は、共通政策を土台に、消費税減税に向けた野党の協議を開始し、共闘をさらに発展させることを心から呼びかけます。日本共産党としては、「5%への減税」が野党の共通政策となるように、力をつくします。

 

  「共通政策を土台に」というのは「消費税の10%増税中止」が「共通政策」なのですから、10%になった今、つまり「10%への増税を強行したもとで」、共産党は将来的な廃止の一里塚として、当面の共闘目標を「5%減税」にするために努力する……ということなのですが、同時に、「共通政策を土台にした消費税減税に向けた協議」のゴールがどうなるかは当然書いていません。

 10%が仮に8%へ戻すという減税に落ち着くこと(もっと言えば9%減税になる可能性)もありうるということでしょうか。何れにせよ、「10%から引き下げる協議」を開始するということなのでしょう。

 

新たな財源論――決着する目標税率にどれにでも対応

 そして、目標とする減税の税率がどういうふう決着しようとも対応できるように、参院選の時とは違った財源を示しています。

 例えば、

  • 法人税の税率を安倍内閣以前の水準に戻す(中小企業は除く)こと
  • 軍事費や大型開発をはじめ予算を見直し、無駄を削減すれば、3兆円程度の財源を国民の暮らし優先に振り向けることが可能
  • 為替取引税、富裕税、炭素税(環境税)を創設

などは、参院選の時の共産党の公約にはありませんでした。

 

 

違いを超えて共同できる整合的な道

 廃止の旗を掲げる「れいわ」や、消費税増税合意をかつて行ってしまった旧民主党系の人たちを含めた野党が、その違いを超えて、整合的に共同していける当面の道としては、なかなか説得力があると考えます。この方向で新しいたたかいを始めることに大いに賛成します。

 

 

おまけ:MMT論などへの批判

 そして、この共産党の呼びかけには、

なお日本共産党は、赤字国債の乱発と日本銀行による直接引き受けなど、野放図な借金を消費税減税などの財源にすることには賛同できません。

 が書かれました。つまり、MMT論などと一線を画することを明記しているのです。

 ちなみに、私も賛同している「薔薇マークキャンペーン」は、

(4.)の増税が実現するまでの間、(2.)の支出のために、国債を発行してなるべく低コストで資金調達することと矛盾する政策方針を掲げない。

 という公約の遵守を求めています。

rosemark.jp

 ただ、これはMMTそのものでもないし、最初から「野放図に国債発行」をすることを求めるわけではないので、矛盾しないと考えます。

 

 

国民健康保険料の引き下げを求める福岡市の会

 国民健康保険料の引き下げを求める福岡市の会が発足し、引き下げ署名運動が開始されています。

www.facebook.com

 

 国保料引き下げは私の市長選での公約でもありました。

 

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

 

 保守・革新とわず党派を超えた市民運動になっていけばいいなと感じています。

 

ロープウエー構想断念

 13日、福岡市議会で、ロープウエー検討予算を削除する修正案が可決されました。そして高島市長は、

市としては、ロープウエーを進めることを検討しない。整備に関する議論もしない。市民の理解が進んでいない。

と述べて、ロープウエー構想の断念を表明しました。

www.nishinippon.co.jp

 

 新聞・テレビもいっせいに「ロープウエー構想断念」と報道しました。これはもう間違いなく「断念」と評価していいでしょう。

 

 ロープウエー予算の削除までは先日の段階で私にも見通しがついていました。しかしおそらく市長は「重く受け止める」とか言って実際は5グラムぐらいの受け止めをして、市議選終了を待って、議席構成が市長に都合のいい結果となれば前に進める……そう思っていました。

 だからこそ、ロープウエー構想の行方はまさに市議選にかかっていました。

 しかし、ここまで市長がはっきり言ってしまったら、これはもはや「断念」と評価すべきでしょう。(何かの思惑が市長にあるにせよないにせよ、もし何かのきっかけで今後この構想を復活させようとしたら、尋常でない抵抗を食らうことになります)。

 すでに各紙が報道している通り、市議選で市長は「市長言いなり親衛隊」である自民党新福岡、公明党、みらいの議員を増やそうとしており、ロープウエーが争点になり続けたらこうした候補は大逆風になってしまうので、それを争点から外して実を取ろうとしたというのが本当のところだと私も思います。

 

 ただ、そういう計算を含めても、市長の暴走は、市民の世論、民意の前にストップさせられたのです。

 万歳! 市民の世論の完全な勝利です。

 

多くの立場の人たちが「民意」であることを確認した

 これは私が数日前のブログで述べたように、高島市長による議会工作の失敗などではなく、民意そのものです。

 そのことは条例予算特別委員会の最終日、および予算議会の最終日を膨張していて改めて痛感したことでした。

  というのは、議員たちの質問・討論・答弁が、市民からの疑問の声の紹介のオンパレードだったからです。

 自民党は自分のところに寄せられた声を、共産党からの質問に答えて(修正案の提案者として)かなり詳しく紹介しました。また、市民クラブは2000人を超えるアンケートを取ったことを何度も紹介していました。緑とネットワークの議員も自分たちのところに寄せられた声を討論で紹介。ロープウエー賛成派である公明党でさえ自分たちに寄せられた声を「よくわからない人が多い」とまとめていました。

 共産党市議団が全住民対象にビラを撒いて、1000通を超えるびっしりと声が書かれたハガキが返ってきていたのを私は当事者としてよく知っています。9割が反対の声でした。

 

 そして、高島市長の会見はなんと私のブログを読んだかのように(笑)、これは議会の多数とか少数とかじゃなくて、民意なんだということを強調するものになっています。

https://www.nishinippon.co.jp/feature/local_councilor/article/494074/

-自民は市長に「反省」を求めていたが。

 「市民の声がどうであるかに真摯(しんし)に耳を傾けたい。 

 

-修正案の採決結果が賛成39、反対20の大差だったことは判断に影響したか。

 「議会だけでなく、市民がどう考えているかを受け止め、この問題だけを引っ張るのは市民の幸せにつながらないと考えた。人数がどうだったかは関係ない」

 いわば、私や共産党市議団だけでなく、多くの立場の人たちがロープウエー中止が民意であるということを確認した――これがこの予算議会の中で明確になったことだと言えるでしょう。いや、マジで傍聴していてそう思いましたもん。 

 

私の選挙公約を達成

 私は、選挙中も「ロープウエー中止」「高齢者乗車券の廃止・削減計画の撤回」「消費税増税の中止」の3点を重点的に訴えてきました。

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

 選挙戦を通してこの訴えの基調は変えませんでした。「当たっていた」からです。

 高齢者乗車券は、選挙終了直後の11月30日の市議会第2委員会の請願審査で「当面、事業を継続する」と保健福祉局長が答弁し、廃止・削減計画は撤回されました。

 

 そして今度はロープウエー構想も中止となりました。

 いわば、私が選挙で訴えた市政の2つの重点公約――開発と福祉という2つの分野での象徴的な問題――はいずれも実現することになりました。みなさんとともに大いに喜び合いたいと思います。

 あとは消費税増税の中止だけですね!(笑)

市政だよりに載ったロープウエーの耐風速の数字はデタラメだった

 3月8日の福岡市議会の条例予算特別委員会総会は、さながらロープウエー議会でした。共産党、市民クラブ、維新、みどりネットだけでなく、自民党までもがロープウエー予算削除の論陣を張ったからです(ただし自民党は「ロープウエーそのものには反対ではなく時期尚早だから」という理由ですが)。

 ここで共産党の星野美恵子市議が質問を行い、市が「市政だより」で紹介している、有識者の研究会(福岡市ウォーターフロント地区アクセス強化研究会)の結論と、それをめぐる市の「Q&A」が、全くのデタラメではないかということを追及しました。

 

 長々と書いてますが、時間がない人のために3点に要約したポイントを記します。

  1. ロープウエーは風に弱いことが専門家の常識だが、市長がつくった有識者の研究会ではそのことがまじめに検討された形跡がない。議事録では1〜2行だけ。
  2. 有識者の研究会に出され、市政だよりにも載せられたロープウエーの風に対する強さの数字は「風に弱くない」という結論を導くために、混ぜてはいけない、種類の違う数字を混ぜて記載している。「運転を止める風の強さ」だけでなく「柱がこわれない風の強さ」を混ぜている。
  3. ロープウエーが運転を止めるのは「風速毎秒15m」、他の交通手段は「25m」というのが実態。つまり「風に弱い」。

 

 では、お時間のあるあなた、本文をどうぞ。

 

研究会では風についてまともな検討をした形跡がない

 特にひどいな、と私が思ったのは、ロープウエーの「風に対する弱さ」についてです。

 市政だよりではロープウエーの「耐風速」として「20〜30(m/秒)」として描かれ、他の交通手段はことごとく「25」とされています。

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 これを見るとロープウエーは「20〜30(m/秒)」ですから真ん中をとって「25」に見えます。つまり他の交通手段と比べても「遜色ない」ように見えるのです。

 で、有識者のセンセイたちはこれをどう検証したのか。

 3回研究会が開かれて、風に対する検討はたった1行。

〇ロープウェイは風に弱いという意見もあるが,他の交通システムと遜色ない。(第3回議事概要より)

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/61905/1/190109dai3kaigijiyoushi.pdf?20190222105514

 これだけです。つまり事務局(市の担当者)が作った資料を眺めて、「へー、風に弱いっていうけど、けっこう強いんだね」と言っているだけなのです。完全にシロウトの発言です。鵜呑みといってもよく、まともな「研究」の形跡がありません。

 以下に示す通り、ふつうにロープウエーの専門家の意見を聞けば、ロープウエーの風に対する備えは致命的な問題だとわかるはずです。

一方でロープウェイの弱点は、比較的、風に弱いことである。搬器〔ゴンドラ〕はロープにより吊され、風に揺れやすい構造となっており、風により搬器が大きく揺れた場合、支柱に衝突するといった事故に結び付く可能性もある。ロープウェイでは、風対策は重要な技術課題となっている。(交通安全環境研究所「風に対するロープウェイの安全性向上に関する研究」、2009年、強調は引用者)

https://www.ntsel.go.jp/forum/18files/18-19p.pdf

 まじめな「有識者」ならここを心配し、真剣に検討しなければなりません。

 それなのに、「研究会」ではなぜ「遜色ない」などという結論になったのか。「有識者」が「研究」しないのであれば、せめて共産党市議団で調べようと思って調べたわけですが、調べてみるとこれがなかなかひどい。

 

混ぜてはいけないものを混ぜている

 この「耐風速」とは何か。星野市議の質問に対して、住宅都市局長は、

鉄道事業法軌道法などと言った法令に基づく設計条件の一つである「風荷重」や地形・気象条件などを踏まえ各運行事業者が定めた「運行見合わせを判断する風速」を記載したものです。

と答弁しました。これでアウトです

 「風荷重」というのは、簡単に言えば支柱などの構造物がどれくらい風に耐えられるかという基準です。「運行見合わせを判断する風速」というのは、どれくらいの風の強さになったら電車などを止めるのかという基準です。

 みなさん、「柱がどれくらい風に耐えられるか」という問題と、「どれくらいの強風になったら運転を見合わせるか」という問題って同じだと思いますか? 全く別の問題ですよね。

 

 両者を混ぜるとどんなデタラメになるか。例えばモノレールの運転停止基準は大阪のモノレールだと「福岡市政だより」にもあるように「25m/s」ですが、構造物の風荷重は「40m/s」です。同じ一つのモノレールをめぐる数字なのに、全然違うことがわかるでしょう(大阪府八尾土木事務所「第3回大阪モノレール 技術審議会説明資料」)。この二つを混ぜてしまったら、まともな比較ができません。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/10129/00224596/03_3siryou1.pdf

 

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 それなのに、福岡市の住宅都市局長は混ぜてはいけない2つの基準を混ぜて比較していることを公然と答弁してしまったのです。

 念のため、 共産党市議団として国土交通省に聞いてみたんですが、両者は「まったく別の概念です」と回答がありました。国に聞いても両者は混ぜてはいけないのです。*1

 だいたい、直前の2月議会の第4委員会へ出した資料(および研究会が実際に使った資料)には「運行見合わせ風速」としか記述していない(下図)わけですから、「風荷重」を勝手に加えてしまった住宅都市局長の今回(条例予算特別委員会総会で)の答弁は虚偽答弁といってもいいくらいです。

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 こんな不自然な「混ぜ合わせ」の数字を作ってしまったのは、後で述べますが、無理やり「ロープウエーは風には弱くない」というデタラメを研究会や市民に信じ込ませたいからです。

 

議員の質問を妨害する行為

 質問の準備をするためにこの「20〜30(m/s)」の根拠を共産党市議団が住宅都市局の担当者に聞きに行きました。

 そうすると「20」というのは、国土交通省監修の『索道施設設計標準・管理標準及び同解説』による「風荷重」のことだと説明しました。

 『索道施設設計標準・管理標準及び同解説』に記されている「風荷重」の該当箇所を私も見せてもらいましたが、これは支柱の「風荷重」です。担当者に「支柱に対する風荷重のことですね」と何度も確認し、後日改めて星野市議からも同じ確認を担当者にしてもらいました。

 じゃあ「30」というのは何かと聞くと、住宅都市局の担当者は「箱根ロープウエーの運行基準だ」と述べました。

 「20」は標準設計にある支柱の風荷重、「30」は箱根の行基

 下限は支柱の「風荷重」の設計標準、上限は運行中止の基準――担当者の話を聞くなり私は心の中で「(゚Д゚)ハァ?」と思いました。市民が疑問に思っているのは「風が吹くとロープウエーはすぐ止まるっちゃろ?」ということなんですから運行基準の話だけでいいはずです。「なんでここに『支柱』の話が?」と異常さを感じたのです。

 先ほど述べたとおり、「柱がどれくらい風に耐えられるか」という問題と、「どれくらいの強風になったら運転を見合わせるか」という問題は全く別の次元の問題です。

 それを混ぜて作った「20〜30」という記載はデタラメそのものです。星野市議は、この問題を追及しようと考えました。

 

 しかし。

 しかしであります。

  住宅都市局は、答弁の準備をしている最中に両者を混同してしまう重大性に気づいたのでしょう。

 実際の議会での答弁は、「20」とはどういう数字かと星野市議が尋ねると、担当者の事前の説明と別のことを局長が口走りました。

函館山ロープウエーなどで秒速20m(の運行停止基準)の実例がございます。

 「20」は「風荷重」の話ではなく、「運行の中止基準」の数字だという、事前の説明とは異なるすり替えを堂々とやったのです。単に議員への事前説明と食い違ったというだけでなく、その説明をもとに研究会の有識者のセンセイが「研究」をして結論を出したわけですから両者を混同させた表を作ったことは大問題であり、星野議員がこの点を批判しようと思ったのは当たり前です。それで星野議員は質問を組み立てます。

 しかし、いざ議会の質問本番になると、その事前説明を覆してしまう。だから、質問の動画を見るとわかりますが、星野議員は事前の担当者説明と局長が全く違う根拠で答弁をしたことを抗議してますよね。

 行政側にこういうことをやられると、議会質問が成り立ちません。「ご飯論法」みたいなもんです。いわば議員にウソをついて質問や調査を妨害するのと同じです。研究会にもデタラメの資料を出して有識者をだまし、議員に対してもデタラメな資料のまま説明し、質問の直前に矛盾に気がついて、こっそりと答弁で平仄を合わせる――こんなやり方が許されるはずがありません。

 

ロープウエーの実態を見れば「15」なのに

 そして、ウソにウソを重ねるので、矛盾が深くなります。

 つまり局長が新たに持ち出した理屈では、「函館山と箱根のロープウエーの運行中止基準を記したものが研究会に出した『20〜30』という資料の意味だ」ということになります。

 もしそうであれば、上限の箱根の「30」の方はわかりますが、なぜ下限に函館山の「20」を持ってくるのかがわからなくなります。

 なぜなら、全国各地のロープウエーの運行中止基準は下記のとおり、普通は「15」だからです

  運行停止風速(m/s) 方式
榛名山 15 自動循環式
宮島 15 自動循環式
御在所 15 自動循環式
金剛山 15 交走式
長崎 15 交走式
伊豆の国 18 自動循環式
新穂高 18 交走式
函館山 20 交走式
箱根 30 自動循環式(フニテル )
谷川岳 30 自動循環式(フニテル )
蔵王 15〜20 自動循環式(フニテル )
神戸布引 非公表 自動循環式

 

 しかも函館山は、福岡市で採用しないであろう「交走式」です。*2

 さらに言えば、函館山の「20」は突風の基準です。現地に確認しましたが、常時15m以上の風が吹いている場合は停止する基準を持っています。

 

絶対に「15」を市が認めないのはなぜか

 実態から見てロープウエーの「耐風速」は「20〜30(m/秒)」ではなく、「15」と記すのがフェアでしょう

 仮に、上限と下限を書くという住宅都市局の印象操作を認めるとしても、「15〜30」となるのが自然です。

 しかし住宅都市局はどんなことがあっても「15」という数字を下限に持ってくることができません。なぜか。

 それは星野市議が質問で明らかにしましたが、もし「15」を下限にしてしまうと「15〜30」となり、平均は「18.95」*3になって、他の交通手段の「25」以下になってしまう、つまり「ロープウエーは風に弱い」という結論が導かれてしまうからなのです。

 こんなことをしたら市長からにらまれて、役人人生が終わってしまうのでしょう。何としても「25」と同じか、「25」を超えたい。「30」は探したので、あとは必死で「20」を探さないといけません。初めは『設計標準』にちょうどいい数字があったのでそれを持ってきたのでしょうが、よく考えるとあまりにおかしい。そこで局長の「函館山ロープウエーなどで秒速20m(の運行停止基準)の実例」などというトンデモ答弁なのです。こうした忖度のみじめな結果が「20〜30」という表記です。

 何れにせよ、下限を「20」にしたまともな「根拠」は、研究会の資料や議事録からも、事前の担当者の説明からも、局長の議会答弁からも、ついに見つけることができませんでした。

 

 ちなみに、「市政だより」には、研究会のリストにはない鉄道との比較が言及されています。研究会の結論の領域を超えて、市の担当局が、調べたことをベラベラとしゃべって…いや、書いているのです。

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 こう言っています。

鉄道でも風速25メートル/秒を観測した場合には、運転を見合わせする基準が多く採用されています。

 本格的な運行中止基準でいえば「25」ではなく、例えばJR東日本・西武・小田急京急は30m/sです。*4

 いやあ、ロープウエー(15m/s)の2倍ですね。

 なのになぜ「25」なのか?

 これはいわゆる「早め規制」です。本格的な規制基準よりも大事をとって早めに運行を停止するという数値です。鉄道の数値を低く見せて、ロープウエーの「20〜30」に近づけようと必死なんですね。というか「鉄道は30」と言ってしまうと「ロープウエーは20〜30」が見劣りしてしまうからです。

 しかし、それならロープウエーも同じ基準で比べないとフェアじゃありません。

 ロープウエーは先ほど見た通り本格的な運転停止基準の多くは15なんですが、実際の運用では風向き次第でもっと早めに切り上げることがほとんどです。電話して調べると「10mくらいで止める」というところもあります。

 だから「早め規制」についていえば、「鉄道は25、ロープウエーは10」というあたりが実態と言えます。

 

「30」に耐えられるロープウエーにしたら景観は?

 じゃあ「風速毎秒30mに耐えられるロープウエーがあるなら、それでいいじゃん」という話になるかもしれません。 

 しかしそうなると今度は別の問題が生じてしまうのです。

 それを星野市議の質問ではさらに追及しています。

 どうして30m/sに耐えられるのかと聞かれ、局長はとくとくとロープが2本のタイプの自動循環式ロープウエー(フニテル)について説明します。

 しかし、専門家に話を聞くと、フニテルはロープが2本になるため1本の場合に比べ、支柱がかなり大きくなります。そうなると支柱の安全性や景観への影響が大きく変わってきます

 景観への影響を考える場合、当然こうした支柱の大きさは考えなくてはなりません。

 ところが、「市政だより」ではロープが1本しかないタイプを前提にして早々とイメージ図などを載せて「空がたくさん見えてうれしいね」などと「ポートくん」に無理やり言わせているのです。気の毒なポートくん。何か弱みを握られているのでしょうか。

 

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髙島市長におもねる不自然なセリフを口にするポートくん。涙なしには見られない。


 いや、フニテルなんか採用しないことだってあるでしょう。あるいはフニテルを採用するかもしれません。フニテルを採用するなら柱が大きくなる、採用しないなら風に弱い――それを正直に書けばいい。あるいはそのあたりを詳細に研究した結果を公平に載せれば、純粋に宣伝効果から考えても、「ロープウエーのメリットばかりでなくデメリットも書いてあって公平だな〜」と好感を持ってもらえたと思います。

 

 それなのに、まず有識者の研究会がちっとも「研究」していないのです。これでは研究会で結論を出す前に市長が早々と公約して「導入」を打ち出したことを忖度し、「はじめに結論ありき」なんだと思われても仕方がない。

 そして、市は、これから真摯に導入の実現可能性を検討していくための予算を5000万円つけたというのなら、「市政だより」にこんな結論を先取りして市民に押し付けるQ&Aなど載せるべきではないのです。

 

 

*1:ちなみに、国としてロープウエーがどれくらいの風速になったら止めるのかという数値基準は存在しません。「索道施設に関する技術上の基準を定める省令」が存在する唯一の運転判断の国基準ですが、その37条に「風、雨、雪、霧等により索道の運転に危険を生ずるおそれのあるときは、その運転を一時中止する等危険を避けるため、適当な措置を講じなければならない」とあるだけ。あとは事業者が判断するのみです。

*2:「交走式」は「ロープに吊された搬器が往復するタイプ」。対して、「循環式」は「ロープに吊された搬器が循環するタイプ」。日本索道工業会の公式サイトより。

*3:上記の表を使った算術平均とする。(30+15)÷2だという計算をするとしても平均は22.5。

*4:もちろん「25」の事業者もあります。

ロープウエー予算削除の包囲網が市議会に

 福岡市の新年度予算を議論する予算議会が始まっていますが、高島市長が計上したロープウエーの検討のための予算を削除する包囲網が議会にできあがっています。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

 西日本新聞は予算削除の「修正案は可決される公算が大きい。高島宗一郎市長が昨年11月の市長選で公約の目玉に掲げたロープウエー構想だが、実現は不透明になった」とまで断じました。

 

 一言で言って、これぞ民意です。

 高島市長は市長選挙で公開討論にも応じず、知名度頼みの選挙戦術で「勝利」したかもしれませんが、多くの市民が「ロープウエーは必要ない」という根底にある民意・世論に敗北しつつあります。

 私としても選挙戦に出てロープウエー構想の問題点を市民に訴えてきたことは有意義だったと心から思いました。

 市長は、もし修正された場合、また再議に持ち込もうとしようと思っているかもしれませんが、問題を見誤るべきではありません。先ほど申し上げた通り、これは議会内の多数派工作の問題ではなく、民意なのです。民意にしたがって、きっぱりと計画を断念することが市長としてやるべきことです。それは、私が市長選の結果が出た時にコメントとして申し上げたことでもあります。

 

市議選でも一大争点に

 4月7日投票で市議会議員選挙があります。

 市長選に続いて、そこでもロープウエー問題が一大争点になってきています。

news.biglobe.ne.jp

 

www.sankei.com

焦点は、7区それぞれの地域課題に加え、高島宗一郎市長が進めるロープウエー構想への各候補者の向き合い方。また、最大会派の自民党市議団と高島市長の間には再び、ロープウエーを巡って緊張が生じており、改選後の議会構成が今後の市政運営に影響を与えそうだ。(西日本新聞

 

修正案の行方は予断を許さないが、間近に迫る福岡市議選で、ロープウエー構想が争点の一つに浮上する。(産経新聞

 というわけで市議会議員は3つのグループに分かれています。

 一つ目は、ロープウエー賛成・推進派です。

 二つ目は、「ロープウエーには反対ではないが時期尚早」派です。

 三つ目は、ロープウエー計画そのものを不要とする派です。

 どのニュアンスの議員を増やし、どのグループを減らすのか。市民の審判を下しましょう。

選挙運動に関する収支報告書の要旨を載せておきます

 みなさん、お久しぶりです。

 公職選挙法にもとづいて市長選挙の選挙運動に関する収支報告書をつくりました。近いうちに「福岡市公報」(「福岡市政だより」じゃありませんよ、「官報」みたいなもんです)に載ります。その要旨をここにも書いておきます。

収入 支出
主たる寄附 氏名・団体名   人件費 10,000
Aさん 80,000 家屋費 260,000
Bさん 100,000   選挙事務所費 260,000
Cさん 100,000   集合会場費 0
Dさん 500,000 通信費 140,000
Eさん 30,000 交通費 0
Fさん 20,000 印刷費 1,551,340
Gさん 100,000 広告費 618,748
Hさん 130,000 文具費 0
Iさん 30,000 食糧費 0
Jさん 50,000 休泊費 0
Kさん 50,000 雑費 0
Lさん 50,000    
Mさん 100,000    
Nさん 50,000    
Oさん 30,000    
Pさん 20,000    
Qさん 200,000    
市民が主人公の福岡市をめざす市民の会 400,000    
日本共産党福岡県委員会 390,088    
その他の寄附 15件 150,000    
その他の収入   0    
合計   2,580,088 合計 2,580,088

 詳しくは公報をご覧ください。

 さらに「支出のうち公費負担相当額」というのがあります。選挙は「公費負担制度」と言いまして、市民に政策を知らせる最も基本的な宣伝物(自動車・ポスター・ビラ)には行政がお金を出してくれます。と言っても得票率10%(供託物没収点)以上を取らないと負担してくれないんですけどね。

 私の場合、ビラの作成が476,000円、ポスターの作成が804,000円、合計1,280,000円です。

 これから市長選挙に出ようと思っている方は、だいたいどれくらいあれば選挙というものはたたかえるのか、事務所はどれくらいで借りられるのか、参考にしてください。

 高島市長のも分かったら、私の方からお知らせしましょうかね(笑)。

 

追記

 福岡市公報(2019年1月17日第6551号別冊2)に載りました。

 私のものと高島さんのものを載せておきます。

↑私

高島宗一郎